オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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ラスベガス半生中継・2017年9~10月 (6) G2Eショウ・気になった機械その2

2018年01月04日 14時50分42秒 | 海外カジノ
昨年の暮れ、スター・ウォーズの最新作「最後のジェダイ」を観てきました。ご存知の方も多いと思いますが、今回のスター・ウォーズにはカジノのシーンが出てきます。そこで行われているゲームは架空のものですが、サイコロのようなものを投げたり、メカニカルなスロットマシンや未だにコインスロットにコインを投入している事をうかがわせる描写があるなど、そのカジノで行われていることは、現在我々が生きるノンフィクションの世界で行われているギャンブルゲームと地続きのハードウェア、ソフトウェアであるように見えました。


「最後のジェダイ」に登場した、3本のリールの代わりに3枚の円盤が同心円状に配置されているスロットマシンは、今もアンティークスロットマシンとして人気が高いこのLittle Duke triple jackpot side vender (Jennings, 1932)を想起させる。「side vender」とは、筐体の横にガムの自販機が取り付けられたモデルであることを意味する。この写真は、sigmaの創業者である故・真鍋勝紀氏がかつてコレクションしていたもの。

スター・ウォーズの1作目(エピソードIV・新たなる希望)では、R2-D2とチューバッカがチェスの類と思しきゲームに興じるシーンがありました。チェスというソフトウェアは現実にも存在しますが、それを、立体画像という架空のハードウェアで表現することによって、映画の中で描かれている世界は我々が生きる世界とは異なる別空間であることを感じさせたものでしたが、このカジノシーンにはそのような「センス・オブ・ワンダー」がありません。

もちろんそこには、カジノであることを示すためにステレオタイプな演出が必要だったという事情もあったのかもしれません。しかし、前回ワタシは、「スロットマシンの進歩は、ソフト、ハード両面共にいよいよ限界に達し、手詰まりとなったように思う」と述べましたが、物理や確率などの自然の法則や、技術的制約から自由であるはずのフィクションの世界でさえ新たなギャンブルのフォーマットが提示できないのであれば、現実の世界において画期的な次の一手がなかなか出てこないのも無理はない、と思いました。

まあ、そうは言っても、今後もスロットマシンはその時々の最先端の技術を使って(その多くは単なる装飾的な意味しか持たないものではあろうけれども)作り続けられることではありましょう。あるいは、マカオが新たなゲーミング市場となって以降、多くのメーカーが中国の文物をテーマとするスロットマシンを開発するようになったように、市場を席巻する新しいテーマが生まれる可能性もあります。次はひょっとすると、カジノが解禁されようとしているニッポンのジャパンだったりするかもしれません。我々プレイヤーは、その時を無責任に待ち続けていれば良いだけのことです。

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2年ほど前から始まった業界の再編も一段落した感があり、期待のスキルベースドゲーミングやVRも未だ確たる方向性が見出だせていないことに加えて、スロットマシンのイノベーションもない今回のG2Eショウは、見どころというものが殆どありませんでしたが、もう一つだけ記録しておきたいゲームがありました。

主にテーブルゲームのイクイップメントを手掛ける「TCSJOHN HUXLEY」という企業があります。もともと、TCSはルーレットで使用するチップを自動的にソートする「チッパーチャンプ」という機械で成功した会社で、一方のJOHN HUXLEYは、ルーレットのホイールやゲームテーブルのメーカーとして定評のある会社でした。この両社が合併して(TCSがJOHN HUXLEYを買収した)現在の社名となり、デジタル技術を導入した新たなゲームテーブルを数年前から出展してきています。それが、今回はゲームテーブルだけでなく、「GAMEBALL」という、バカラの変形ゲーム機を出展してきました。


GAMEBALL BACCARAT。ほぼ正方形のプレイフィールドを囲むように、各辺に2台のサテライトが設置されている。




GAMEBALL BACCARATのプレイフィールド(上)とサテライト画面(下)

正方形のプレイフィールドは斜めに赤(バンカー)と青(プレイヤー)に塗り分けられ、それぞれのエリアに3個ずつのドームがあり、ドーム内には12面体のダイスが1個ずつ入っています。このダイスがカードの代わりとなるわけですが、カードの場合は2からAまで13種類の目があるところ、このダイスには「10」の目がありません。このため、まだ厳密に計算していませんが、勝ち負けの確率はオリジナルのバカラと変わらないけれども、タイの発生率は低くなると思います。

3つのドームのうち1つは、オリジナルのバカラでの3枚目のカードに相当するドームで、通常は金色のカバーで中身が隠されています。ゲームが始まると、赤、青それぞれの2つのドームの内部が回転して、最初の手を決めます。その後、3枚目のカードが必要な場合には金色のカバーが開いて、3つめのダイスが回転します。

一見したところ豪華で目新しそうに見えるこのゲームには、しかし致命的な欠点があります。というのは、1回のゲームに要する時間が、最短で17秒、最長では70秒もかかるのです。一般的なバカラプレイヤーは、日本のパチンコプレイヤーなどとは違って、期待感を煽るような長々とした演出は望んでいません(自分でカードを絞れる場合を除く)。そんなところで気を持たせられるよりも、さっさと結果を出して次のゲームに移りたいと思うものです。こんなに時間がかかるようでは、プレイヤーをイライラさせる効果しかありません。

ましてや、今回の出展ではミニマムベットが$1に設定されており、ただでさえハウスエッジが低いバカラというゲームで単位時間当たりのゲーム数が少なくなってしまうようでは、人件費を払っても従来の人間がオペレートする方がよほど収益が上がりそうで、カジノ側からの需要もないでしょう。

ワタシとしては、このような意欲的な試みで、しかもアナログなゲームには、応援したいという心情が強いです。なので、敢えてここに記録しておきますが、しかし、全く残念ではありますが、次回の出展は無いでしょう。これを糧としてTCSJOHNHUXLEYがどう変わっていくのかは、今後の興味ではあります。

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