『習近平独演、3時間半「政治報告」を整理する 一見、自信に満ちた「独裁者宣言」の内実は』(10/25日経ビジネスオンライン 福島香織)、『中国新指導部が発足、漂い始めた文革の空気 企業への締め付けはより厳しく、日本への脱出を急ぐ起業家も』(10/26日経ビジネスオンライン 小平和良)について

昨日に続き、中国共産党関連記事です。

10/26日経朝刊には権力を何に使うのか

2期目に入った中国共産党の習近平総書記(国家主席)は毛沢東、鄧小平両氏に並ぶ巨大な権威と権力を手にした。習氏は権力を一身に集めて何をしたいのか。世界はそこに不安を覚えている。

「天地をあやつる傑出した知略と遠大な計略」「限りない愛にあふれた領袖」。党大会の期間中、北京は習氏への賛辞で埋め尽くされた。

文化大革命を思い起こさせる前時代的なことばは、最先端の国際都市に生まれ変わった北京の景色とあまりに釣り合わない。私たちが向き合っているのは、未来を先取りする経済とは逆に、政治が過去に戻る中国だ。

鄧氏が1978年に改革開放を始めたとき、大胆にしくみを変えたのは経済だけでなかった。

文革で毛沢東氏への個人崇拝が極まり、国がばらばらになる寸前までいった過ちを繰り返してはならない。鄧氏はそんな思いから、権力をひとりに集めない集団指導体制の構築に心を砕いた。

習氏はそれを壊そうとしている。周りを自分に逆らわない側近たちで固め、党規約に自らの名を冠した思想を盛った。新しい最高指導部に後継候補を入れず、5年後に任期が切れても権力の中枢にとどまり続ける意欲を隠そうとしない。

みんなで時間をかけて決めるやり方が、時代にそぐわなくなった面はある。胡錦濤前政権は派閥間の調整に明け暮れ、決めるべきことを決められなかった。汚職に手を染める幹部も相次いだ。

米欧の民主主義国がポピュリズム(大衆迎合主義)の波に覆われるなか、権威主義的な中国のしくみが自分たちに合っているとみる途上国は増えている。強い指導者を望む世論は世界の潮流だ。習政権が2期目に入るのと同じ時期に、安倍晋三首相が衆院選で再び1強体制を固めたのは必ずしも偶然でないだろう。

問題は、習氏が権力を何に使おうとしているかだ。中国は経済規模で米国に迫り、追い越そうとしている。習氏が権力を持続的な成長に必要な痛みを伴う改革や、国際協調に向けた外交を進めるために使うなら、それは世界の安定に結びつく。

しかし、どうもそうはみえない。南シナ海の軍事拠点化を強行するなど国益を一方的に主張する横暴な振る舞いが目立つ。大国として、世界が共感する理念や価値観も示せていない。

「党が一切を指導する」。習氏は政治、経済、文化のあらゆる面で党の支配を貫くと繰り返す。「国益」どころか「党益」こそがすべてと言わんばかりだ。党を強くするためだけに権力を使うのか。だとすれば、中国だけでなく世界にとって不幸である。

(中国総局長 高橋哲史)>(以上)「権力を何に使うか」と聞いていますが、共産主義では国民の為の政治は望むべくもないでしょう。党益追求か習個人の私益の追求でしょう。それを選挙という民主主義手続きで選ばれた安倍首相を共産党独裁の習と一緒にするのはどう考えても頭がおかしいとしか思えません。それでも、習に対する不安は感じているようですが。筆者は、実は個人の問題ではなく、共産主義と言う構造上の問題であるというのが理解できていません。大躍進・文革での虐殺を起こした毛だけでなく鄧小平だって天安門事件を引き起こしたではないですか。日本の左翼議員が良く言う「国民の為の政治」何て嘘に決まっています。

