大学を無事卒業し、ほっと一息ついた7月
私は啓丞に報告するタイミングを考えていた。
もうすぐ啓丞の誕生日。
それに合わせ、ふたりだけのパーティーの準備を密かに進めた。
私はケイコに教わったレシピでケーキを焼いた。
「お誕生日のお祝いをしたいから、早く帰って来てくださいね。」
…出来るだけ早く帰ります。
すぐに返事が来た。
その言葉通り、啓丞はいつもより早く帰って来た。
「明日は休みなので、ゆっくりワインでも飲みましょう。」
お誕生日ぐらい付き合って下さいと
啓丞は笑い、私のグラスにワインを少しだけワインを注いだ。
…夕食もそろそろ終わる
いつまでもワイングラスを開けない私を訝しげに思っていたようだが、
啓丞は何も言わなかった。
「はい…これ。お誕生日プレゼントです。」
今の生活は
ほぼパーフェクトな状態…お金で買えないたったひとつのものを覗いては…。
「今年は何でしょうかね…。」
啓丞は、箱を開けて一瞬困惑した表情をした。
Tシャツ?
…その下にはピンクとブルーの小さなTシャツ。
その小さなシャツをつまみ上げた。
丁度啓丞の手の大きさよりも同じくらいのサイズで、
啓丞のものと比べると大きさの違いが可笑しかった。
4Dエコーと描かれたDVDにバースデーカード。
「ん…?これは何ですか?お父様 お誕生日おめでとうって…どういうこ…。」
啓丞は、驚いた表情のまま私を見た。
「ま…まさか。」
私は微笑みながら頷いた。
「ほ…本当ですか?」
…はい 本当です。
「ん?でもまだ性別が判らないってことですかね?」
…いいえ…分っています。
「えっ…ってことは。」
…はい…そのまさかです。
啓丞は私を抱き上げキスをした。
「本当ですか?」
啓丞は何度も聞いた。
「今までに悠木さんの所へ三度程行きましたが、本当でした。」
「なんで早く教えてくれなかったのですか。」
「確実に分かるまで…と啓丞さんのお誕生日の今日お伝えしようと思って。」
私は笑った。
「2人とも順調だそうです。」
私は啓丞がこんなに興奮している姿を見たのは、智の事件以来だった。
夜な夜な啓丞は仕事から帰って来るとこのDVDを観た。そのたびに
「生命は本当にに不思議ですよね。」
と言うのだった。
啓丞の喜びようは、尋常ではなかった。啓丞は安定期に入る前にすべてのものを揃える勢いだったので、私は必死になってそれを止めた。
「考えたくは無いけれど、また万が一…。」
正直に自分の気持ちを話した。
「では…安定期になったらすぐに買いに行きましょう。」
その日を指折り数えて待っていた。
啓丞は本当は私以上に子供が欲しかったようだが、今までに一言も言わなかった。
…気を使ってくれていたんだ。
遡ること数ヶ月前…
啓丞には内緒で私は悠木の診察を受けていた。
悠木はエコーモニターを私に見せた。
…え?
悠木は笑いながら頷いた。
…二つ?
「二つの胎嚢と二つの心拍…ということは?」
…二卵性?
