2016年9月22日木曜日

とと姉ちゃん(148)君子の教えを記事にする常子~さらに8年が過ぎ…

昭和四十年一月 

玄関から出てきた真由美が背伸びをして門柱の牛乳箱から牛乳を2本取り出し
郵便受けに差さっている新聞も抱えて家に戻ると潤が玄関を拭き掃除している
 
君子の部屋 
目を閉じ手を合わせている常子(高畑充希) 
その前には位牌と骨壺、花や果物が供えられた祭壇がある 

<君子は73年の生涯を閉じました> 

タイトル、主題歌イン 

常子の「では頂きます」でいつものように一族の朝食が始まる
しかし箸を持たずぼんやりとしている常子を見て水田(伊藤淳史)が目を伏せる
美子(杉咲花)「真由美お口拭いて、ベタベタよ」
真由美が「うん」と手拭いを取り出し口をゴシゴシと拭く
それを見て微笑んだ常子がみそ汁の中の飾り切りされたニンジンを箸でつまみ
「見た目も楽しい方がいいと思って」とニンジンを切っていた君子を思い出す
ニンジンを口に入れ汁を飲む常子
「うんと…両端を合わせて…こっちとこっちを合わせて…」と
真由美が君子に教えてもらった通りに手拭いを畳んでいる
それを見てまたも君子を思い出す常子
(君子)「小さな幸せっていうのかしら…その積み重ねで今の幸せがあるのね」

あなたの暮し出版
編集長室にはクレヨンの試験資料が貼られたボードが立ち並んでいる
それをどけて花山の前に立つ常子
コーヒーを淹れていた花山(唐沢寿明)がカップを手に席に座る
常子「葬儀ではお世話になりました(と頭を下げ)ありがとうございました」
花山「うん…さみしくなるね」
常子「ええ…花山さん先日私に何か書いてみないかとおっしゃいましたよね」
花山「ああ」
常子「見つかったんです…書いてみたい事…
母と過ごした時間の中で何気ない日常の愛おしさに改めて気付かされました
それを心に留めておくためにも
ごく普通の暮らしについてつづってはどうかと思ったんです
誰の周りにも起きていて、でも誰も取り立てて話さないような事の
一つ一つに心を向けて言葉にする
決して押しつけがましくならないようにそっとお知らせするような雰囲気で」
花山「お知らせか…」
常子「私は母から教わった事を自分の子どもに伝える事はできません
ですが記事にすれば多くの読者に伝えられます
母が私たちにしてくれたように人生に僅かでも
彩りや安らぎを添えられるような言葉や知恵を読者に伝えたいんです」
少し考え込んだような花山がカップを置き常子を見上げる「常子さん」
常子「はい」
花山「何をしている、すぐに行きなさい」
常子「えっ?」
花山「すぐに1行目を書き始めなさい
何より私がすぐに読みたいんだ!」
嬉しくて笑顔になる常子「はい!失礼します」
ボードを避けて部屋を出る常子を見て楽しそうに笑いコーヒーを飲む花山

編集部で席に着いた常子がペンをとり早速書き始める

<この常子の企画は『小さなしあわせ』と題されたエッセーとなり
読者の支持を集めていきました
君子が亡くなって8年が過ぎた頃には単行本として発売されていました>

昭和四十八年

<昭和48年
東洋の奇跡といわれる未曾有の高度経済成長を成し遂げた日本は
世界第2位の経済大国になりました
このころになるとあなたの暮し出版で働く女性の割合は7割を超え
男性と同様に女性が活躍できる職場になっていました>

多くの女性スタッフがスチームアイロンの試験をしていて
中には妊娠してお腹の目立つ社員もいる
寿美子(趣里)「常子さん」
振り向く常子「はい」
資料を見ながら寿美子「スチームアイロンの試験の…」
常子「寿美子さんお子さん熱出したんじゃ…」
寿美子「近所の方に見て頂ける事になりました
ご迷惑をおかけしてすみません」
常子「迷惑だなんてことないわ」
寿美子「でも…少し早く上がらせて頂きたいのですが…」
(男性スタッフ)成田「私交代しますよ」
寿美子「すみません」
成田「いいんですよ」
常子「ありがとうございます成田さん」
成田「あ~いえいえ」
寿美子はまだ何か話がありそうだが常子は別のスタッフに呼ばれる

編集部で談笑する若い社員たち「すごい!」「でしょ?だから買ったのよ」
「似合わないわね~」「似合うわよ、かけてみる?」「いいわよ」
横に立っている常子に気付き「あっ、すみません」
常子「ああいいのよ、休憩中でしょ
それより何?盛り上がってるわね」
「あ~実はこの雑誌で紹介されているサングラスを買ったんです」
手渡された雑誌を見て常子「あ~これ最近創刊された…」
「そうですそうです、取り上げられているお洋服や小物が
どれもおしゃれなんですよ」(とサングラスをかけて微笑んでみせる)
(一同のキャピキャピした笑い)
白髪交じりの常子「へえ~ここに載ってるの?」

<1970年を過ぎた頃から既製品の洋服を取り上げる女性誌が
次々と創刊され若い女性の間で人気を博しておりました>

常子の後ろから雑誌をのぞき込む緑(悠木千帆)
「婦人雑誌の様相も随分変わりましたね」
常子「そうですね」
緑「服なんて既製品の紹介ばかり
小物だってどこどこの何々がおしゃれだから買いましょうって…
自分で作る事を基本にしたうちとはまるで趣が違いますよ」
常子「豊かな暮らしの表れなんですかね」
緑「物がなくてもったいない精神が染みついた
我々の世代からは考えられませんね」
「…ですね」とサングラスをはずす女性社員(他の若手社員たちが笑う)
常子「フフフ…いいのよ別に…今日一日かけといたら?」