同じく10/26日経朝刊には米豪印と戦略対話、河野外相 4カ国で自由貿易推進

河野太郎外相は25日、日本経済新聞のインタビューで、日米豪印4カ国の首脳級でつくる戦略対話の実現をめざす考えを表明した。南シナ海からインド洋を経て、アフリカに至る地域を中心に自由貿易を推進し、防衛協力も念頭に置く。広域経済圏構想「一帯一路」を掲げて海洋進出を強める中国に対抗する狙いがある。>(一部抜粋)。8月のマニラで開かれた戦略対話の時には英仏外相にも連携を打診したとあります。軍拡に邁進し国際ルールを守らない、歴史・領土問題で平気で嘘をつく中国は封じ込めなければなりません。自由主義諸国は中国の人口と金に目が眩んで後悔することの無いよう、「肉を切らして骨を切る」痛みを覚悟せねば。

10/25中国観察<“絕不會犧牲台灣” 美國前亞太助卿訪台(圖) 看中国=「米国は絶対に台湾を犠牲にすることは無い ラッセル前国務次官補(東アジア・太平洋担当)が台湾を訪問>

http://chinaexaminer.bayvoice.net/b5/trend/2017/10/25/377079.htm%E7%B5%95%E4%B8%8D%E6%9C%83%E7%8A%A7%E7%89%B2%E5%8F%B0%E7%81%A3-%E7%BE%8E%E5%9C%8B%E5%89%8D%E4%BA%9E%E5%A4%AA%E5%8A%A9%E5%8D%BF%E8%A8%AA%E5%8F%B0%E5%9C%96.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook

ラッセル前国務次官補(東アジア・太平洋担当)は2013年7月~2017年3月までその任にあった。オバマ時代ですから民主党に近いと思われますが、彼が10/24台北政治大学で講演した時に、「米国の台湾関係法、米中共同声明、米国の主張する“一つの中国の原則(中国の主張とは違う)”に基づき、中国との関係を良くするために台湾を犠牲にすることは絶対にない」と述べています。日米印豪台+英仏(独が入っていない所がミソ、独は経済的に中国に傾斜し過ぎ、中国経済が崩壊したらどうするのでしょう)で中国を封じ込め出来れば良いです。

福島氏の記事とは逆になりますが、中国では高圧的な指導者が長く続いた方が日本人に中国人の本音を気付かせるうえで良いのではと思います。日本人は簡単に騙される人が多すぎます。中国が猫苗声で日本に近づいてくるときは何かあると思わないと。それに左翼メデイアと左翼政党が呼応して中国に有利な政策を採らせようとします。中国があからさまな反日政策を出せば、彼らもそうそう味方はできないので。自分の頭で考える人をもっと増やさなければなりません。物事の改善プロセスは、現状把握(情報収集)→問題解決→再発防止の行程を通ります。戦争でもしっかり、敵の情報を集めないと負けてしまいます。情弱人間では正しい判断ができないという事です。

習は強国を目指すと言っていますが、経済と軍事が車の両輪で、経済音痴の習では強国の実現は難しいでしょう。中国の膨大な債務問題を解消するのは誰にもできないと思いますが。でも、言論の自由だけでなく、営業の自由もなくなれば、利に敏い中国人ですから海外に逃げ出すことは充分考えられます。日本に来たとしても簡単に永住権は与えないように。中韓人はいつ裏切るか分かりませんので。

福島記事

長い長い政治報告の狙いと意味は…(写真:AP/アフロ)

党大会が始まった。この原稿が掲載されるころに、ちょうど閉幕し、人事が明らかになっているかもしれないので、現時点で人事については触れない。ひょっとすると、メディアが報じているような、人事予測がまったく外れることもあり得る。しかしながら、3時間半、3万2000字以上におよぶ習近平総書記の政治報告は予想どおり、自分が毛沢東に比肩する唯一の党と国家の指導者として新しい時代を創るのだという、一見、極めて自信に満ちたものだった。はっきり言ってしまえば独裁者宣言である。この長い政治報告で特に、個人的に注目したいポイントを整理していきたい。

36回の「新時代」で「強国化」を宣言

まず、この長さ自体に意味がある、と言われている。

3時間半の演説の間、習近平は一度、水を飲んだだけで、ずっと直立したまま報告を朗読。この長さ自体が、党と国家の指導者としての強い意志、頑健な体力をアピールする演出であったと思われる。

