2016年8月23日火曜日

とと姉ちゃん(122)お互いを昔のままだと確認する常子と星野

夜、星野(坂口健太郎)が帰宅すると玄関に女ものの靴がある 
居間から常子(高畑充希)が顔をのぞかせる「常子です、お邪魔してます」 
星野「常子さん?」 
居間に入る星野「大樹!えっ、一体…?」 
大樹は布団に寝かされ青葉は常子の膝で眠っている 
常子「風邪をひいていたようで熱があったんです」 
星野「えっ…」 
常子「でももうだいぶ下がりました」 
星野「そうですか…」 
常子「あ…勝手に上がってしまってすみません
先ほどのお礼に伺ったら具合が悪そうでしたのでつい…」 
星野「こちらこそご迷惑をおかけしてしまってすみませんでした」 
常子の膝の上で青葉が寝返りをうつ 
常子「フフフ…(青葉の髪をなで)もう少しだけこのままでもいいですか?」 
星野「僕はもちろん…」 
仲睦まじい家族のような4人 

タイトル、主題歌イン 

青葉も床につき部屋の明かりを消した常子が隣の間に移る
お茶の準備をする星野「ありがとうございました
常子さんが来てくれなかったらどうなっていた事か…」
常子「お一人だと大変ですよね」
星野「そうですね…あっ、どうぞ」
常子「失礼します」(と席につく)
茶をいれる星野「家政婦のなみさんが来てくれるのは午後からなので
朝食の準備も一苦労です
それに青葉にはお弁当を持たせないといけなくて」
常子「お弁当も作るんですか?」
星野「ええ、毎朝仕事へ行く前に」
(星野が湯飲みを置く)
常子「ありがとうございます」
星野「それから大樹を送り出し青葉を幼稚園に連れていって
会社に着くのはいつも始業時間ギリギリです」
常子「すっかりお父さんですね」
星野「もう必死ですよ」
常子「頂きます」(と茶を飲む)
星野「どうぞ」
常子「…星野さんがお付けになったんですか?」
星野「え?」
常子「名前です、大樹君は大きな樹…だし青葉ちゃんは青い葉…
植物好きだった星野さんらしいなって」
星野「大樹は…はい
すくすくと育ちいつか誰かを支えられる人間になってほしいと思って付けました
でも…青葉の名前は妻が」
常子「奥様が?」
星野「ええ…妻も植物が好きな人だったんです
出会って意気投合したのもその話題で盛り上がったからでして
(仏壇の写真に目をやり)加奈子は菜の花のように
周りを明るくするような人でした」
(常子も振り返り写真を見ていたが星野に向かい)「すてきな方だったんですね」
照れたようにうなずく星野
「いや…出版社を作るなんてすごいですよね
昔からこれと決めたら常子さんほど強い人はいません」
常子「いえ、私なんて怒られてばかりです」
星野「社長なのに?」
常子「はい、編集長が敏腕なんですけど厳しい方で」
星野「大変だ」
常子「もう本当に…」
星野「僕はただの会社員ですから気楽なもんです
終業時間も早いですし」
常子「でもその方がお子さんたちにとってはいいですよね」
星野「ええそうなんです、ただ来週からのふたつきが繁忙期なもので
木曜の全体会議だけは抜けられないと思うので頭が痛いです」
常子「でしたら夜はお子さんたちだけで?」
星野「ええ、かわいそうだとは思うんですがそうするしか…」
常子「あの…ご迷惑でなければ
星野さんがお帰りになられるまで私が顔出しましょうか?」
星野「えっ?あっ、いやいやそんな…申し訳ないですよ
今日の事だけでもご迷惑をおかけしたのに」
常子「でも木曜だけですよね?ふたつきだけでしたらなんとか」
星野「いや、でも…」
常子「星野さん…今は一番にお子さんたちの事を考えましょう」
星野「…」

玄関
常子「え~それでは来週の木曜日ですから…10日」
星野「はい」
常子「仕事が終わり次第すぐに駆けつけます」
星野「よろしくお願いします」
常子「はい…では(と、靴箱の上の花差しに目を留め)かわいらしいですね」
星野「ああ…桔梗です、漢字だと木偏に『吉』『更に』となり縁起がいいと
戦国武将も好んで家紋に使ったんです
あ~桔梗の根は古くからせき止めなどに使われていまして
うちの会社で扱っている薬も桔梗の根の成分を…」
植物の話をする星野を見て常子が嬉しそうに笑いだす「フフフ…」
星野「えっ?」
常子「星野さんお変わりありませんね
植物の話になると真剣な顔になってバ~ッて」
星野「恥ずかしいな」
常子「そんな事ないです
昔の星野さんのままで私はうれしかったです」
星野「僕もです…常子さんが昔のままで」
星野を見てうなずく常子
星野「本当にお世話になりました」
常子「いえ…では失礼します」
星野「おやすみなさい」
常子「おやすみなさい」

