コマ送りの狭間で ~漫画の感想~

読み終えた漫画について、独断と偏見に基づき評価・感想を綴るブログ。






トップページ週刊ヤングサンデー > イキガミ 「ここで逃げたら、許しませんよ。」
完結した漫画を取り上げている。
未だ読んでいない方には、良い漫画と出会えるきっかけになると幸い。
既に読んだ方には、新たな発見や共感が得られると幸い。

イキガミ

【タイトル】

イキガミ
いきがみ



【概要】

作者 間瀬元朗
出版社 小学館
掲載誌 週刊ヤングサンデー、ビッグコミックスピリッツ
発表期間 2005年 - 2012年
巻数 全10巻



【評価】

★★★☆☆




【内容紹介】

国民に生命の価値を再認識させることを目的として制定された法律「国家繁栄維持法」。
この法律の名のもと、1000人に1人の確率で国民に注入される特殊カプセルは、対象者が18~24歳の期間に破裂し、その者の命を奪う。
そして、そんな「死」の24時間前に対象者のもとへと届く死亡予告証こそが、通称“逝き紙(イキガミ)”と呼ばれる一枚のカードである。
武蔵川区の“イキガミ”配達員・藤本賢吾が、今回届ける対象者は…!?
(amazon引用)



【見どころ】

メメント・モリ

「死」を意識して生きる。
作品の設定として、これを制度化している舞台で各登場人物の苦難や葛藤が描かている。
メッセージが直接的なので、「生きること」について改めて確認する題材となるのではないだろうか。

国家というシステム

国が定めた生死を管理する法律の上に成り立つ世界。
国が法律を定めるのは当然のこと。
その法律に疑問を持つものは少なくないが、一方で当事者意識を持たない者がほとんどである。
そして、自分に火の粉が降りかかった時に初めて気が付き、そこから行動するのだが・・・。
システムの中に組み込まれている個人というのはどうあるべきなのか。
この作品の主人公・藤本も釈然としないまま自分の公務をこなしている。
そんな藤本は、ある出会いをきっかけに何かが変わっていくことを感じていく。

現実感を漂わせる作風

舞台は、現代の日本を思わせる。
大きな違いと言えば、「国家繁栄維持法」があることだけである。
幼いころに予防接種をするは現実にある話で、そこに特殊なカプセルを混入させるというのは変にリアリティがある。
また、イキガミは戦時下の赤紙を連想させる。
このように現実味があるため、より考えさせられる作風となっている。
























【感想(ネタバレ注意)】

普段生活をしていると、自分の死について考えることはあまりないであろう。
近しい人が他界した時に、改めて気が付くようなものである。
いつ死ぬかわからないし、あっさり死んでしまうこともあるのに、人間とは何とも図太い生き物だと自分を棚に上げて思ってしまう。
この作品は、そんなことを再確認させてくれた。

序盤は3話完結な物語が続いており、その中で作品の世界観を説明しているようであった。
ストーリー構成は、正直なところ好みではなかった。
死という不幸を敢えて作り出し、そこに一筋の救いを描くことで感動を生み出すように思えたため、少し興ざめしたのだ。
不幸がないと生まれない幸せというのは、矛盾を感じてしまい、哀しいものである。
しかし、死に直面した人間の描き方にリアリティがあって良かった。
また、そのような場面について、読者としての自分の考える巡らせることができた。

キャラクターについては、
主人公・藤本が良くも悪くも普通の人間だったため、違和感を持つことなく読むことができた。
国の制度に対して人並みの疑問を持ちつつも組織に従う、
ちょっとしたきっかけから影で反発をしてみる、
結局それが見つかって罰せられる、
最終的には自分の考えに従って行動を起こす、
この特別な感じの無いところが、一般人を思わせるため共感を持てたのだ。

最期は、話が戦争まで発展したため、ちゃんとした終わりが描かれるかどうか不安になった。
逃亡という結末には、少し残念な思いをしたが、自分で考えて自ら行動を示した点は良かったと思う。
組織によって個人が抑制されるといったことはよくあるので、それに対する風刺的なものが見えたような気がした。
 

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