もう一つは演説後に胡錦涛らと握手し、胡錦涛が腕時計を示しながら談笑し、江沢民とも短く握手してみせた点。これは習近平の強権を長老たちが認めているのだという演出、あるいは党内団結の演出だと見られている。この演出が、習近平が胡錦涛らに何かを譲歩して成り立ったものなのか、それとも習近平の力が、胡錦涛たちも認めざるを得ないほど強いということなのかは、人事などの結果も併せてみないとわからない。一つはっきりしているのは、相変わらず習近平と李克強の仲は険悪なままで、演説後、習近平は李克強には会釈すらしなかった。

内容についての最大の注目点は、党規約に盛り込まれるであろう習近平の「新時代の中国の特色ある社会主義思想」が具体的に何を指すのか、である。

「中国の特色ある社会主義は新時代に入った。これは我が国の新たな歴史的方位である」という表現。これは趙紫陽の政治報告で提示された「社会主義初級段階論」(第13回党大会、1987年)の一段階上に入った、ということで間違いない。つまり初級から中級への段階を上った、初級段階を鄧小平時代とすると次なる習近平時代という意味で、鄧小平時代との決別宣言であるともいえる。

とにかく「新時代」という言葉だけでも36回も繰り返している。自分が新時代の創立者であるということを強調したいのだ。そして鄧小平時代が党の権威、求心力の根拠を高度経済成長に求めていたのに対し、習近平時代は「中華民族の偉大なる復興の中国の夢」を実現する「強国」化に求めるということが特徴だ。

その強国化の方法が、軍の現代化建設であり、世界一流の軍隊を創る、ということだ。

さらに「我が国の社会の主要な矛盾は変化した。我が国の社会主義があるところの歴史的段階の判断を変えねば、つまり社会主義の初級段階に我が国が長期に居続けるという基本的国情が変化しなければ、我が国が世界最大の発展途上国であるという国際的地位も変わらないのである」。この表現から見てもわかるように、習近平は強国化することで、中国の国際的地位をいわゆる「発展途上・新興国」の立場から世界のリーダーシップをとる大国へと格上げしよう、と考えている。

そして「中国の夢」実現にとって重要なのが、「四つの偉大」(偉大なる闘争、偉大なる工程、偉大なる事業、偉大なる夢)としている。気になるのが「偉大なる闘争」であり、単純に目標に向かっての奮闘ともとれるが、過去の発言などとすり合わせると、反腐敗闘争ともとれるし、いわゆる新たな階級闘争ともとらえられるし、外国の敵対勢力との闘いともとらえられる。反腐敗闘争の継続、党の一切の指導の徹底、なども合わせると、習近平のやろうとしていることは、独裁強化以外の何物でもない。

「二つの百年」は任期継続への布石か

また習近平の目指す社会主義現代国家建設のタイムスケジュールとして、第19回党大会から第20回党大会(2022年)の5年が、「二つの百年」目標に向けて進む時期とした。

二つの百年とは、①中国共産党成立百年に当たる2021年に小康社会(ややゆとりある社会)建設を達成し、国内総生産(GDP)と都市・農村部住民の所得を2010年比で倍増する。②中華人民共和国が成立百年を迎える2049年に富強・民主・文明・調和をかなえた社会主義現代国家の建設、という目標を指し、習近平政権二期目の5年がこの目標達成の鍵となる時期である。2020年から2035年までの15年で小康社会を実現し、次の15年のさらなる奮闘で富強民主文明調和の美しい社会主義現代化強国の建国実現する、とした。

この習近平政権二期目の途中から15年ずつ区分していることが、あたかも第20回党大会以降も自分が任期を二期に限らず、継続して党と国家の指導に当たるという含みをもたせているように感じるのも、私だけではなかろうと思う。

このとき、「中国は総合国力と国際影響力が世界の指導的国家となり、全人民の共同富裕を実現し、我が国人民はさらに幸福で健康な生活を享受でき、中華民族は世界民族の林に更なる昂然と屹立する姿を見せることになる」という。

