2016年6月25日土曜日

とと姉ちゃん(72)青柳商店最後の日~次に生きる人の事を考えて…

布団から抜け机に向かいなにやら眺めている滝子(大地真央) 
部屋に入ってきた君子(木村多江)「お母様!どうされたんですか?」 
滝子「何だか昔の帳簿が気になってねえ」 
君子「お母様、お加減いかがですか?」 
「今日は調子がいい」と微笑む滝子

帰宅した常子が青柳商店の看板を見上げる 

タイトル、主題歌イン 

滝子の部屋に入る清(大野拓朗)と隈井(片岡鶴太郎)
清「お招きにあずかりまして」
滝子「ああ、座っておくれ」
部屋には3人分の膳に酒も用意されているようだ
挨拶して席についた隈井「どうしやす?早速一杯やりやすか?」
滝子「その前に…話を聞いておくれ
この青柳商店は、ここで看板を下ろそうと思う」
清「えっ?」
隈井「女将さん…」
滝子「店を畳んで軍に貸し出す」
清「えっ、ど…どうしてです?200年続いた看板を守るといつも…」
滝子「だからこそさ…このまま青柳を続けても
納得のいかない仕事をするのは…私には耐えられない
そんな事をするくらいなら潰した方がいいんだよ」
隈井「しかし…」
滝子「私は…あと1年ももたないだろう…
フフッ…最後くらい格好つけさせておくれよ
それに隈井だって、もう解放してあげないとね」
隈井「解放だなんてそんな…」
滝子(涙声)「感謝してるんだ…隈井には」
手拭でを涙ぬぐう隈井「ここを引き払って…どうなさるおつもりですか?」
滝子「木曽の得意先からいい療養地があるって聞いてね…
向こうに引っ込もうと思ってるよ」
うつむいて泣き声を上げる隈井
滝子「だからお前も気兼ねなくどこにでもお行き」
隈井「女将さん…」
滝子「清はまだ若いんだ…
これからは店や私に気兼ねせず好きに…」
清「私も木曽に行きます
青柳がなくなるのに深川に残っても致し方ありません
木曽で仕事を見つけて、ずっとお母さんのそばにいます
情けない話ですがね…
私はお母さんに褒められる事だけを考えて生きてきたんだ
今更生き方変えられませんよ」
隈井「だったらせめてあっしに木曽までお送りさせて下さい
あっしは…この青柳の…番頭です
最後まで…最後まで…務めさせて頂きます」
滝子「最後に…一芝居つきあってくれないか?」
隈井「芝居?」
うなずく滝子

居間、小橋一家と青柳商店の3人
滝子「集まってもらって悪かったね
実はこの店を閉める事になってねえ」
君子を見る常子
君子「まさか陸軍の借り上げの話を…」
滝子「ああ、受けようと思ってる
お国が大変な時だ
小さな木材問屋の行く末など誰にも保証できない
だったら軍に貸していくらかのお金をもらった方が賢明だと思ってね」
常子「おばあ様が決めた事であれば私たちは何も」
滝子「目黒にいい借家があってね…隈井が手配してくれたんだ」
隈井「そこなら常子さんと鞠子さんの職場からも近いですし
よろしいと思いまして」
君子「お気遣いありがとうございます」
隈井「いえ」
君子「でも…お母様たちは…?」
滝子「あ…私は木曽の療養地でのんびり過ごそうと思ってるよ
清も来てくれるっていうしねぇ」
清「お母さんの事は任せて下さい」
君子がうなずく
美子(杉咲花)「嫌です…離れ離れなんて嫌です
私も一緒に木曽に行きます」
常子「よっちゃん」
美子「とと姉ちゃんもまり姉もかかもみんなで木曽に行けばいいじゃない!」
常子、君子、隈井「…」
滝子「勘違いしないでおくれ
私はこの青柳をやめる訳じゃない
ほんの一時、軍に貸すだけさ
戦争が終わって落ち着いたらまたここに戻ってきて
またこの青柳をやる
そうしたらまた一緒に暮らせるんだ」
美子「本当ですか?絶対にまた戻ってきてくれますか?」
滝子「ああぁ、祭りに行くって約束しただろぉ?」
滝子の真意と余命を悟っているような常子の表情
「はい」とうなずく美子
滝子「フフフフ…はぁ…」

<ひとつき後、青柳商店は最後の日を迎えました>

がらんとした帳場のかまちに腰を下ろしている滝子
君子「お母様…そろそろ…」
「あいよ」と立ち上がる滝子に君子が手を貸す
「いいんですか?少し見ていかなくても」と言う君子に滝子
「生まれた時から毎日見てきたんだ、もう見飽きたよ」
と、君子に振り向き「結局…守りきってやれなかったねぇ
偉そうに君子を守るって言っておきながらこんな事になっちまって…」
「いいえ…お母様にはずうっと守って頂いてました…
私はこの家に生まれて幸せだと思っています」と泣く君子を
滝子が抱きとめる

表で見送る一同
美子「おばあちゃま、これを見て下さい…浴衣です
でもまだ仕上げてません、今度お会いする時までに仕上げます
だから必ず帰ってきて下さい」
滝子「ありがとう…」
と、常子を見て「常子」
常子「はい」
滝子「木材ってのは、今植えたものじゃない
40年50年前に植えたものが育って商品になる
だから植えた時は自分の利益にならないのさ
それでも40年後に生きる人の事を思って植えるんだ
次に生きる人の事を考えて暮らしておくれ」
常子「はい」
鞠子と美子も「はい」と、うなずく
「さようなら」と、明るくおどけたような清
「ごめんくださいまし」と、隈井が頭を下げる
そして常子たちを見て少し微笑んだ滝子が車(人力)に乗り込む

<これが滝子の姿を見た最後になりました>

見送る常子
車が先の角を曲がる

<3か月後、深川の木材問屋は全て廃業しました>

東京 目黒

小橋家の表札

荷物が運び込まれた部屋を歩く常子
「ほうほうほう、これが新しい住まいですかい」
君子「浜松の家に少し似てるわぁ」
鞠子(相楽樹)「また4人に戻ったのね」
常子「改めましてどうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ」と、頭を下げ合う4人

<小橋一家が4度目の引っ越しを終えた頃
海軍はミッドウェー海戦に敗北
日本は苦戦を強いられ始め更なる苦難の時代へ突入していくのです>

欄間に竹蔵の家訓を掛ける常子「よし…」

机に3つの目標を立てかけ、それを見つめる常子

(つづく)

冒頭の常子の帰宅シーン
小鳥のさえずりが聞こえているから早朝だと思うのだが
締め切りに追われる出版社の仕事は不規則って描写なんだろうか?
それともこのシーンは夕刻よりも早朝の方がいいという
演出的な判断だろうか?

店を閉める決断をした滝子に清「看板を守るといつも…」
これに滝子が「だからこそさ…」と言ったのはやはり
滝子の中にある商売の理念を守るためには
そうするしかないという事なのだろう
逆説的だが、店を閉める事が看板を守るという事か…

跡取りのための養子なのに店を閉めても
病気の滝子に最後までついていき木曽で仕事を探すって…
清かっこよすぎるだろ

滝子の「一芝居」は美子がああ言い出すのが判っていたからなんだろうね

滝子が君子を抱きとめるシーンの右手の動きは
宝塚の男役みたいでかっこよかった
さすがですw

0 件のコメント:

コメントを投稿