Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回は第52回スーパーボウルでイーグルスが見せたスペシャルプレー「Philly Special」について書いていきたいと思います。
Philly Special
「Philly Special」というのは、第52回スーパーボウルでイーグルスが4thダウンギャンブルでタッチダウンを決めたプレーのことです。
本来パスを投げる役割であるQBフォールズがパスキャッチしたことでかなり話題になりました。
図示してみると、こんな感じです。
RBが少しシフトでポジションを変えて、左バンチ&ピストルフォーメーションからです。
おおまかな感じなので、多少間違っていても許してください。
フラッグフットボールに導入
かなりインパクトのあったスペシャルプレーだったので、フラッグフットボールやタッチフットボールでも同じようなプレーができないかと考える人は多いと思います。
今回はフラッグフットボールでやってみようかと思うのですが、いろいろと難しいポイントがあるので、そのへんについて考えてみます。
ゴール前のランプレーがない
「Philly Special」はゴールラインまで数ヤードの位置で行われました。アメフトにおいて、このシチュエーションでディフェンス側が警戒するのはランプレーです。
ディフェンス側がよっぽどいいプレーをしない限り、真っ直ぐゴリ押しでランプレーをすれば1,2ヤードは進むことができるので、オフェンスはまずはランプレーを考えますし、ディフェンスはそれをどう止めるかを考えます。
このときのイーグルスのフォーメーションであれば、RBが真っ直ぐ走る、もしくはブロッカーを多く使える左側に走るのが考えられます。
ただ、フラッグフットボールにおいては「ノーランニングゾーン」というのがゴール前5ヤードに設定されており、そこからはじまる攻撃ではランプレーすることができません。
このルールがあることによって、またオフェンスラインとディフェンスラインの攻防がないことによって、アメフトのプレーをそのままフラッグフットボールに導入するのは難しくなってしまいます。
QBがOLに近づいて指示だすことがない
「Philly Special」ではQBのフォールズがOLに近づいて指示を出すフリをしてパスコースに出る準備をしています。
このプレーだけ見ていると不自然な動きのように見えますが、NFLではたまに見ます。スタジアム内の歓声が凄まじいので、ディフェンスのブリッツへの対応の指示をするときにOLに近づくことがあります。
フラッグフットボールではそんなことはないので、不自然極まりなく、警戒されてしまいます。
ワイルドキャットができない
「Philly Special」がうまかったと思うのが、ワイルドキャット体型からのランプレーを含みにしているところです。
「ワイルドキャット」というのはRBがQBを介さずにダイレクトスナップを受けてそのままランプレーを行う作戦のことです。いまではあまり見ないプレーですが、ピッツバーグ・スティーラーズのRBベルがやっているのをよく見る気がします。
Saved by the Bell! Le'Veon Bell Scores the Game-Winning TD | Steelers vs. Chargers | NFL - YouTube
この試合のイーグルスのRBアジャイーとブラントがかなり好調だったので、ディフェンス側は多少ワイルドキャットへの警戒もあったと思います。
そこからさらに変化をつけてきたので、ペイトリオッツディフェンスは裏をかかれる結果になったんだと思います。
これをフラッグフットボールに置き換えようとすると、まずダイレクトスナップを受けたオフェンスプレーヤーはそのままランプレーをすることができないので、パスするのかハンドオフするしかありません。
となると、QBがモーションして、RBにスナップされたとしても、ディフェンス側の認識としては「QBが変わった」ぐらいにしかならず、混乱するほどの変化ではありません。
マンツーマンが少ない
「Philly Special」ではQBフォールズが右に抜けてパスレシーブを決めるわけですが、そこにはディフェンスがいなくなっています。
これは右側にセットしたWRにCBがマンツーマンでついていったためです。
前述の通り、この状況ではランプレーを止めるのにディフェンスの人数を割くのが優先されるので、複数人でゾーンを敷いてパスを防ぐということは難しくなります。
また、この試合で何度か見られたWRが外側に走って山なりのパスを投げるプレーにも警戒しなければいけないので、CBはガチガチのマンツーマンにならざるを得ません。
その結果、WRが内側に走ってフォールズが走り込むスペースができてしまいます。
イーグルスは当然このシチュエーションで、そこフォーメーションならペイトリオッツのディフェンスはそうやって守ってくることを研究してプレーコールを出しているはずです。
これをフラッグフットボールでやろうとすると、ランプレーにそこまで人数を割く必要がないので必ずしもマンツーマンになるとは限りません。
ゾーンディフェンスになれば、誰かしらディープカバーがいるので、WRにCBがタイトについていっても空いたスペースにフォローが入るはずです。
それでもやるなら
スペシャルプレーはそのシチュエーションだからこそ成功するという見込みをもって実行しているので、違うシチュエーション、ましてや違う似たスポーツにおいてやってみようというのはなかなか無理が出てきてしまいます。
それでも、やっぱり真似してみたいとということで、考えてみました。
想定としては、ゴール前ではなくハーフライン前です。ここであればノーランニングゾーンはありません。QBとRBが縦に並ぶピストル隊形ではなく、横に並ぶドラゴンフライ隊形に変更しました。
フラッグフットボールではこの隊形からランプレーをすることが多いので、ディフェンスにランプレーへの意識を与えます。ただ、ワイルドキャットはできないので、ダイレクトスナップを受けたRB(右QB)が左にロールしてパスを投げるというのをデザインしました。
これによって相手ディフェンスがゾーンであっても左側に寄っていくようにします。
QBのモーションについては指示を出すのを左レシーバーに変えました。なんとなくですが、センターよりレシーバーに指示出す方が自然かな、というのと左に寄っておいて距離があったほうがスペースを作る時間を出せる気がしました。
ペイトリオッツのスペシャルプレー
この「Philly Special」が話題になったのはペイトリオッツが似たスペシャルプレーを先にやっており、QBブレイディが落球しているからです。
こっちのプレーはもう少し単純で、普通のランプレーに見せかけてリバースからのQBへのパスです。こっちは比較的マネしやすそうです。
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ということで「Philly Special」についてでした。