『あゝ、荒野 後篇』

2017/10/21

2017/11/01

監督・脚本　岸善幸
脚本　港岳彦
原作　寺山修司
音楽　岩代太郎
主題歌　今夜/BRAHMAN

出演　菅田将暉、ヤン・イクチュン、
木下あかり、ユースケ・サンタマリア、でんでん、
高橋和也、木村多江、モロ師岡、山田裕貴、
今野杏南、萩原利久、小林且弥、川口覚、河井青葉

（あらすじ）

試合に勝ち、勢いに乗る新次（菅田）だったが、
建二（ヤン）はどうしても相手を殴ることが出来ない。

新次は母・京子（木村）から
父を自殺に追い込んだのが
自衛隊で上司だった
建二の父・建夫（モロ）であることを知らされた。

建二は川崎の子供を妊娠していた恵子（今野）を
偶然助けたが、彼女は流産した。

末期がんの建夫は死ぬ前に京子に
新次の父について会って話しておきたいと願うが、
彼女は拒否。
新次は会いに行き、
父のトラウマは戦況下のせいだと釈明され、
建夫が想像通りの人間であったことを告げ、
自分と建二が
ボクシングをやっていて親友であることを教える。

新次は裕二（山田）との試合が決まる。
彼に下半身不随にされた劉輝（小林）は
自分に献身的な裕二を許しているのだが、
新次は「試合で殺してやる」と息巻く。

新次は関係を続けている芳子（木下）から
被災者であることを聞かされる。
片目（ユースケ）は
芳子の母・セツ（河井）に思慕を持ち始めていた。

宮本（高橋）のオーナーである川口（石井）が
ケアハウスを娯楽施設に変えて、
ジムは閉めると言い出した。
宮本はジムを見学をさせにやって来る。
川口は建二を気に入る。

建夫の面倒を見ていたマコト（萩原）は
自衛隊に入ることを決意し、建夫を連れて建二を訪ねて来る。

憎しみをボクシングにぶつける新次を見ていて、
人と繫がるためにボクシングをしている建二は
ある決意をする。

（感想）

山場となるファイト・シーンが２度あるんだけど、
どちらでも泣いてしまった。

新次 VS 裕二では、
新次が抱えるジレンマに
シンパシーを感じたような気がする。
現状への不条理さ且つ
本当は失いたくも闘いたくもなかったのに、という
怒りや淋しさ、みたいな。
広い意味での、家族との訣別みたいなものも感じた。
山田、良く頑張っていた。

新次 VS 建二のほうは、
自分でもわからなくて
「何で泣いてるんだろう？」って
考えながらも泣いていたんだけど(笑)
多分、あまりのバリカン建二の優しさと、
こうすることでしか確認し合えない切なさと悲しさ、
みたいなものかな、と。
これもジレンマと言えるのかも知れない。
だから２人の間を見て来た片目、馬場、宮本あたりと
京子や芳子とでは声援が違うんだろうって思った。

顔がボコボコになって変形している様子が
とてもリアルだった。
凄いボクシングシーンだった。

最後には建二が天使に見えて来た。
天使になっちゃうんだけどね。
今作ではヤンの表情が印象的。
無論、対照的な菅田の表情も良かったけど。涙のシーンもね。

抗議デモの最中に爆弾が爆発するっていうのも、
ジレンマなんだと思う。

新宿の移り変わりや、
ラストの新次の表情も含めて、
生きていく上でのジレンマを
痛切に感じさせられた。

こんなに長いんだけど、
もっと描いて欲しい部分、
たとえば娼婦母子の再会とかがあった。
だって気になるし。
木下は演技派なんだけど、
ルックス的にヒロイン向きじゃないな、やっぱり。

脇が実力派の演技が光っているのは前篇同様だが、
中でも高橋が際立っていた。

散漫なところはあるかも知れないが、
久々に何回でも観たいと思える作品が見つかった。
観た人と色々語りたい。

あゝ、荒野前篇