2016年5月4日水曜日

とと姉ちゃん(27)森田屋の娘

宗吉(ピエール瀧)が振り上げた拳を力無く下げ膝をつき
君子(木村多江)たちに向かって「すまなかった!」と、頭を下げる 
まつ(秋野暢子)「すみません」 照代(平岩紙)「ごめんなさい!」 
富江(川栄李奈)「申し訳ございませんでした!」 

タイトル、主題歌イン

常子「富江さん悪気はなかったんです、盗んだんじゃありません」 
顔を上げる宗吉たち 
常子「ただ制服を着てみたくて袖を通したら
破れてしまって言い出せなかっただけなんです」 
まつ「何で制服なんか着たかったんだい?」 
富江「それは…」 
常子「それは、富江さんも女学校に行ってみたかったからです」 
(一同)「えっ?」 
「本人驚いちゃってますけど」と、長谷川(浜野謙太)が富江を指さす 
常子「小学校を出て働き始めてからも、女学校へ行ってみたいという思いがずっと…」 
富江「そうじゃないの」 
常子「ちゃんと打ち明けた方がいいわ」 
富江「そうじゃないんだって!」 
富江が宗吉たちに向かって「別に、女学校に行きたい訳じゃないの
ただ…ちょっと着てみたかっただけ」 
まつ「着てみたかった…?」 
富江「そう、毎朝鞠子さんの制服姿見てかわいいなってずっと思ってて」 
「えっ…」と、少し照れ笑いの鞠子(相楽樹) 
富江も照れて笑顔になる「それでちょっと着てみたくなっちゃったの」 
居心地が悪いのか目が泳ぐ常子 
鞠子「とと姉のよくないところが出たね」 
美子(根岸姫奈)「出ちゃったね」 
君子「申し訳ありません、そそっかしくて」 
首を振る照代たち
常子「失礼しました…」 
照代「でも、何だか安心した
かわいい服を着てみたいって、女の子らしいところがあんたにもあって」 
富江「そりゃ私だって…」と、照れる 
まつ「富江が不平不満言わず家業手伝ってくれてた事に
私ら甘え過ぎていたのかもしれないねえ」 
照代「ええ」 
常子「あの…差し出がましいかもしれませんが
富江さんに特別に一日だけ、お休みを頂けないでしょうか」 
富江を見る常子「その日一日制服を着て、思う存分お出かけするの
いろいろな場所を巡って、やりたい事をとことんやってみる」 
富江「でも仕込みが…」 
鞠子「私が代わりに働きます、代わりになれる力はないけどやれるだけは」
笑顔になる富江 
まつ「私らに何の文句もないよ」 
照代「甘えさせてもらったら?」と、宗吉を見て「ねっ」 
宗吉「やりてえならやりゃあいいんだよ、お前に窮屈な思いをさせるほど
俺は落ちぶれちゃいねえんだバカ野郎!」と、立ち上がってどこかへ行く 
まつ「…ったく、素直に物が言えない豚だあ」 
(笑う一同) 

<そして迎えた日曜日> 

セーラー服の常子と、鞠子の制服を着た富江が森田屋から出てくる
浅草の方に行ってみようと思うの…と、常子
富江は制服姿がスースーして恥ずかしいと言う

富江のいない森田屋の厨房で、なんだか仕事のリズムが狂う宗吉 

浅草を楽しそうに歩く常子と富江

森田屋では、富江の事が心配なのか照代とまつも仕事の調子が出ない

路上の大道芸を観て拍手する富江

森田屋の居間でぐったりと休憩する、宗吉、照代、まつ
照代「富江が女学校行ったら毎日こんなふうなんですかねえ」
宗吉「はぁ?何言ってんだ?そのつもりはねえって富江もはっきり言ってた」
まつ「口ではそう言ってるけど本音はどうだかね」
宗吉「何だよ」
照代「遠慮して私たちには言えないのかもしれません」
富江の心に思いを巡らせる宗吉

「喫茶アンリ」前
富江「ねえ何だかこの店おかしいわ…見てこの値段、オームレット玉子焼が五十銭よ
玉子焼が松弁当と同じ値段なんて納得できないわ
あからさまに儲けようとしてるとしか思えない」
富江の肩をたたき常子「まあまあ、まあまあ、店の前で言う事でも…」
今度は窓から店内を覗き込む富江「接客もなってないわ」
店内でライスカレーの注文を受けるウエイトレス
富江「チャッチャと動きなさいよチャッチャと!お客さんの事なんか全然考えてない」
常子「言われてみたらそうかも…」
「失礼ですが…どういった御用でしょうか?」と、支配人風の男が後ろから声をかける
常子「え~と、あの…」
富江「あの…お店の接客の事なんですけど…」
常子「いやいや富江さん富江さん」
富江「でも…」
「すみませんでした、はいはいはいはい…」と、常子が富江を引っ張ってその場を離れる