経済の「厳しい挑戦」に青写真なし

一方、だがこの長い演説において、具体的な経済成長戦略、たとえば市場改革については触れていない。「経済発展について厳しい挑戦に直面する」という危機認識を政治報告で示すことは珍しい、と欧米メディアなどは報じているが、じゃあどうするのか、という青写真がない。

米国の中国経済専門家のオーサー・クロエバーがVOAの取材で次のようなコメントをしている。

「この報告書は政治を重視し、経済を軽視し、国有企業を重視し、市場を軽視し、党の指導を重視し、政府機能を軽視している…。習近平は党大会では何ら政策の方向性の変化を打ち出しておらず、ただ政治議論のプロセス重視を強調し、経済優先を無視している。

すなわち、胡錦涛や江沢民や鄧小平のような経済優先ではなく、政治プロセス、とくに社会の安定維持、監督審査の拡大と強化と維持、社会福利、あらゆる機関含め社会のすべてを中国共産党の強大な指導下に置くことを重視している。これは決して目新しいことではなく、これまでやってきたことを一つの正式な声明にしただけだ」

ちなみに、彼は中国経済が抱える債務の急増について、すでにGDPの250%を超えており、90年代の日本経済のようなどん詰まり状態であることを指摘し、習近平がこの報告で行うような国有企業重視の政策が、さらにこの状態を悪化させるであろうと予測している。

とすると、経済成長というパイが広がらないなかで、収入格差、貧富の差、教育や医療の地域格差の問題解決について、「危険を冒しても、主要な阻害要因を克服する」というならば、方法論としては、豊かになりすぎた中間層を既得権益層として引きずり下ろす方向で格差を調整する、ということなのか。反腐敗キャンペーンは、権力闘争という面も、党内粛清という面もあるが、同時に党内の資産家潰し、既得権益潰しという面もある。それが継続されるとみていいだろう。

「南シナ海」称賛、「安全」倍増、「市場」激減

国防や外交については、南シナ海の島々の埋め立て行為を称賛し、中国共産党が国家安全と社会の安定を維持する力として強調している点に、ワシントンポストなど米メディアが注目している。

これは習近平の強軍化路線が今後も継続されるというシグナルであり、またハーグ裁定を公式に無視するという宣言というとらえ方もできる。中国には中国のイデオロギー、秩序、価値観があり、それは西側の常識、秩序と全く違う。しかし、習近平はそれを世界に認めさせようという、西側世界に対する公然とした挑戦姿勢も打ち出している。さらに西側の影響を強く受けている台湾や香港の独立派に対する強い牽制も示した。

中国経済が厳しい挑戦に直面し、社会が不安定化したとき、国内の視線を外に向けさせるため、南シナ海の成果を喧伝することが、党の執政党の正統性維持につながる、ということかもしれない。

政治報告に頻繁に出てくるキーワードでは、「強国」「大国」が26回も繰り返されている。これは、鄧小平の「韜光養晦」をやめて、あからさまに強国・大国を目指すこと、その高い目標を堂々と掲げることによって党の求心力、執政党としての正統性を維持しようということだろう。「民族主義を利用して、政権の正統性の基礎とするやり方は、経済発展が困難になったからだ。中国の夢、強国の夢を打ち出すことが、習近平個人の威信、個人的影響力を高めることにつながるという考え方がある」(香港城市大学の元政治学教授・鄭宇碩)という。

だが、同時に「安全」という言葉が55回もある。これは10年前の胡錦涛の政治報告の倍以上だ。ということは、習近平は大国の自信を打ち出している姿勢とは裏腹に、実際は安全感がまったくないのかもしれない。「社会矛盾が突出して、中国共産党体制は安全でなくなっている。大衆・公民が官僚や政府部門に対して大きな威圧感となっているので、これが彼らにとって強烈な不安感となっている」(人権活動家・胡佳のコメント、ニューヨークタイムズ)ということかもしれない。

