1月12日、最後の日 ⑨ | 普通ってな~に???

普通ってな~に???

AC&ADHD疑いな自分との闘い→(中略)
→アスペルガー疑いのパートナーとの生活→カサンドラ症候群→別れ
→自分再建(←今ココ)

続きです。


 

 

 

『もうその辺で…キリがないから…』

 

ちょっと、デリケートな話で、言い方が大事だと思うんですが…。

ごめんなさい、一言一句正確には思い出せません。

なので、人によって、違う伝わり方をしてしまうと思います…。

そんなようなことを言われた、と幅を持って読んで頂ければありがたいです。

 

お父さんの方を向くと、視界の端に時計が飛び込んで来ました。

もう23時を回っていました。

 

『ごめんなさい、もうこんな時間…』

 

『ああ、いや、そうじゃなくて…せかしたいわけじゃなくてね…。言いたいことは尽きないだろうけど…どれだけ言っても納得できるようなことじゃないだろうから…ね…』

 

聞くに堪えなかったのかな、と思います。

 

息子可愛さがゼロだったとは思いません。

でも、私の気持ちも考えてくれているようには見えました。

(ここまで話して来て、お父さんは、ちょっと口下手な様子が随所にありました)

 

ちょっと正確な表現が出来ないのですが…

言えば言うほど、私が嫌な感情に呑み込まれていってしまうだけだから…というような趣旨のことを仰ったように記憶しています。

 

どのみち、それがどんな感情によるものだったとしても、私としてもタイムアップになろうというタイミングでした。

終電の時間が迫っていました。

 

その後、どうやって話を切り上げたんだったか…。

 

お父さんと、もう二言三言、言葉を交わしつつ…

彼にも二度三度ぐらいは、何かを言ったような記憶があるんですが…

何を言ったか、覚えていません。

 

ああ、そうだ…。

 

もしかしたら、このタイミングじゃなくて、誓約書を書き上げた時だったかもしれませんが…たぶん、この時だったと思います。

誓約書の内容をもう1度確認し、約束して貰うと共に、もう1つ約束をして貰いました。

 

『これで終わりにするけど…私はこれから帰って、1人の時間の中で、何を思って、どんな感情を抱き、どんな状態に陥るか、今はまったく想像もつかないの。こんなこと、想像もしてなかったしね。だから…』

 

『……』

 

『どうしたって、この先10か月は、この振り込みという形だけとはいえ、縁は続くわけなので…今後、もし私から何らかの連絡があったとしたら、必ず反応して欲しい』

 

『…わかった』

 

『電話…はどうせ取れないだろうから。仕事中は勿論だけど、奥さんと居たら、取れるわけないもんね?』

 

『……』

 

少し、否定しかけた様子があったように記憶しています。

いや…とか、あの…とか、そんなような言葉もあったかもしれません。

 

『だから、するとしても、メールだと思うけど。ああ、でも、もし電話したとしたら、その時取れないとかは構わないから、必ず折り返して。そのぐらいはして貰っても罰は当たらないと思うの』

 

『…うん』

 

『まぁ、連絡しないかもしれないし。でも、もしかしたら、相談や、文句や、愚痴や、非難…を送りたくなるかもしれない。するもしないも、したとしてどんなものになるのかも、約束できないけど。それがどんなものであったとしても、たとえ貴方にとっては好ましくない内容だったとしても、必ず返信して。この1か月半みたいな、私の人格を否定するような、私の存在を足蹴にして踏みつけるような対応だけはしないで。…出来る?』

 

『…約束する』

 

 

 

私は席を立ちました。

 

『こんな時間まで、すみませんでした。色々とありがとうございました』

 

近くにいたお父さんに、頭を下げました。

 

『お手洗い、いっといたら?』

 

『あ、そうですよね。ありがとうございます。お借りします』

 

促されるまま、お手洗いをお借りしました。

 

 

戻ったら、お母さんから、手土産を差し出されました。

 

『これ…さっきの鮭と、牛丼の具があったから、少しだけど…』

 

『そんな…頂けません…』

 

『少しだから。ごめんね、こんなことしか出来ないけど…ご飯、ちゃんと食べてね』

 

『…何から何まで、すみません。ありがとうございます』

 

また泣きそうになりました。

 

彼の座っていた席の背中にかけてあったコートやマフラーを取り、身支度をしながら、彼に声を掛けました。

 

『貴方からも、お父さんとお母さんにお礼とお詫びを言ってね。本当によくして頂いたから』

 

『…うん…』

 

 

『それじゃあ、失礼します。遅くまで本当にすみませんでした』

 

『お父さんが、駅まで送るって』

 