「はい。そうです…レナさんおめでとうございます。」
私は泣きそうになった。
予定は4月。
とても嬉しいニュースだった。
相変わらず結婚してからも、ほぼ毎晩…なのにも関わらず出来ないので、
検査をして貰おうと思っていた矢先の嬉しい出来事だった。
今回はつわりも余り酷くなく順調だった。
啓丞は、無事に私と子供が過ごせたお祝い…だと言い
1週間に一度は花を買ってきてくれた。
9月下旬、啓丞が体調を崩した。夏バテかも知れませんと笑ったが、余り食欲が無いというので、心配になり病院へ連れて行った。
結果はやはり夏バテだったようですと啓丞は笑った。
先生は妊娠中の私のヌードを描きたいと言った。
芸大の講師として働いていたこともあるんですよと笑い、そして、
その頃に周防と知り合ったことを教えてくれた。
「子供と一緒のあなたの絵を描きたいです。」
画材道具を熱海から運び、嬉しそうに言った。
「でしたら、今の二人の時の絵も記念に残して欲しいです。」
僕は別に良いんですと言いつつも、スケッチブックを取り出し、私の顔を描きその横に自分の顔をささっとを描いた。
「ちゃんと真面目に描いて下さい。」
目はもうちょっと大きくて切れ長で、頬はこんなに角ばっていませんよと、啓丞の自画像にダメ出しをしては描き直しをお願いした。そして啓丞はいつも
「また今度にします。」
と言ってスケッチブックをしまってしまうのだった。そんなにまた今度と言っていたら啓丞さんの顔だけおじいちゃんになってしまいますよと言った。
子供名前を決めた。
お互いの名前を一文字ずつ使って、男女2つの名前を考えた。
啓丞からの今年のクリスマスプレゼントは、ボルボのSUVだった。ディアターンのチャイルドシートが二つ。
私は今は啓丞の“使って居ない車”に乗っているが、家族が増えるならと、
買い替えた。啓丞は、ついでだからと熱海の家を片付けたり、乗っていない車を処分した。
啓丞は少し疲れた様子を見せていたので仕事を休むことを勧めたが、子供が生まれる前にしておかなければならないことがあると言っては、書類の整理などをしていた。
この頃からは、悠木と啓丞だけでなく、アメリカから帰って来た瑛二も我が家に来ては飲んで泊って帰る様になった。
「レナの所は、家政婦さん居るし、病院からも超近いから、一緒に同居しちゃおうかなぁ。」
などと言い始め、私と瑛二は馬鹿らしい言い合いになり、
啓丞と悠木はそれを止めずに笑って眺めた。
今思えば、丁度この頃からだ
多分…この頃から私以外の、この3人は既に知っていたんだ。
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啓丞は、無事に私と子供が過ごせたお祝い…だと言い
1週間に一度は花を買ってきてくれた。
9月下旬、啓丞が体調を崩した。夏バテかも知れませんと笑ったが、余り食欲が無いというので、心配になり病院へ連れて行った。
結果はやはり夏バテだったようですと啓丞は笑った。
先生は妊娠中の私のヌードを描きたいと言った。
芸大の講師として働いていたこともあるんですよと笑い、そして、
その頃に周防と知り合ったことを教えてくれた。
「子供と一緒のあなたの絵を描きたいです。」
画材道具を熱海から運び、嬉しそうに言った。
「でしたら、今の二人の時の絵も記念に残して欲しいです。」
僕は別に良いんですと言いつつも、スケッチブックを取り出し、私の顔を描きその横に自分の顔をささっとを描いた。
「ちゃんと真面目に描いて下さい。」
目はもうちょっと大きくて切れ長で、頬はこんなに角ばっていませんよと、啓丞の自画像にダメ出しをしては描き直しをお願いした。そして啓丞はいつも
「また今度にします。」
と言ってスケッチブックをしまってしまうのだった。そんなにまた今度と言っていたら啓丞さんの顔だけおじいちゃんになってしまいますよと言った。
子供名前を決めた。
お互いの名前を一文字ずつ使って、男女2つの名前を考えた。
啓丞からの今年のクリスマスプレゼントは、ボルボのSUVだった。ディアターンのチャイルドシートが二つ。
私は今は啓丞の“使って居ない車”に乗っているが、家族が増えるならと、
買い替えた。啓丞は、ついでだからと熱海の家を片付けたり、乗っていない車を処分した。
啓丞は少し疲れた様子を見せていたので仕事を休むことを勧めたが、子供が生まれる前にしておかなければならないことがあると言っては、書類の整理などをしていた。
この頃からは、悠木と啓丞だけでなく、アメリカから帰って来た瑛二も我が家に来ては飲んで泊って帰る様になった。
「レナの所は、家政婦さん居るし、病院からも超近いから、一緒に同居しちゃおうかなぁ。」
などと言い始め、私と瑛二は馬鹿らしい言い合いになり、
啓丞と悠木はそれを止めずに笑って眺めた。
今思えば、丁度この頃からだ
多分…この頃から私以外の、この3人は既に知っていたんだ。
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