一方、「市場」という言葉は19回という少なさだった。江沢民が1997年に行った政治報告では「市場」は51回繰り返された。習近平がいかに市場を重視していないかが浮かび上がる。「市場だけでなく、民営企業に関する言及も非常に少なく、一度しか触れていない。民営企業の多くは投資を望まず、むしろ資金を外国に撤退させたいと願っている」(北京理工大学経済学教授・胡斗星、RFA)。

「習近平時代」経済依存度で評価に差

さて、この政治報告に対する海外メディアの評価は結構幅がある。

例えばシンガポール華字紙聯合早報は「この報告書に国際社会はほっとしたことだろう。中国が毛沢東時代の権威政治と計画管理時代に回帰するのかと心配していたから。政治報告は全体として温和な態度で改革姿勢を打ち出している」とポジティブに評価している。こういう肯定的な評価はスペインメディアや、中国経済の依存度が高いところでは目立つ。

ニューヨークタイムズは「注目点は五つ。①経済調整はするが市場改革はしない、②外交と軍隊の現代化、③台湾と香港、④国内安全、⑤中国が新時代に突入」「報告は広範な政策大綱を示すが、具体的な青写真は一つもない。とはいえ、習近平自身が何を重視しているかは余すところなく体現している。つまり中国の偉大なる転換期に立つ一人の指導者である」と北京駐在記者の署名記事で論評している。

厳しいのはVOAなど、在外華人向け華字メディアで、在米共産党研究者の高文謙は「政治報告に何ら目新しいものはなく、空話(中身のない話)、老話(言い古された言葉)の羅列、“四つの偉大”も“党の一切の指導”も文革時代の言葉を繰り返しただけ」「今後5年も高圧統治を続けていくことは政治の後退であり、経済の萎縮であり、文化の凋落であり、中国の自己封鎖時代の到来である。“新時代”とは実際のところ毛沢東時代と鄧小平時代の悪い所を集めたもの、それが習近平時代だ」という。

さて私個人の評価は、やたら壮大で自信たっぷりで強気の政治報告が、習近平の実力、政治基盤の強さに裏付けられたものなのか、足元の不安定さとコンプレックスの裏返しなのか、人事の蓋をあけてみないとわからない、ということで党大会が終わるまで保留しておきたい。しかしながら、この“習近平時代”というものが、中国国内の人民と国際社会にある種の混乱をもたらすものであることは間違いないと思う。習近平時代がそう長く続かない方が、少なくとも日本と日本人にとっては良いだろうし、中国人民にとってもハッピーだろうと考えている。

小平記事

「日本で500万円投資するとしたらどうしたらいいのでしょうか」

中国でベンチャー企業を経営しているある中国人経営者は今、日本の「経営管理ビザ」を取得しようと躍起になっている。経営管理ビザは外国人が日本国内に置かれた企業を経営するために必要となるもので、500万円以上の投資などが条件となっている。経営管理ビザを手に入れれば、将来的には永住許可の取得も視野に入る。

この経営者は今すぐ日本に拠点を移すことは考えておらず、中国での事業を止めるつもりもない。「いざという時のため備え」だという。それでも経営管理ビザ取得を急ぐのは、中国の企業経営環境が激変する可能性を実感しているためだ。この夏、きっかけとなる「事件」があった。

この企業が提供しているサービスが一時、インターネット上で問題となった。企業の製品やサービス、はたまたCMがネット上で炎上することは今や世界中で見られる現象で珍しいものではない。だが、炎上騒ぎを起こしたことで公安当局の取り調べを受けるとなればどうだろうか。

個人の安全を守るため同社が引き起こした「炎上」の詳しい内容に触れることはできないが、詐欺のような、どの国でも犯罪に該当するような行為はしていない。不注意により、敏感な問題に触れてしまった格好だ。だが公安当局が取り調べる以上、中国の何らかの法律に触れているということになる。結局、この企業は行政処分を受けることになった。

