映画『スリー・ビルボード』〜全ての人々に、この感動を伝えたい秀作〜
皆さん、こんにちは!!
人それぞれ、その時期、そのタイミングで出会う映画が存在する、と私は思います。
出会う運命であったかのような映画です。
私にとって、日本でも公開されたアメリカ映画『スリー・ビルボード』は、まさに、それに値する作品でしょう。
簡単に、あらすじを記載します。
●ミズーリ州の片田舎エビングで、10代の女性がレイプの後、殺害される。母ミルドレッドは、事件後、半年以上経過しても、警察が犯人を逮捕できない状況に憤慨。
そこで、ウィロビー保安官を名指しで批判する大きな広告看板を出す。この広告看板を機に、地元警察官や住人を含め、さまざまな騒動が巻き起こる・・・。
女優フランシス・マクドーマンドさんが演じるミルドレッドが、娘の死に対する激しい怒りの感情を軸に展開される人間ドラマです。
この映画の根幹は、娘を惨殺された母親ミルドレッドの憤怒です。
娘を殺された母という立場。娘を殺されたことによって、いやが上でも立たされざる得なかった状況。彼女のすべての行動が、映画全体を通して、「筋道」が通っています。
映画『ファーゴ』において既にアカデミー賞主演女優賞を獲得している名優フランシス・マクドーマンドさんの演技の確かさとリアルさ(迫真さ)を目の当たりにする作品でしょう。
そうなんです。ミルドレッドは、片田舎において、どこにでも居る、ありきたりの母親なのです。その彼女が、運命なのか、自分の娘をレイプされて、殺されたという事実があるだけなのです。
そうした過酷な状況に追い込まれた女性が、具体的な行動に打っただけなのです。ですから、映画全体を通して、ミルドレッドの行動に、不可解な点が見当たりません。
娘を殺された母ミルドレッドが、どれほどの悲しみを抱えたか。
フランシス・マクドーマンドさんの演技により、こうした状況に置かれてしまった女性の心理状態、感情の起伏を、見事に表現されています。
そして、共演の俳優の方々、軒並み、見事な演技を展開されています。
これは、まさしく、『名演の連鎖』です。
一人の俳優がリアルな演技をしているとき、共演している感性が豊かな俳優は、それに感化されて、リアルな演技を奏でる現象。これが起きたとき、映画にしても、舞台にしても、作品の質が、はるかにアップすることは間違いないでしょう。
映画『スリー・ビルボード』は、その典型的な作品であると言えるでしょう。
保安官を演じたウッディ・ハレルソンさん、そして、この町の警官役を演じたサム・ロックウェルさん。この両者は、見事にフランシス・マクドーマンドさんの演技とアンサンブルしています。
日本語では、『演技合戦』という言葉が当てはまるかとは思いますが、この言葉などでは表しきれないほどの、「上質な演技」です。
●娘を殺された女性
●逮捕できずに苦しむ保安官
●自分の過去に苦しむ警官。
この三人を中心として、登場人物が抱える人生のバックボーンが集約された秀作であると私は断言します。
~グロテスクなまでに、感情を外に表してしまう人々~
すべての人が抱える人生の悲嘆。苦しみ。否定的感情。それを取り巻く静かなる自然に囲まれた片田舎の一つの町。
ただ、そこの普通に生活していた人々。
その中の住人の娘が殺されたという事実。
その事実が生じたときの起きた、人々の蠢く感情と、その波。
映像表現、脚本、カメラワーク、そして演技。すべてにおいて、最高レベルな作品です。世界的にも絶賛されていることは、納得です。
あえて、まだ鑑賞されていない方々のために、私の説明は、ここまでにしておきます。
皆さん、映画『スリー・ビルボード』の素晴らしさは、映画館にて!! 必見です。
この感動を、全ての人々に伝えたい一心です。