わんわん桜学校に出展した読み物のひとつです。
少しでも多くの方に読んでいただきたく、そのまま転記します。
パネル展「おかあさん」のレポは→コチラ。
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「チコを見送った桜、ひなと見る桜」
「チコ」は私にとって初めての犬。
自分自身よりも大事な、宝物。
生き甲斐そのものでした。
「私の全てを投げ打ってでも守りたい。」
そう思っていたのに、最愛のチコは病気のため
あっけなくお空へ旅立ってしまいました。
９歳になったばかりの春でした。
一緒に過ごした最後の春。
「チコ、お誕生日は、ぜったい一緒に迎えようね」
余命宣告を受けていたチコですが、そんな私の願いをかなえ
３月１９日の誕生日までは本当に元気でいてくれました。
でもいくら頑張り屋さんのチコでも
「次はお花見も一緒に」という願いまではきけなくて。
４月４日、お空へと旅立って行きました。
ちょうど、桜が満開の時期でした。
山の上にある霊園に向かう道は
あちこち桜が満開で。
「チコ、こんな形でお花見の約束を果たしてくれたの」と
たまらない気持ちになったのを覚えています。
私の、チコ。大事な大事な、チコ。
その日から私の中で桜は
「切ないもの」になってしまいました。
もうお花見にも、一生行く事はないだろうと思ってました。
だけど。
自身の生涯を立派に生き抜いたチコは
私がその場に留まり続けることを
望まなかったようです。
「ママ、チコがいてあげた９年間を無駄にするの？」
・・・なんて思ったのかもしれませんね。
私は「犬達と関わる生活」を再び送る様になりました。
ワン友さん達と触れ合い、色んな動物愛護イベントに参加し
保護犬の事を学び・・・そして、福岡市動物愛護管理センターから
ひなを迎えました。
ひなとの出会いは、チコが導いてくれたに違いない。
何故でしょう。強く、そう感じました。
自分が残した９年の幸せと
生涯をかけて私に教えた、犬と共に生きる喜びを
どうか忘れないで欲しい。
チコがそんなふうに願ったような気がしたのです。
ひなを迎えた年の春。
わたし達は、近所にお花見に行きました。
辛くて見る事ができなくなっていた、桜。
ひなを抱き、共に眺めました。
チコ。
お母さんは今、この子と共に生きています。
見えますか？
あなたが残してくれた、沢山の幸せのおかげで
再び歩き出す事ができました。
新たな命も迎える事ができた。
チコ。
今、あなたがいる場所は
一年中、春のように暖かでしょう。
そう思うと、なんだかホッとします。
昔も、離れてしまった今も
あなたの幸せが、やっぱり私の幸せなのです・・・・。
そして季節は廻り。
ひなを迎え、２度目の春がやってきました。
人を信じる事ができず
震えてばかりいた子犬のひなは
こんなに元気に成長してくれました。
この美しい桜は、福岡市動物愛護管理センターのものです。
ひなの「ふるさと」の桜です。
沢山の人がここを訪れますように。
一つでも多くの赤い糸がつながりますように。
そう願って寄贈された、桜たち。
その美しさには命への「ありがとう」と「ごめんね」が
含まれている気がして、胸を打たれます。
今、私の元で日々をイキイキと生きるひな。
チコの次に出会えたのが、ひなで良かった。
ひなが、元保護犬で良かった。
心に傷を負ったひなとだからこそ、共にここまで来れた。
お互いにゼロではなく「マイナス」からのスタートだったからこそ
一緒に幸せを築くことができた。
そんな気がしています。
チコを見送った日の桜。
ひなを迎えて初めての桜。
そして今、センターで見る桜。
私の心がどんな時でも
桜は変わらず、美しいピンク色の花を咲かせてくれる。
その確かさに励まされながら、これからも歩いていこう。
心の中のチコ、そして目の前のひなと共に。
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