人って、恐いね。

知らず知らずのうちに自らにルールを課して、

それを忘れて生きている。

あまりにも辛い過去や

忘れたい出来事においては、

それは実に巧妙で

気づかない事もたくさんある。

特に、辛いって感じたこと、

忘れたい出来事に付いている思いは、

自分で思ったほど癒やせずにいることが多い。

概ね、強くありたいと願う人は

弱いことが多い。

弱さを見せるのは、弱さを認めたからではなくて

強さを引き立たせるためであることが多い。

弱さはとても繊細で

そして、悩ましいほどに美しい。

その美しさがありのままの自分であると

思う人もいて、

引きづっている足かせなのか、

分からない事も多い。

美しくとも、不要な足かせは、

容赦なく捨てればいい。

美しくとも、足かせは足かせなのだから。

私も、この足かせを

捨てた。

セルフカウンセリングを通して、

根幹は親と祖父の板挟みであった事は分かっても、

私の中で一番つらかったのは、

やっぱり彼女が自死したこと。

これは、今でも変わらない。 

当時は、中学生。

現実に起きた事を受け入れられないまま、

整理なんてできないままで、

毎日を過ごした。

そんな中でもやらなきゃいけないことは、

やっていたし、

楽しい事が

一つもなかったなんてことは、勿論ない。

やりきれない思いを

どこにもぶつけられずにいて、

結果自分で抱え、自分を責め続けていた。

やっぱり、

自分が彼女を守れなかった、

何か本当は出来たことがあったんじゃないか、

という

後悔のほうが大きかった。

彼女がいない

この状態が、恐くて怖くてたまらなかった。

やっぱり自死したことを受け入れたくなかった。

現実から逃げるために、自分を忙殺した。

1限から8限までの特進クラスの授業、

クラブには3つ所属、

大阪までボランティアに行き、

アルバイトに、

恋愛。

特に恋愛は、好きになるというより、

自分を安心させるためだった。

人を愛するのではなくて、

自分にあいた穴を埋めるピースを

埋めるための「作業」だった。

代わりのピースなんてどこにもないと

分かっているのに

不完全な自分を許せず、受け入れられなかった。

大学1回生の夏。

ようやく自分から好きで好きで

たまらない人が、できた。

出会い方も運命的だった。

のめり込んだ。

でも、結果的に付き合えなかった。

睡眠時間が毎日2時間以下の日が2週間近く続いた。

食事も喉を通らなかった。

決心した。

大切な人ができたら、

自分ができる限りのことをしてあげよう。

自分の持っているスキルも、経験も、

全て、その人のためになるなら、

何でも伝えよう。

それが、

自死した彼女に

なにもできなかった、

私なりの罪滅ぼしの形。

そして、

人よりも苦労しよう。

俺が苦労すれば、彼女はより早く天国に行ける。

そう、考えた。

その後の恋愛は、順調だった。

付き合った人は、

結婚したいと思える人ばかりだった。

むしろ、それはその決心があるから、

そうみえたのかもしれない。

でも、

うまくいかなかった。

どうしてかと考えたら、

シンプルだった。

決心したことを実現するためには、

「うまくいっていないこと」が必要だったんだ。

でも、決めた。

決心したこと、全部捨てる。

もう、自死した彼女のことを

弔おうとするのも、やめる。

私は、私の人生。

彼女が自死してもうすぐ17年。

もう俺、

十分弔ったよね。

もういいよね。

もう

大丈夫なはずだよね。

彼女が亡くなった事実は変わらないけど、

別に彼女のために生きているんじゃない。

どこまで行っても自分の人生は、自分のため。

そう気づいて、足かせを切るワークをした。

思っていたより簡単に切れた。

それはそれで、何だか切なかった。

もう、

伝えようとしなくても、必要な事は伝わるし、

苦労は、自らしなくていい。

もっと楽して、自由に生きていい。

今まで

好きな人を傷つけてまで、

俺は自分の勝手な決心を押し通していたんだな。

今は、

そんなエゴイスティックなことをしていた俺が、

大嫌いだ。

大嫌いだけど

でも、また、好きになればいい。

新しい自分で、また好きになればいい。