2016年6月29日水曜日

とと姉ちゃん(75)五反田が出征して一人になる常子~防空演習では三宅に反抗するが…

常子(高畑充希)に社判を手渡す五反田(及川光博)
「社長が出征した時、預かったんだ…
五反田にも赤紙が来たらその時は小橋君に渡せ…と言われている…
僕らのような年寄りまで駆り出されるようでは戦争も長続きすまい 
きっとじきに終わるさ…それまで君が持っていてくれないか?」 
常子「分かりました…」 
五反田「…それから君一人になっても
この甲東出版って会社は存続できるようにしておいたから」 
常子「えっ?」 
五反田「うちにたくさんある蔵書を貸与する場所としてここを使う 
名目としてはその管理業務をしているとすれば
経営もなんとか継続できるだろう 
固定給はないが貸した分だけ君の取り分になる 
毎日出勤する必要もないしいい話だろ?」
常子「どうしてそんな…」
五反田「うちの会社がなくなれば君は無職だ
そしたら勤労動員になってどこか遠くへ駆り出されるかもしれない
その時…家族は誰が支えるんだ?」
「そんな事まで…」涙ぐんで頭を下げる常子「ありがとうございます」
「おいおい…泣きたいなら僕の胸を貸そうか?」
と、おどけて手を広げる五反田
笑い出す常子「結構です、フフッ」
五反田「ハハハ…君にもう一つお願いがあるんだ…
戦争が終わったあとはどんな雑誌にするか考えておいてくれないか」
常子「えっ?」
五反田「甲東出版はこれで終わりじゃない…休刊だ
僕も社長も…必ず…生きて戻ってくる
その時は僕たちが心から作りたい雑誌を作ろうじゃないか」
真っすぐにうなずく常子「はい」

<数日後、五反田は出征していきました>

昭和二十年一月

貸本と書かれた立て看板を出す常子

<常子は甲東出版を貸し本屋として切り盛りしながら
なんとか生活していました
しかし戦争は確実に小橋家の暮らしを侵食し始めていたのです
僅かに配給される食糧はサツマイモばかり
燃料も乏しく冷え込む冬の夜を4人で寄り添い寒さをしのぎます
ようやく眠りについたかと思えば…
繰り返し鳴り響く空襲警報におびえ一家の疲弊は増幅されるのです
それでも常子は…>

家庭菜園をいじる常子
美子(杉咲花)が「そろそろ収穫できそう?」と後ろから声をかけると
「まだまだじゃのう」と、目に何かをはさんだ常子が振り向く
美子「フフッ!おはじきばばあ!」

<笑いを忘れないように心がけていました>

花を生けている君子(木村多江)

<君子と鞠子も日々の暮らしの中で
心を豊かに保つ事を忘れてはいませんでした>

何かをすりこぎですりながらも読書している鞠子(相楽樹)

<そして美子は…>

はぎれで作った花びらのような飾りをもんぺの腰に当ててみる美子
常子「なかなかいいわね」
君子「とってもすてき」
美子「ありがとうございます」
常子「…ささやかな心がけが小さな幸せを生む…」
美子「え?」
常子「昔ね、東堂先生がおっしゃってたの…
確かにそのとおりだなあ~と思ってね」
鞠子と美子がうなずく
君子「こんな世の中だけどせめてうちの中だけでも
穏やかな心持ちで暮らせるように心がけましょう」

<防空演習は全員参加を義務づけられており
老若男女を問わず集められ訓練が行われました>

バケツリレーをする一同(女性ばかりのようだ)
常子「はい」と、バケツを渡す
鞠子「さすがとと姉うまいわね」
常子「一応経験者ですから、はい」
君子「もう10年以上前よね」
常子「うん…はい」
君子「すっかり立派になっちゃって」
常子「いろいろありましたから(笑)」
と、「何をしておる!」と声が響く
勘違いして「すみません」と謝る常子
見ると一人の女性が倒れ込んでいる
組長の三宅がやって来る「貴様!何をタラタラと!早く起き上がれ!」
女性を介抱するせつ「すみません、母はこのところ具合がよくなくて」
三宅「だから何だ!アメリカの攻撃は待ってくれないんだ
たった一人が足を引っ張る事でこの組全員が危険にさらされるんだ
分かってるのか!」
せつ「すいません!」
三宅「分かっているのなら早く立って演習に参加しろ!」
女性「はい…」
常子「ちょっと待って下さい」
常子を睨む三宅「何だと?」
常子が前に出る「演習が大切なのはよく分かります
ですがこれで具合を悪くしてこのあと動けなくなって
肝心な時に助からなかったら元も子もありません」
三宅「組長に意見するとは何事だ!
俺はお国の訓令により組長を仰せつかったんだぞ
それに盾つくという事はお国に盾つくという事か!」
常子「そうではありません、でも…」
三宅「よ~し分かった!いいだろう
ただし防空演習を休むなら非国民と見なし
お前らの家の配給を1人分減らす!」
せつ「えっ?」
常子「いくら何でもそれは…」
三宅「貴様も同罪だ!唆した者として配給はなしとする」
驚いた美子と鞠子が顔を見合わせる
三宅「国民ではないやつに食わせるものなどない!」
君子も茫然としている
三宅「どうした!俺の決定に文句があるやつは言ってくれていいんだぞ~!」
「それは…それは勘弁して下さい…やらせて下さい」
せつの母が三宅の足にすがりつく「お願いします」
三宅「分かった、今回だけは大目に見てやる
分かったら早く持ち場につけ」
不満気に立ちつくす常子に寄り添う美子「とと姉ちゃん行こう…」
と、三宅が「何だこれは」と美子の腰のあたりを指さす
「こんなものをつけて浮かれやがって」
驚く美子「浮かれてなんか…」
「口答えをするな!」と三宅が美子の腰から飾りを引きちぎる
「兵隊さんたちが命を張って戦っているのに
こんな事をして不謹慎だと思わんのか!
何を考えているんだ貴様らは!」
君子の方に向かう三宅「家では花まで飾ってるらしいな…
いいか!母親であるお前が目を光らせていないからだぞ!
進め一億火の玉だ!みんなが戦っている事を忘れるな!」
と、飾りを君子に返す
頭を下げる君子「分かりました」
三宅「いいか!戦況が厳しくなっている中
日本が一丸となるために一層協力し合っていかなければばならない
お互いが声をかけ合い変化がないかいつも気にするように!
分かったな?分かったら返事!」
(一同)「はい!」
釈然としない顔の常子