<花山は5年前に心筋梗塞で倒れ
職場にベッドを持ち込んで休みながら仕事を続けておりました>

編集長室のベッドの上で件の雑誌を見ている花山「若い子たちがねえ…」
スチームアイロンの試験資料のボードを設置している常子
「ええ、みんな目を輝かせて読んでいました」
花山「時代が変わってきている証拠じゃないか」
常子「私もそう思います、でも感覚の違いもすごく感じてしまって」
花山「仕方ないさ、今の若い世代はあの戦争を知らないのだから」
コンセントから延長コードを伸ばしていた水田
「新しく入ってきた社員たちは戦後に生まれた子ですからね
感覚に違いが生じるのは当然ですよ」(と部屋を出る)
常子「戦後生まれか…私たちも年をとる訳だ」
花山「ハハ」
常子「フフフ」
寿美子「失礼します、トーチクのスチームアイロンをお持ちしました」
アイロン台を手に戻ってきた水田
「寿美子さんは戦後生まれじゃないよね?」
寿美子「若くなくてすみません」(と台にアイロンを置き試験の準備をする)
水田「いやいや違う違う、君は最近のどんどん服や物を買う風潮を
どう思ってる?」
寿美子「私は…便利だとは感じています
働きながらですと服や小物を作る時間がとれないですから…」
水田「そうだよな…」
寿美子「それと子どものためにも…」
常子「子どものため?」
寿美子「ええ、働く女性が増えてきたといっても
まだまだ世間の目は厳しくて…うちの子
『貧乏だから母ちゃんも働いているんだろう』ってからかわれているんです
近所の人にも『旦那の収入が低いから共働きしてる』ってうわさされて…
私はお金のためだけではなく
この仕事にやりがいを感じて働いているんです」
花山「女性が働く理由を貧しいからとしか思えんのだね
そもそも働く理由が金だとしても揶揄されるいわれはないさ」
水田「そういう訳ですか…」
寿美子を気の毒そうに見つめる常子

お昼の弁当を食べている年配女性社員たち
康恵(佐藤仁美)「そんなの寿美子さんだけじゃないよ
私だって子どもほったらかしてパートタイマーで小銭稼いでるって
こそこそ言われてさ」
綾(阿部純子)「私も…働いている上に片親じゃない?
息子にろくにごはんも食べさせてないってうわさされた事もあったわ」
常子「いくら時代が移り変わっても
働く女性に対する偏見はいまだに強いままなんですね」

<常子は自分に何ができるのかを考え始めました>

本木がビルの前で本を販売している

<昼過ぎ、一人のお客さんが訪ねてきました>

本木がその若い女性を見つめている
女性が1階の試験室に入りスチ-ムアイロンの試験をしている様子を見る
と、水田に肩をたたかれビクッとする女性
水田「たまき」
女性・たまき(吉本実優)「何だお父さんか」
水田「何だって言い方はないだろう、大学は?」
たまき「授業は午前中だけだったの」
常子「あら」 美子「どうしたの?」
と2人がやってくる
たまき「常子おばさんに用があって、忘れ物
(と紙袋を手渡し)お母さんからです」
袋の中をのぞく常子「あ…わざわざありがとう
これ午後の打ち合わせに必要だったのよ」
たまき「お役に立てて光栄です」
試験室を眺めるたまき「今日もいろいろと試験してるんですね」
常子「ええ、スチームアイロンの試験がそろそろ佳境でね
すると「おいおいおいおい…」「よし間違いない」と興奮した声が聞こえる
「ちょっと失礼」と常子が向かう
「えらい事になったな」「常子さん!」「花山さんに報告しましょう!」
「よし!」「行きましょう行きましょう」
常子「とりあえず行きましょう」
その一団は資料を手に慌てて花山の元へと向かっていく
それを見て「どうしたんだろう…」と目を丸くしたたまきが後を追う

(つづく)

また時間が飛んだ
昭和48年だと常子は53歳くらい
今まで老けメイクで役年齢に見えていたがさすがに53は無理みたいw

寿美子が子どもがいるのに仕事を続けていて少し意外だった
自分もこの時代に子どもだったが母親は家にいるのが普通だった
昼間に買い物などは済ませて子どもが学校から帰る時間には
母親は当たり前に家にいた
だから家の鍵など持たなかった
母親が働いていて鍵を持っている子どもを
今では死語だろうが「鍵っ子」と呼ぶ言葉があったくらいだ

このドラマで専業主婦になったのは結局鞠子だけだろうか?
なぜ鞠子だけが仕事を辞める設定になったのだろう?
たまきは小さい頃から常子に似ているという描写があった
今回、常子たちの仕事にたまきが興味を持ったようだが
たまきが常子の後継者になるのだとしたらそれが理由なのだろうか
なぜなら鞠子が仕事を続けていたとすれば
夫の水田は経理の責任者で娘のたまきが後を継いで…となれば
鞠子の色が強すぎてまるで鞠子が中心の会社みたいになってしまう
それではヒロインの常子(高畑)の立つ瀬がないので
モデルの史実も鞠子が女性の自立を宣言した
らいてうに傾倒していた事も無視して強引に
専業主婦にしてしまったのかなあ…とちょっと思った

0 件のコメント:

コメントを投稿