花差しの桔梗の花

小橋家の壁時計は9時6分前
美子(杉咲花)「15年ぶりだと話が尽きませんよね」
老眼鏡をして縫い物をする君子(木村多江)「えっ?」
美子「とと姉ちゃんです(と糸を通した針を渡す)
菓子折を持っていっただけなのにもうこんな時間
星野さんとのおしゃべりに花が咲いてるのかなあって」(ちゃぶ台で書き物をする)
君子「そうかもしれないわね」
美子「あっ、そういえばまり姉ちゃんが
とと姉ちゃんが昔、星野さんと交際してたんじゃないかって言ったんです」
君子「鞠子が?」
美子「はい、私もとと姉ちゃんはお慕いしていたと思いますが交際まではなぁ…
あっ、でもせっかく再会できたんだから
今からでも2人がうまくいけばいいなって思うんです」
と、「ただいま帰りました」と常子が戻る
迎えにいった美子が常子の手を引っ張ってちゃぶ台の前に連れてくる
美子「どうだった?」
常子「どうってまあ…お子さんとかお仕事の話をして…
でもやっぱり男手一つでお子さんを2人育てるのは大変みたいです
…そうだ、玄関に桔梗が飾ってあってね」
美子「うん?」
常子「星野さん昔と同じように植物がお好きみたいで
ちっとも変わってなかったわ、カバン置いてきます」(と立ち上がり部屋を出る)
美子「変わってなかったんだ…」
何か思うようなところがあるような表情の君子

自室で机に向かい手帳を開き予定を確認している常子

大樹を看病している星野

一週間後(トースター試験60日目)

<試験する事2か月、この日トースターの商品試験は最終日を迎えました>

トースターからチンッと音をたててトーストが上がってくる
扇田「終わった…」
微笑む常子「皆さん、1年分1,460枚、全て焼き終わりました!」
拍手する一同「お疲れさまでした」
寿美子(趣里)「では試験表を集めます!」
(一同)「はい!」
「ご苦労さま!」
常子「ご苦労さまでした」
トースターのメーカー別に並べられたトースト

書類を机に置く寿美子「試験結果はそろいました」
島倉「1年分焼いてみて問題なしのトースターはなし
こんな結果になるとはなあ…」
寿美子「チューブ電器とかちとせ製作所みたいな
危険性のあるものについても正しく伝えないと」
花山(唐沢寿明)がうなずく
常子「本木さんは最後の結果を写真に収めて下さい…
花山さんは早速原稿をお願いします」
「分かった」と花山が編集長室に向かう
常子「では皆さん、最後までよろしくお願いします!」
(一同)「はい!」

夕刻、「失礼します」と編集長室から緑(悠木千帆)が出てくる
「本当、大丈夫かしら?」
一同が緑を見る
扇田「ん?」
緑「花山さん、原稿まだ白紙だったから」
扇田「1行も書いてないんですか?」
緑「ええ」
(一同)「…」
と、部屋から出てきた花山が蛇口の水を瓶に満たし部屋へと戻る
松永「まさか遊んでたりして…」
扇田が(何を言うんだ)という感じで松永に物を投げるしぐさ
美子「そりゃ簡単には書けませんよ
この試験結果じゃどのトースターも酷評する事になると思います
花山さんは毎号毎号1行1行全身全霊をかけて雑誌を作ってるじゃないですか
それと同じようにメーカーの方が思いを込めて作った製品を
批判しなくてはいけないのは相当な覚悟が必要ですよ」
美子の話にうなずき目を伏せる常子

瓶に万年筆の先が入れられる
水の中にインクがにじみ出てそのまま夜になる

洗い場で万年筆を洗う花山

<その日、花山がペンをとったのは夜も更けた頃でした>

編集長室で執筆する花山

灯の消えた編集室、薄明りで書類を確認している常子

執筆を続ける花山

編集長室を見つめる常子

<常子は花山に寄り添うように遅くまで残っておりました>

(つづく)

亡くなった妻加奈子の話題で「すてきな方だったんですね」と言う常子に
星野が急に「いや、出版社を作るなんて…」と常子の話にかえてしまったのは
照れくさかったからなのだろうか?
それとも常子さんこそ素敵だ…と言いたかったのだろうか?

やっと星野が植物うんちく話をしてくれた!
常子も嬉しそうだったね
植物の話をしないのは星野が変わってしまったからでは…
と疑っていたのだが一安心だ

桔梗の花言葉は「変わらぬ愛」「気品」「誠実」「従順」で
菜の花は「快活」「競争」「小さな幸せ」「豊かな財力」とのこと

美子から星野の話を聞かされた君子は微妙な表情だったけれど
何かが心配なのだろうか?
昔の経緯を思い出しただけなのか
それとも後妻に入る難しさを考えたりしているのかよく分からない

美子はさすが信奉者だけあって花山の苦しみを理解しているんだね
だがラストで花山に寄り添っていたのは常子だった
今回の大部分は常子と星野が15年の時間を埋め
お互いが昔のままな事を確認できたようなお話の印象だったが
なぜこんなラストなのだろう?
この先、もしかしたら常子は花山をはじめとする社員一同と共有する理念と
星野とを天秤にかけなければならない事態に追い込まれるという事なのだろうか?
15年前は家族を守るために星野を諦めた常子だが
今回もまた、理念(あなたの暮し)を守るために星野を失うのだろうか?
それも物語としては美しいかもしれないが普通にハッピーエンドが見たいかな…



0 件のコメント:

コメントを投稿