おでんの美味しい季節がやってきた。
といっても我が家では真夏でも
おでんを作る時があるのだが…
おでんの具材で
おいら的にもっとも高級であると
認識しているものが ズバリ
ゆで卵 なのだ~
ゆで卵には
とても切なく
悲壮な記憶が
凝縮されている。
思い起こせば…
あれは~
おいらがまだ5才くらいの時。
毎日ではないが
夕方になるとおでん売りの屋台が
家の前をゆっくりと通り過ぎる。
ちりんちりんとベルを高々と
鳴らしながら通るので
すぐにおでん屋だとわかるのだ。
毎回ではないが
おいらが食いたいな~ と
もらすと おふくろが
じゃ~1本買ってきな と
おいらに10円玉を1枚くれたりする。
当時 おでん種のほとんどが10円。
そんな中
卵とタコが20円だったと記憶している。
つまり~
それらの具材だけ倍額していたわけだ。
今時に換算すれば1個100円が
200円することになる。
ある日のこと
どういう風の吹き回しか
その日に限ってお袋が
おいらに10円玉を2枚
手渡してくれたもんだから
つい おいらは目を疑い
え 20円
おまえ~ 卵食いたいんだろ
いいの~
早く行きな
嘘みたいだ~
多分思うに
あんとき 機嫌がよかったんだろう。
おいらは
もう たまらなく
嬉しく 喜ばしく 笑み浮かべ…
20円握りしめ
おでん屋へ猛ダッシュ
そして 夢にまで見た
ゆで卵
いいころ合いで薄茶色に染まった
見るからにうまさ おいしさ ホトバシル
ゆで卵の串刺しを手にしたのであった
即座に家までまたまたダッシュ
と・ところがだ~~
あろうことか走っている途中で
つまずき
オアッチャ~っ
おいらは
真正面から
ためらいもなく
いきおいよく
すっ転んでしまったのだよ。。
無残にも
串から離脱した薄っ茶色の
うまさ おいしさ ホトバシっていた
ゆで卵さまがだ
前方へ
おいらのことなど見放して
飛び去ってしまった
そして程なくして道路脇へ着地。
転がりくだけたのである
やっちまった~
し しか~し
ここでべそかいたら
お袋にバレて
怒られるにきまってる と
おいらは子供ながらに
どん底の耐えがたき悲しみを耐え
忍びがたきを忍んだ。
そして帰るなり
あのよ~
うれしくて
途中で急いで食っちゃったよ~ と
その場はごまかした。
おでん種の
タマゴを見るたび
思い出さずにはいられず
ホンの一瞬
目が潤むのです。
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