Who Killed Cock Robin? 6
「それ以来咲良も、五人の娘たちもおらん」
「たくさんの犠牲者が出て変わり果てた姿で見つかった。しかし見つからんかった。五人の娘たちがいた置屋は、他の者は皆逃げたそうじゃ。五人の娘らは誰も見かけんかったと言うておった。――いや、自分の身と自分の家族のことだけで精一杯じゃったと。――あとで聞いた話じゃ。娘らの部屋は外から鍵がかかっておったそうじゃ」
「――それから時は止まったままじゃった。わしも、そして通りの皆も。今でも咲良の『嘘つき』の声は忘れられん。その声は、わしはもちろん通りの衆にとっても永い間心の枷になった」
ひなこが立ち上がり、黙って厨房へ向かった。きっと何か温かい飲み物を用意するだろう。男たちは黙ったままだった。
私は今は父と呼ぶ人の手に、自分の手を重ねることしかできなかった。
るり子姉さんが冷静な声でボスに尋ねる。
「この封書の差出人に心当たりはありますか?」
京念も続いた。
「駒鳥……という言葉に心当たりは?」
その二人の問いかけにボスは頷いた。
「あれらは……こまどり隊と呼ばれておった」
「雪女おばさまにコツを教えてもらったんですけど、おいしいかな?」
ひなこが大ぶりの筒茶碗を持って部屋へ戻ってきた。銘々の前に置いたその中身は熱々の甘酒だ。
ひなこが雪女おばさんに教わったという甘酒の優しい味を静かに味わい、しばらくしてるり子姉さんがまた口を開いた。
「この話はみきくん――最所先生にも共有してよろしいですね」
ボスは頷いた。
「ふたばさんにも?」
京念が念を押す。その問いにボスは苦しげにまた頷いた。
「私たちは家族です。もう一人で苦しまないで」
「咲良さんはこんなこと、望んでいない。こんな――こんなことをするものと戦いましょう」
私とひなこがそう囁き、先ほどまで静かに香箱を組んでいた小雪がそっとボスの膝に乗り、にゃん、とボスの顔を見上げて優しく鳴いた。
そしてこれが、次なる事件の序章だった。
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