第70回 当分買わないという選択の是非

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このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月510の日に投稿しています

 

最近のご相談で多いのは「買うべきか待つべきか」です。

 

懸命にマンションを探し、真剣に検討を続けてきたものの、中々満足できる物件に出会うことができない。今一番の候補はこれだが、すごく高いので買うべきか見送るべきかを悩んでいる――このようなご相談が多いのです。

 

「当分お休みしたい」という気持ちに変化しつつある人も散見されます。

 

前向きに検討している読者のために、逆説的になるのかもしれませんが、購入を急ぐべきか否かを改めて考えてみます。

 

●値上がりトレンドに終わりが来る?

「こんなに高いものは買わない、いや本音は買えないと、見送りを何度くりかえして来たことか、もう探すのに疲れました。焦りにも似た心境ではあるものの、カスをつかまないようにと懸命にこらえ、葛藤する自分がいることに気付きました。今回ご相談する物件がダメなら、当分賃貸マンションで行こうと思います」――このようなお便り付きのご相談者もありました。

 

「実は、中古も見ましたし、場所も拡大してみたのです。しかし、あちら立てればこちらが立たぬで決心ができずに今日まで来ました。

 

例えば、眺望も向き・日当たりも良いが予算が届かないとか、場所はいいが間取りが悪い、間取りも日当たりも良いが駅から遠い、駅前で便利だし、建物も豪華で気に入ったが高速道路が目の前で窓が開けられないなど。

 

「どこかを妥協しなければ買えないことは分かっているつもりですが、納得のいく物件に会えないのです」と。

 

ごく最近のご相談では、ネット上に「もうすぐ値下がりする」とか「今買うのは愚かだ」などの書き込みを見て、ますます混迷を深めているご相談者も見られます。

 

このような、中々決められない買い手をたくさん生み出したのは、突き詰めていくと価格の急上昇に原因があるのかもしれません。

 

2012年が前回の底値(価格安定期)の最後の年でした。2012年を100とすると、2016年の価格は123でした。2012年に5000万円だった新築マンションは4年後の2016年は6000万円以上に上がってしまったというわけです。

 

(以上のデータは新築ですが、中古は新築に連動するので、同程度の値上がりが起きました)

 

筆者は、こうなることを予測して2013年後半頃から別サイトのブログで「市場展望」を綴ったほか、ことあるたびに筆者ならではの警句を発信して来ましたが、ご縁がなかった人も多かったようで、後悔しているというお便りもよく頂戴します。

 

それはさておき、インターネットの掲示板などには、無責任な発言、悪意に満ちた書き込みが少なくありません。「もうすぐ値下がりするから、それまで待った方がいい」や「五輪後には確実に値下がりするから、今は止めた方がいい」といったものがあります。その意見に一理はあるのですが、では「いつまで待てばいい」のかについては欠落しているようです。

 

筆者は、待つことを得策とは考えていません。その根拠は本ブログの第67回をご覧いただくとして、先に筆を進めます。

 

●あなたはどのくらい待てますか?

高いから暫く様子を見るとして、皆さんはどのくらい時間に猶予をお持ちでしょうか?そもそもマンションを買おうとしている人には、買わなければならない事情があるはずです。つまり、猶予期間はせいぜい1年くらいなのではありませんか?

 

子供が小学校に上がる前にとか、社宅退出制限、家賃補助の期限などが代表的でしょうか?年齢制限を自分で決めていらっしゃる人もいます。住宅ローンが最長で借りられるのは今年中だからとか、定年まであまり時間が残っていないのでできれば1年以内には買いたいという人もあります。

 

こうした事情をお聞きすると、5年も6年も待てる人は少ないようです。

 

もし、今のタイミングで買うのが得策でないとして1年か2年で市場が劇的に変化、すなわち価格が急落することがないとしたら、待って得なことは殆んどないのです。

 

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マンションの価値は立地条件で決まる比重が高いので、好立地の用地はマンションメーカーが競い合うので高値になる傾向が顕著です。そこへ最近の建築費高騰が拍車をかける形で相場無視の分譲価格が次々と登場し、2013年、2014年頃は驚いたものですが、最近はすっかり馴らされてしまい、気が付いたら2012年比で1000万円以上の高値が当然のようにまかり通る市場となってしまったのです。

 

そのことに気付いて手遅れと知ることになるのですが、それでも先延ばしすることが許されないとしたら?