小橋家
飾りを手に美子「かか、怒られる事してごめんなさい」
君子「美子は悪くないわ…ただ…外でつけるのは控えましょうか」
美子「はい」
「…やっぱり私納得できない…ひと言いってくる」
と、立ち上がろうとする常子の腕を掴む鞠子「やめなさいよ」
常子「だって…」
鞠子「口答えすると配給を…」
常子「それがおかしいじゃない、均等に分けるべきよ」
鞠子「組長はどこもそんなふうらしいわよ
自分の家だけ多くする人だっているらしいんだから
それに比べたらあの人は愛国心の塊ってだけで…」
常子「だからってあの人の独断で決められるのは…」
鞠子「とと姉はいつもまっすぐすぎるのよ!
わざわざもめる事もないでしょう!
やり過ごす事で丸く収まるならその方がいい時だってあるわ」
常子「だったらあのまま見過ごせばよかったっていうの?」
鞠子「もう少しうまいやり方もあったんじゃない?」
常子「鞠ちゃんは気が弱すぎるのよ」
鞠子「えっ?そんな事ないわよ、私だって言う時は言うわ」
常子「どうかしら…臆病なだけなんじゃない?」
鞠子「何よその言い方!」
君子「やめなさい2人とも!
私たちがけんかしてどうするの
うちでは穏やかに…ねっ?」
常子「すみません」
鞠子「すみません」

と、稲子が訪ねてくる「今日は大変だったわね」
君子「いえ…」
家の鶏が生んだからと卵を1個差し出す稲子
君子「ありがとうございます」
稲子「いろいろ大変だと思うけど恨まないであげてね組長さんの事
出征してる息子さんからずっと届いてた手紙が途絶えたらしいの…
心中察するとねえ…」
君子「そうだったんですか」
稲子「同じ組なんだもの仲よくやりましょうよ、ねっ」

稲子が帰り君子「真中さんから卵頂いたの」と部屋に戻る
美子「お隣さんがいい人でよかった」
君子「うん」
鞠子「そうかな…」
常子「ん?」
鞠子「監視に来たのかもしれない」
常子「監視?」
鞠子「組長さん言ってたじゃない?うちの中に花が生けてあるって…
どうして知ってたの?」
考え込むような常子
鞠子「もう…誰を信じていいのか分からない」
君子「みんな…同じように感じているのかもしれないわね
隣同士で疑い合って…」
常子「…そう思うと…怖いですね」
美子「は~あ…昔はよかったな」

<常子は深川での日々に思いをはせました
森田屋の皆はどうなったかなぁ
綾は?清は?隈井は?…星野は?
過ぎ去った日々を懐かしく思い返してしまうほど
常子たちは追い詰められていました>

受け入れ難い現実に押しつぶされそうな顔の常子

(つづく)

今回も五反田はかっこよかった
自分が出征した後の常子の暮らし向きの事まで手配してくれるなんて…
あれは常子も泣いちゃうよね
でもそこで抱きしめようとして
常子の肩に触るソフトなセクハラで自分を一旦落すのも
五反田流の照れ隠しなのだろうか?
常子も笑いながらしっかり断ってたw
この2人には セクハラ→断る の流れが
挨拶代わりのコミュニケーションだったのかもしれないね

三宅が新しい憎まれ役だが最後にはいい人に化けるのだろうか?
鞠子によれば「愛国心の塊ってだけ」とのことだが…
息子の事で平常心を失っているのかもしれない

常子と鞠子の言い争いは途中から論点がずれて
ただのケンカになっちゃったんでさすがに君子が止めたみたいだ
前回、鞠子が弱味を見せたからって常子も「臆病なだけ」とか言わんでもw

監視の件は真実はどちらでもいいのだろう
君子が言っているように見張り合うような社会では
皆が疑心暗鬼になってしまうところが怖ろしいという事かな

常子の防空頭巾姿が微妙だ
似合っていないのか似合い過ぎているのかわからない



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