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 こちらは泰山の麓の街、泰安の汽車站。
 站は駅という意味もある漢字なのだが、中国でいう汽車站は鉄道駅ではない。

 中国語をご存じの方には当たり前過ぎる話で、今更言うほどでもないのだが、中国では汽車と言えばクルマを指すのが一般的である。普通乗用車だけでなく、バスやトラックなど自動車全般を含む。中国の自動車メーカーの名前も『第一汽車』『東風汽車』『上海汽車』といった具合である。

 従って汽車站とは、他に何か断りがない限り、バス停あるいはバスターミナルを指すものだと思って良い。

 鉄道は中国語では铁路という言葉もあるが、我々が鉄道を指す言葉として一般的に使う電車あるいは汽車という言葉にあたる中国語は火車である。ウチの家計の話ではない。

 個人的な推測だが、恐らく蒸気機関車の時代、日本人は蒸気や湯気から連想して汽車、中国人は石炭を燃やして火の力で走るので火車、と名付けたのであろう。鉄道が火車と呼ばれているので、自動車が入ってきたときに、ガソリン(ガス)で走るから汽車と名付けたのも、別におかしな話ではない。

 そういうわけで、中国では鉄道の駅は火車站、バス停やバスターミナルは汽車站と呼ばれる。ちなみに車站とだけ呼ばれる場合もあって、これがどっちか悩んだりするのだが、大抵バス停(バスターミナル)の方を指していることが多い。鉄道の場合はきちんと火車站と言わないと通じないことが多かった。

 とはいえ、わかってはいても、日本人の私としては、いわば条件反射というか、無意識に、汽車站の文字だけ見ると鉄道駅だと認識してしまう。すぐ後に思考が追いかけてきて、違和感を感じる。そして「違う違う、バスターミナルだった」と認識を塗り替える。少し長い間住めば慣れてしまうのだろうと思うが、旅行者としてはこの一瞬の認識のズレや違和感を感じるのが、ちょっとした刺激で面白かったりする。

【写真】2014年8月
【文章】2017年7月
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