 

こう考えて来ると本当に悩ましいときです。

 

●当分買わないことのデメリット

ようやく本題に入りますが、仮に当分の間、マンション探しは休止するとして、その是非を検討してみましょう。

 

まず、休止期間は何年になってしまうかという問題が直ちに浮かびます。

買い手の中には、年齢の壁を感じ始めた人もいるはずです。最長35年の住宅ローンが厳しい人、つまり65歳くらいまでにはローンを完済したいという場合、逆算すれば30歳になりますから、40歳になってしまった人は既に25年ローンを組まなくてはなりません。

 

住宅ローンは、80歳完済が条件なので、40歳の借り手は35年ローンを組むことは可能です。しかし、それでは人生設計を根本から練り直す必要があり、あまり長く組むのはどうかと思います。そのような人にとっては、あと5年も待つというような事態は避けたいはずです。

 

何より、より快適な暮らしを諦め、現状で我慢することになります。そのことで家族に理解を求めるのも大変です。買い手によっては、父・夫の威厳を保てないと考えるかもしれません。

 

現状に留まることは楽なものです。しかし、一度マンション買うぞと家族に夢を見させてしまったあとでは、逆に後退することへの抵抗は大きいものです。

 

とまれ、当分買わないと決めたときのデメリットを整理してみましょう。上述のローン問題を含めて、以下のようなことが考えられます。

 

①住宅ローンの期間短縮の可能性が高まる

②金利上昇の可能性もある (景気回復が物価上昇につながる可能性。デフレを脱却した先には、金利上昇期へ移行する可能性がある)

③待って価格が下がる保証はない。下がっても僅かかもしれない

④耐震性の低い建物で不安を感じながら住み続けることになる人もある

⑤狭い住宅で我慢する暮らしを続けることになる

⑥古い設備で不便な暮らしに甘んじる人もある

⑦快適な住まいを賃貸マンションに求めると、家賃はとんでもなく高い

 

●値下がりに転じるとしても下落幅は小さい

価格の上昇が長く続くことはありません。続いても、最長5年です。2012年が底でした。2017年は5年目です。その先には必ず価格の調整局面がやって来ます。これは歴史が証明しています。

 

ただ、高値に張り付いてしまうかもしれません。つまり、上昇した価格が下がったとしても、元のレベルまでは戻らないかもしれないのです。100から123に短期間に上がりました。もう少し上がってしまうと、購買力が着いて行かず、価格は下がる方向へ動きます。その兆しは見え始めています。

 

実は、これも歴史が教えてくれるのですが、株取引の世界で言われる「山高ければ谷深し」と同じ値動きは不動産でも過去に確かにありました。バブル経済期の狂騰とバブル後の急落がそれです。第67回でもお話ししましたので、繰り返しませんが、まるでジェットコースターのような値動きでした。

 

100年に一度の狂喜乱舞であったバブル経済は、説明がつかないことばかり起きました。

それでも、マンション価格はバブル前のレベルまでには戻りませんでした。

 

次に、バブル後から2016年までの値動きですが、バブル後の下落局面は2000年で止まり、2005年までは価格が横ばいでしたが、2005年~2008年は、首都圏平均で100から119に急騰しました。急騰は購買力を失わせ、売れ行きが悪化しました。しかし、価格は急落せず、ようやく下落の数字が表れたのは、2011年でした。

 

2005年の単価は@180万円でしたが、2008年には@214万円となり、2009年に少し下落したものの、2010年には再び@219万円に上昇。そして、2011年・12年と低下しましたが、2012年の価格は@213万円で、ここで止まってしまいました。

 

バブル後の最低価格を1002005年)とすると、次のピークは2010年の122で、その後の下落局面では118なので、僅か4ポイントの値下がりに過ぎなかったのです。

 

2013年からの上昇局面では2016年が146となっています。もうすぐ値下がりに転じるとしても、4ポイントしか下がらないと見るのは乱暴な仮説としても、その可能性をゼロとは言えません。過去の事実が、未来に完璧に当てはまるとは思いませんが、「歴史は繰り返す」ものでもあります。

 

とにかく、100150に上がったとして、下げ局面で100まで戻る可能性は低いということは歴史的事実が教えてくれています。

 

無論、歴史だけを理由として述べているわけではなく、その予測の確実性を補完する説明もしなければなりませんが、今日は割愛させていただきます。

 

尚、この数字の推移に違和感を覚える読者もあると思うので、お断りしておきますが、価格統計には11戸の成約額は反映されていないのです。つまり、販売不振物件の残住戸について5%引きしたか20%引きしたかは捕捉されていません。あくまで公表された定価の集計なのです。従って、実体は少し下の数値となります。

 

 

以上のような事実や予測から導かれるひとつの指針は、売れ残り物件の中に条件を満たすものが見つけ、値引きしてもらって購入することです。その方が「待つより早道」になるでしょう。

 

売れ残り物件に良いものなんてないなどと意地悪な人もあるので、最後にもうひとつ。売れ残りの中に、妥協範囲に入る住戸が見つかる可能性はゼロではありません。妥協範囲と書いたように、少しの問題はあるかもしれないのですが、「売れないのは価格が高いだけ」という場合が多いからです。

 

販売開始前の物件でも条件ぴったりなんて、そもそもないはずです。新築にせよ中古にせよ、待って得なことはないと筆者は考えます。

 

 

・・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございます

 

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