Stevie Ray Vaughanについて | さすらいギターin LA

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LA在住ギタリスト・森孝人の音楽あれやこれやブログ

最近、レイボーンを含めた割と新しい感覚のブルースギタリスト達のスタイルに焦点をあてたシリーズを撮ったので、すこし書いてみます。

あ、ちなみにこのビデオがそのレイボーンの部分の一部ですね。

良かったらチェックしてください!

 

実は昔すでに少し書いてるんですが(こちら)、あまり良い事を言ってないので、今回もう少し詳しく書こうと思いました。

 

僕がレイボーン(アメリカでは皆「スティービーレイ」と呼んでます)を初めて聴いたのは、89年だったと思います。当時高校生で、部活(野球部でした)の休みによく仲の良かった友人と音楽を聴いてたんですが、2人で色々貸し借りしたりして、いつの間にか2人ともブルースを沢山聴くようになってたんですよね。

で、彼がこれ聴いてみなよ、って貸してくれたのが、レイボーンのライブ盤でした。
ちなみに、彼とはその後アメリカに渡る直前まで交流があったんですが、とてもユニークな男で、早稲田を出て、農家に就職、その後も沖縄の離島で銛漁とサトウキビ畑ではたらいたり、最後はキックボクシングに目覚めて足しげくジムに通ってました。

彼のバイトしていた深夜の吉牛はBGMがブルースチャンネルに切り替えられ、出稼ぎに来た外国人労働者達の人気店になっていたという。。。。笑

(ヤマさん、これ読んでたら連絡くれ!)

え〜、話が脱線しましたが、それ以来レイボーンも色々聴いて、ギターを弾くようになってからは、海賊版のビデオも何本も買って研究しました。当時はYouTubeもなかったから、どうやって弾いてるかはこういう海外のビデオを違法にダビングしたものを手に入れる以外は見る事もできなかったんですよね。

まあ、とにかく研究しては真似してましたね。

レイボーンの格好まで真似して電車に乗ってたら、傍にいたカップルが「これってマジシャン?」と小声で話しているのが聞こえました。。。。

 

さて、個人的な思い出はこれくらいにして、レイボーン本人について書こうかな。

レイボーンは、前回取り上げたクラプトンとは違って、そのキャリアを通してスタイルの変化がほぼなく、とてもテクニック的に安定していましたね。まあデビューした時既に完成されていたとも言えますね。

トーンは晩年のものを聴くと、若干エフェクトでプッシュしてつぶれるような歪み(ファズも使ってたと思う)や、コーラスが掛かったサウンドも聞けますが、基本はストラト→フェンダーアンプのサウンド。

ただ、弦が異常に太いこと(1弦が.013!)、半音下げチューニング、ピックの丸い部分を使っていたことなどで、ストラトのシングルコイルの弱点でもある、音の細さをまったく感じさせないトーンをだしてます。

ストラトもカスタムメイドのオリジナルのものを含めて何本か使い分けてましたね。メインはファンダーが後にシグネチャーシリーズに加えたサンバースト、ローズウッド指版の62年製のストラトですが、白いボディーのリップスティックピックアップが付いたものや、メイプル指版のナチュラルカラーのストラトなども弾いているのを見た事があります(ビデオでですけど)。

白いリップスティックのものは結構特徴のある、ザクザクしたサウンドでしたね。多分『コールドショット』などのサウンドはあのギターでは無いでしょうか?

アンプも、スーパーリバーブ、バイブロラックスなどのフェンダーアンプの他に、ダンブル、マーシャルも使っていたようです。

ここら辺は白人らしいというか、きめ細かい気がしますね。

エフェクトもシンプルですが、トゥルーバイパスなどない時代ですから、わざわざループセレクターを使用して、エフェクトオフ時は直でアンプに信号が行くようにしていたみたいです。

こういうのはブルースマンらしからぬ現代感覚ですよね。

ジョンメイヤーなどが受け継いでるんじゃないかな。

 

演奏は今更解説の必要もないですが、アルバートキングに多大な影響を受けて、それを普通のギターで再現し(アルバートは弦が逆さに張ってあるので大胆に1弦を2音程チョークダウンできた)、更に正確なテクニックで洗練されたスタイルに昇華してます。

音楽自体のスタイルも、普通のブルースから、もう少しファンキーなもの、少しカントリーやロックテイストのもの、ジャズフュージョンっぽいものまで幅広いです。

ギターソロは案外スタジオテイクを大切にしているようで、ライブでもスタジオ盤のソロをほぼ同じように弾いているものも多いです。

テクニック的には、開放を多用したバッキングの多彩さ、ハンマーオンとプリングオフで表現するバウンスの強烈さ、3連4つ取り、16分3つ取りなどのリズムの遊び、3つのフレットにまたがってチョーキングの音程を微妙に使い分けることで再現するアルバートキングのフレージングなどなど、特徴は沢山ありますね。

ワウの使い方もジミヘン譲りで上手かったです。

他にも、クリーントーンで、トーンを絞った独特のジャズトーンでウェスやケニーバレル、グラントグリーンに迫ったり、左手のテクニックを多用したスラー奏法で早いパッセージを弾いたりもしてました。

指弾きもよくしてました。

ある意味、ブルースギターの世界でここまで多彩に、完璧にギターを弾きこなせていたのは、後にも先にも彼だけかもしれません。あ、でもエリック・ゲイルズがいるか!

クリエティビティーや、オリジナリティー、テイストでは他に譲る部分もあったかもしれませんが、ここまで弾けた人はあまりいないですよね。

あと、どんなに派手になっても「ブルース」という音楽になっていたのはすごいですよね。

若い人たちがブルースに興味を持つきっかけになったと思います。

あと先人達へのリスペクトも常にあって、そこも良かったな。 

 

90年にヘリコプターの墜落の事故で亡くなったのを今でも覚えてます。高校の夏休みで実家にいて、朝起きたらおふくろに教えてもらいました。新聞に乗ってるって。

ずっとその切り抜きをIn StepのCDのブックレットに入れてました。

今も生きてたらどんな音楽をやってるんですかね?

案外ギタリスト的にはもう変化しなかった可能性もありますけど。

黒人のブルースマンにも愛されてたみたいですし、一度生で見てみたかったな。

 

 

墜落事故の直前のジャムセッション。Buddy GuyとJimmie VaughanはEric Claptonのギターを借りて弾いてますが、Stevieは自分の愛機で弾いてますね。

 

こちらは、VHSビデオでリリースされたセッション時のショット。アルバートキング、BBキング、クラプトンと。