「おつ~!」
「カツーン!」
 ビールグラスの音が響きます。
 本日もカレンさんちの小さなバル開店です。
「のぞみくん。今日は、ひとりでどこ行ってたのさ。休日でも何かと雑用で忙しい、わたしを置いて」
「はい。カレンさんが忙しそうなので、ここに行って来ました。」


「お、中華街じゃん」
「はい。まあ、電車で20分のところにあるので、なんだか観光地て感じがしませんね」
「それってなんか自慢してるぽーい言い方よね。ムカツクひといるんじゃない?」
「え?そうですか?すみません」


「やっぱひと多いわよね~。ピンク顔もたくさんいるわー」
「はい。プライベート。じゃなくプライバシーに配慮してますので」


「で『関帝廟』ね」
「はい。三国志の関羽を祀ってある関帝廟の近くにあるのが…」


「『隆泰商行』さんです
「ふうん。中華料理の食材店ね。なんか外まで品物が並んじゃってるじゃん」
「はい。中もそうですよ」


「ホントだ~」
「ここは品揃えが良いので、よく利用させてもらっています」
で、のぞみくんは何を買いに行ったの?」
「はい。これです」


「おー!干し貝柱?ホタテ?」
「はい。その中から…」


「これを買いました」


「この砕けちゃってるヤツ?」
「そうです。形が悪いので安いんです」
「まあ、味は同じだもんね。あ、でも。どうすんの?水で戻さなきゃいけないんじゃない?時間かかるんじゃない?」
「で、これです」


「水筒!ま、まさかと思うけど!」


「はい。買ってすぐ、ぬるま湯が入った水筒に入れたんです。それで家まで持って帰ってきました」
「あ、しかもコンブまで入ってるじゃん」


「どうですか?カレンさん」
「うんうん、いい感じで戻ってるわね~」
「で、この鍋を弱火にかけ、ブロードとします」
「うん?ブロード?とな?」
「イタリア料理で出汁の事です」


「別の鍋に火をつけてバターを溶かし、無洗米を炒め、白ワインを入れて煮詰めます」


「オタマでブロードを回しかけて…」


「木ベラで優しく一回かきまぜて、煮立たせて、フツフツと穴が開いてきたら、またブロードを回しかけて、木ベラでかきまぜてを繰り返し、味見をして、調度いい硬さになったら…」


「お皿に移してパルメザンチーズを振りかけて『干しホタテ貝柱のリゾット』の完成です」
「おー!貝柱がいっぱーい!こりゃゼイタクなリゾットだー!」
「お味はいかがですか?カレンさん
「うんうん!リゾット好きなのよね~!わたし!おじやとか雑炊とか違った食感でさー!見た目は似てるんだけど、芯が少しあって、やっぱり違う!ワインにも合うしー!ホタテのコリコリ感と旨味がタマンナーイ!あと、これ塩とか入れてないでしょ?」
「はい。バターとホタテとパルメザンチーズに塩味があるので、まったく塩けは入れていません」
「うん。塩梅いい!うまくコンブも脇役で、いい味だしてる!うん!いい感じ!」
「それはよかった」
「でも、これスゴいね!なんかリゾットてさ。香味野菜とか入れたがるもんだけど、こうやって和食ぽく、食材を少なくして出汁にだけこだわってさ。食材の良さを引き出してる!これ、いいよ!」
「なんか今日はベタぼめですね。ありがたいことです」
「いやいや!わたしがありがたいてことですよ!ところで中華街で、なんか食べてきたの?」
「いいえ。食材だけ買って帰ってきました」
「帰って来たって、あんた、もうその行動、シロウトの域、越えてるよ!もう料理バカだよ!あ、いい意味だけど!」
「ですね」


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