『え、いや、そんなとんでもないです』

 

『もう遅いし、暗いから。送って貰って』

 

気づくと、お父さんはもう玄関に出てらっしゃいました。

 

『すみません…』

 

お父さんに促され、靴を履き…お母さんに再度、お礼とお詫びを告げ、頭を下げて、お父さんに続く形で家を後にしました。

 

彼には、もう何も言いませんでした。

目も合わせず、視線も向けませんでした。

 

 

道々、お父さんとまた、色々とおしゃべりをしました。

 

『落とし前って言っても、何も出て来なかったでしょ』

 

やっぱりだよ、というように、お父さんは言いました。

 

私には青天の霹靂のような事態で、理解も納得も許すことも出来ないことでも…

お父さんたちにしてみれば、ずっとずっと見て来た息子の姿です。

強い諦めと呆れが、滲んでいました。

 

『こんなこと言ったらあれだけど…6万を10か月…絶対途中でやらなくなると思うよ…』

 

『ですよね』

 

さすがに私も、この期に及んで、今回こそは本当にちゃんとしてくれる筈などと、100%で信じるほど愚かではありません。

 

支払いを約束させたのは、けじめとしての、ただの1つの形です。

それを果たさないなら果たさないで、違う手段に出るだけです。

もっと酷い目に遭わせる為の。

 

それは、メールや電話のくだりに関しても、同様です。

 

まぁ、さすがにそれは、お父さんには言いませんでしたが。

 

この道すがらでも、遊びにおいでと言われた気がします。

(そういえば、家で話している時、貴女が嫁だったら良かったと思うけど…というようなことも、お父さんお母さん双方から、異口同音で言われたりもしました)

こんな言い方をしていいのかわかりませんが、お父さんは、私と話すのが楽しそうでした。

(この辺がもしかしたらちょっと、ASDっぽいのかな…と思ったりしました)

 

本当に色々、沢山、ずっとしゃべっていたのですが…。

残念ながら、殆ど覚えていません…。

 

気持ちを切り替えて…みたいなことも言われた、気がします。

 

そうして、駅に着き、エスカレーターの前で立ち止まった時。

お父さんの手に、お金が握られていました。

 

『これ…少なくて申し訳ないんだけど…』

 

『いや、そんな、貰えません』

 

『いやいや、ホント、見て。これしかないからさ…何の足しにもならないと思うんだけど…』

 

2万円でした。

 

『いえ、でも、ホント、貰えません』

 

『いいから、貰って。こんなことしか出来なくて、本当に申し訳ない…』

 

強引に渡されました。

 

『ね。ほら、しまっちゃって』

 

ありがたくて、申し訳なくて、結局受け取る自分が情けなくて…涙が溢れました。

 

『ごめんなさい…私、絶対に受け取るべきじゃないのに…』

 

お父さんも、泣いてらっしゃったような気がします。


『何もしてあげられなくて申し訳ない…ホント、いつでも遊びに来て…』


その後、結局、泣きじゃくりながらエスカレーターに乗って…
お父さんは、改札までついて来てくれました。

『すみません、ここまで送って頂いてしまって…』

『家の方は、駅からの道、大丈夫なの? 暗くない?』

『大丈夫です。ありがとうございます』

もし暗いと言ったら、ついて来てくれそうな勢いでした。
まぁ、勿論、そんなことはなかったと思いますが…。
そのぐらい、気を遣って下さると共に、名残惜しそうでした。

でも、いつまでグズグズしていても仕方ありません。
時間も時間です。

何度もお礼とお詫びをして、改札を通りました。

階段に向かい、振り返ると、お父さんはまだ同じ場所に立ってらして…
結局、私の姿が見えなくなるまで、ずっと見送っていて下さいました。


そこから、電車が遅れていて、最後は結局、終電で最寄り駅まで帰ったのですが…。

道中、自分が何を思っていたか、一切思い出せません。
断片的に、車内の光景や、乗り換えの時の移動を少し思い出せるぐらいで…。

家に帰り着いた時の記憶もありません。

頂いた品を、冷凍庫にしまった記憶はあります。
(牛丼は常温保存だったのに、冷凍してしまいました。全然頭が働いていませんでした…)
鮭は、4枚も入っていました。
おそらく、私に出してくれたものと合わせて、全部だと思います…。
それだけでも、お母さんの気持ちが窺えました。

後はもう、ブログに書いた通りです。
ただただ放心状態で、その日は終わりました。



12日の出来事は、これですべてです。

思った以上に、長くなってしまいました。
でも、どうしても、可能な限りすべてを、書いておきたかったのです…。

お付き合い頂き、本当にありがとうございました。