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観客の心に、いつまでも余韻を与え続ける演技とは?~舞台『THROWN』より~

      2016/12/09


皆さん、こんにちは!
俳優が提供する演技は、観客の心を動かし、感動させるための有効な手段の一つであると私は思います。

『一人の俳優が想像力を駆使して作り上げた役柄』
ある意味で、俳優の身体を通して、イマジネーションが充満された形でもあり、そのエネルギーが肯定的に観客に届くケースは、とても多いでしょう。

 

12月3日(土曜日)、池袋シアターグリーンという小劇場にて、私の先輩であり、尊敬すべき俳優の方が出演していた舞台『THROWN』を観に行きました。

今回の舞台において、『土地から土地を転々として、旅をしながら地図を創作している謎めいた男』という役柄を演じていました。

 

旅の途中で出くわした3人の若者に、質問をし続けます。

「自分とは何か?」

「自分探しとは何か?」

「人生とは何か?」

「何のために生きているのか?」

このような趣旨の質問を問いかけて、彼らの意見に対して、淡々と答えていく演技が展開されていました。

 

俳優の立場からすれば、非常に演じてみたい役柄です。
これらの質問は人間誰しも自問自答する疑問と悩みでしょう。人間にとっての、いわば「永遠の課題」とも言えるでしょう。

その「永遠の課題」に対する若者たちの意見を聞き、それを受けとめて、淡々と答えていくという役は、演じる俳優自身の個人的な人生の深み無くして、リアルには演じ切れないと思われます。

言い換えれば、自らが人生で高めてきた人生観を役を通して表現できる機会を得られるわけです。

そうした役を演じることが出来るのは、「俳優の醍醐味」とも言えるでしょう。

 

今回の舞台で、この役を、とても味わい深く演じられていました。大げさな身振り手振りは一切しません。3人の若者たちの発言に対して、(ある意味、地味なほどに)質問に答えていく。

時折、ある若者の言動に、すぐに応答せず、沈黙がある。

しかし、その沈黙の最中に、心理が動いているのが伝わってきます。(つまり、ストップモーションではありません。) そのため、「次に何をこの男は発言するのだろう?」というワクワク感を抱かせてくれます。

3人の若者たちに、『人として生き方』・『人生の在り方』を問いかけ、この男なりの考え方を投げかけたのち、再びに出ます。ここで、この舞台での出演は終了します。
約15分~20分ほどの出演時間だったと思われます。

しかし、舞台終了後も、私の心に余韻として印象付けられる演技でした。
これは、この方の演技の質感のみならず、演出家のERGOさんの力量と、脚本と人物設定の妙味といった『共同作業の結晶』であることは言うまでもありません。

 

私の先輩の今回の演技は、地図をつくりながら放浪の旅をしている謎の男という人物の「心理の流れ」を、ただシンプルに演じていたに過ぎません。しかし、それが非常に印象深い演技として、私の心に残りました。

個人的に、この方のことを知っているということもありますが、そうした私情を差し引いても、客観的に観て感銘を受ける演技であったことは確かであると思われます。

 

俳優の個人的な思惑で、過度に大げさな身振り・手振りをしながら役を演じる必要がないということです。ただ、役そのものが、その場面で抱える心理の流れに身を任せて、台詞を発していくだけで、観客の心に響き渡る演技が実現されるということです。

 

‟正統なる演技”を観ることができたという満足感。そうした満たされた思いで、劇場を後にしました。

 

「観客に、いつまでも余韻を与え続ける演技とは何だろう?」

そのヒントを与えてくれる、実在感が溢れる演技でした。大いに学ぶことが出来ました。

 

では、皆さん、本日も、かけがえのない人生のステージをお過ごしください!!

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