路地裏の常子と富江
富江「はぁ…ごめんなさい」
常子「フフフフ大丈夫、ちょっと驚いただけ
ふだんおとなしい富江さんがあんなふうにワ~ッて」
笑う2人
常子「さあ、次どこ行こうか、博物館とかサーカスもいいかなって思ったんだけど
あ~でも一緒に銀座に行っても楽しいかもなあ、あっ、でも文房具屋も…」
常子の話が耳に入らず何かが気になっている様子の富江

森田屋の厨房
相変わらず調子の出ない宗吉
「ただいま帰りました!」と、富江の声
戻ってくるなり制服の袖をまくり、手を洗う富江
宗吉「早すぎんだろ、まだ昼にもなってねえじゃねえか…もっと楽しんでこいよ」
「ただいま帰りました!」と、入ってくる常子「あ~富江さん、やっと追いついた」
富江「あっ、ごめんなさい」
君子「常子、何があったの?」
常子「いや、富江さんが突然、ごめんなさいって言って走りだしちゃって」
富江「何だか楽しめなくて」
鞠子「どうして?」
富江「気になっちゃうの、ぬか床が」と、動き始める
「ずっと気になってしかたなかったの、一日一回はしっかり混ぜないと
味が落ちちゃうから、よいしょ」と、床下からぬか床を取り出す
宗吉「お前…ぬか床混ぜに戻ってきたのか?」
宗吉を見上げる富江「そうよ父ちゃん、私は根っからの森田屋の娘みたい」と、笑う
なんだか笑顔になる常子、照代とまつも笑っている
宗吉「バカ野郎!そんな格好でぬか床混ぜたら鞠子の制服が汚れちまうだろ!」
富江「あ…」
宗吉「仕事すんならさっさと着替えてこい!」
富江「はい」と、出て行く
宗吉「さあ、仕事だ仕事!」と、少しうるっとしたのを隠すように声を出す

廊下で富江を見送る常子と鞠子
常子「富江ちゃん、本当にここの仕事が好きなのね」
「本当ね…さあ勉強しますか」と、鞠子も行く
常子は先日の滝子の言葉を思い出す

<自分はいずれどんな職業に就くのだろう…常子は初めて将来を意識したのです>

夜、小橋一家の部屋
鞠子と美子は眠っている
布団の中の常子「かかは15歳の頃、何してましたか?」
ミシンの前に座る君子「何?女学校に行ってたわよ」
常子「かかも?」
君子「そう、おばあ様の方針でね
でも、私もあのころは家業を継ぐ事に何の疑問も持ってなくて
女学校を卒業したらお婿さんを取って継ぐもんだと思ってたの」
常子「そうだったんですか」
君子「うん…でも、その考えが変わったのは女学校で勉強したり
いろいろな経験をしたおかげかな
だからおばあ様の作戦は大失敗だったって訳」
笑う2人
君子「ミシン、借りに行ったのよね」
常子「はい」
君子「おばあ様どうだった?」
常子「ん?」
君子「元気だった?」
常子「はい」
君子「…そう」
常子「やっぱり親子」
君子「うん?」
常子「おばあ様もそんなふうにかかの事心配してました
君子は元気か?君子はどうしてる?…って
かかもおばあ様も2人とも癖で腰をトントンってやるんです…似てるなあって思って
だから…だから仲直りできませんか?」
君子「ごめんね、心配かけて…でも似てるからうまくいかないって事もあるのよ…
駄目ねえ、このミシン…本当に壊れちゃったみたい」
滝子と君子の間にできた溝の深さに何も言えず、母の背中を見ている常子

(つづく)

なるほどね、富江は女学校に行きたい訳じゃなくて
森田屋の仕事が本当にやりたい事なんだと知った常子が
初めて自分の将来を意識するという脚本なんだね
てっきり富江も女学校に行く展開になるんだと思ってたw

富江がアンリ前で宗吉の口癖「チャッチャと…」を使ったのは
滝子と君子の腰トントンとの対比でからめた演出なんだろうね
似た者親子ってことで

滝子との関係修復が難しい君子が「ミシン本当に壊れちゃった…」
これで壊れたミシンは、滝子と君子の壊れた親子関係のメタファーになった
このミシンを修理するエピソードで
親子関係も修復させる展開にするつもりなんだろうか?









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