『ゲット・アウト』

原題：Get Out

2017/10/27

2018/04/11

監督・脚本　ジョーダン・ピール
音楽　マイケル・エイブルス

出演　ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、
リル・レル・ハウリー、キャサリン・キーナー、
ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、
ベティ・ガブリエル、キース・スタンフィールド、
マーカス・ヘンダーソン、スティーヴン・ルート

（あらすじ）

黒人のカメラマン・クリス（ダニエル）は、
白人の恋人・ローズ（アリソン）の実家を訪れることになった。
ローズが彼が黒人であることを両親に言わないでいるのを危惧したが、
オバマ大統領を支持しているし、
差別主義者ではないので大丈夫だと言われる。
TSA（運輸保安庁）に勤務する親友のロッド（リル）は反対している。

途中、ローズの運転する車が鹿を轢き、
警察官の自分への差別を払いのけてくれた彼女に
感謝するクリス。

到着して、
脳神経外科医であるローズの父・
ディーン・アーミテージ（ブラッドリー）、
心理療法家である母・ミシー（キャサリーン）と対面。

歓待されているようで、
ディーンは彼を「兄弟（Man)」と呼び、
ミシーは鹿の事故で蘇った
幼少時の母の事故死のトラウマを聞き出そうとしたり、
チクチク不愉快。

黒人の使用人・ウォルター（マーカス）と
メイドのジョージーナ（ベティ）がいるのも気がかり。
２人とも彼に感じが悪い。

弟・ジェレミー（ケイレブ）も
クリスに挑発的。

眠れないために一服しようと外に出た彼は、
ウォルターとミシーの異様な様子を目にする。

そして知らず知らずのうちに
ミシーに催眠術をかけられていた。
だがそのおかげで禁煙することは出来た。

翌日、アーミテージ家でパーティーが開かれた。
招待客のほとんどが白人で、クリスは居心地が悪い。
ようやく見つけた黒人のアンドリュー（キース）も
どこかおかしい。
彼はクリスのスマホのシャッター音を聞いて
「出てけ！」と別人のように暴れ始めた。
ミシーに介抱されて元に戻るが。

客人の中に盲目の画商・ハドソン（スティーヴン）がおり、
作品を褒められた。

クリスが外出した間に
ディーンが客人たちと謎のビンゴを始める。

ロッドにアンドリューの画像を送って愚痴るクリスだったが、
彼がかつての知人であることに気がついた。

（感想）

今年度アカデミー賞の
作品賞・主演男優賞・監督賞・脚本賞にノミネートされた。
大穴。

黒人忖度枠、
低予算映画忖度枠、
「羊たちの沈黙」ラインかな、と。

ネタバレすると

ローズが若い黒人を連れ込み、
ミシーが催眠術をかけて朦朧とさせ、
ディーンが
ジェレミーを助手に手術をして

白人老人の脳を
若い黒人の肉体に移植していた。

ランナーだったローズの祖父の脳はウォルターに、
祖母の脳はジョージーナに、
アンドリューには老いた白人妻の夫の脳が移植されていたのだ。

そしてクリスの肉体には、
ビンゴのオークションで権利を勝ち取った
ハドソンの脳が移植されようとしていた。

黒人を差別・糾弾しながら
その力量を求めようとする白人の様子を
極端に描いたホラーだが、
シニカルなブラック・コメディのようにも感じる。
黒人だけに…

監督と脚本のジョーダンは
一般的な黒人特有の、
シビアな扱いすら
もはやギャグにしてしまう
諦念の先にある明るさ目線も描写していて、
それを体現する存在であるリルが
いい味を出している。

そもそも登場時から胡散臭いローズを
アリソンが狂演。

笑いながら涙を流す
ベティの演技が非常に気味が悪くて印象的。

クリスがリルに救出されて映画は終わる。

惨状を前にした司法は間違いなくクリスを疑い、
彼が撃たれて終わる、という予想は裏切られる。
現実ではきっとそうなることは
観客のほとんどが考えることだと思う。
そうならなかったことに安堵しながらも、
そう考えてしまう現実を憂いて
一考することになれば良いな、と思った。

風刺的な要素も取り入れた
そのアイデアには驚き。

これが受賞したら驚くほどのＢ級感いっぱいではあるが、
さて、どうなるか？