規模の大きくない同社は事業継続が危ぶまれる事態に陥った。この経営者は、中国では企業の生死は国の考え一つで決まってしまうと改めて分かったという。日本の経営管理ビザ取得を真剣に考え出したのはそれからだ。

中央委員から外れた王岐山氏

中国共産党は10月25日、第19期中央委員会第1回全体会議(1中全会)を開き、最高指導部となる政治局常務委員の7人を選出した。習近平総書記(64歳)と李克強首相(62歳)が続投。栗戦書・中央弁公庁主任(67歳)、汪洋・副首相(62歳)、王滬寧・中央政策研究室主任(62歳)、趙楽際・中央組織部長(60歳)、韓正・上海市党委員会書記(63歳)が政治局委員から昇格した。

中国の新しい「チャイナセブン」。左から韓正、王滬寧、栗戦書、習近平、李克強、汪洋、趙楽際の各氏(写真:Bloomberg/Getty Images)

10月18日から10月24日まで開催した中国共産党第19回全国代表大会(党大会)前には、今回の常務委員人事がいくつかの点で注目されていた。1つは反腐敗運動を取り仕切ってきた王岐山氏(69歳)の去就だ。王氏は結局、約200人の中央委員の名簿にも名前がなく、党の中枢メンバーからは外れた形になった。

また習氏の「子飼い」とされる陳敏爾・重慶市党委書記(57歳)が常務委員入りするかも焦点だったが、常務委員を含む25人で構成される政治局委員入りにとどまった。また、胡錦濤・前国家主席や李首相を輩出した共産主義青年団出身の次期エースとされ、同じく常務委員入りの可能性が出ていた胡春華・広東省党委書記(54歳)も常務委員には昇格しなかった。結局、次の指導者候補となり得る50代の常務委員入りはなかったが、習氏の長期政権への布石なのだろうか。

この先5年の中国を率いる新たな常務委員メンバーは「習氏のチーム」と言った様相だ。特に栗戦書氏と王滬寧氏はこの5年、すぐそばで習氏を支えてきた側近だ。習氏と栗氏は1980年代に河北省の近接する県の書記として知り合って以来の関係だという。また王氏は思想面などのブレーンとして習氏の外遊に同行するなどしてきた。また趙楽際氏は人事を差配する党中央組織部長として反腐敗を後方から支え、習氏に近い人物の昇格などを実現してきた。

漂い始めた文化大革命の空気

24日に閉幕した党大会では、習氏の名を冠した「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」を行動指針として盛り込んだ党規約の改正案が採択され、習氏は毛沢東に並ぶ権威となった。習氏は党大会冒頭の演説で次のように述べている。「新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を勝ち取り、中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現に向けてたゆまず奮闘しよう」。これが習氏をはじめとする新最高指導部の目標となる。

具体的には何をしていくのか。特に経済面について見ていきたい。習氏は演説で「供給側構造改革を深化させる」「革新型国家の建設を加速する」などと述べた。「世界レベルの先進的製造業クラスターをいくつか育成」し、「経済体制の改革は(中略)公平で秩序のある競争、企業の優勝劣敗を目指して進まなければならない」と説く。また習氏は「開放は進歩をもたらし、閉鎖は遅れを招く」とも述べた。

これだけ見れば、中国の市場経済は一段と開放に向かうようにも思えるが、その一方で「全活動に対する党の指導を堅持する」とも述べている。革新や開放はあくまで共産党の指導の範囲内で、ということになる。それどころか、共産党や国による締め付けはますます厳しくなっているように見える。

冒頭の中国人経営者が経験した「事件」はその一端だろうか。この経営者はまだ若く文化大革命を経験してはいない。だが、知識層だった経営者の父親は農村に下放された経験がある。父親の経験を聞いたこの経営者は、現在の中国に当時と似た雰囲気を嗅ぎ取った。

習氏の権威がさらに強まるこの先の5年は、中国の企業経営者であっても難しい判断を迫られる局面が増えるかもしれない。「中華民族の復興を追求する」という習氏の所信表明に照らせば、日本企業を含む外資企業にとってはさらに厳しいものとなりかねない。

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