8mgの小説ブログ

WEB小説(ちょっと挿絵)のブログです。ブログ形式だと順番的に少し読みにくいかもですが、一章ごとに完成したら、別サイトにアップしたいと考えています。※このサイトはリンクフリーです。

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WEB小説『画面の向こうのプロレスラー』をメインで更新中!ちょっとアレな性格の女子レスラーの成長物語ですm(_ _)m

WEB小説 拡張された世界 〜第一章21〜

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・・・少し前、最後の作戦にかかる為、ブライアさんと俺とアリスとで作戦会議をしていた時・・・ 

 

「どう言うことですか!?それって、暴走の動力は17式だけど、暴走を誘導してるのは前の車両って事ですか?」

 

「ああ、二両揃って初めて走行する仕組みみたいだ。」

 

・・・ブライアさんが言うには、前方付随車両内の拡張空間に入り込んだ際、中富博士の断片的な記憶を感じたらしい。

 

電脳化した人間には、拡張世界(オーグリアリティ)を通して、別の人間の記憶が流れ込んでくるという不思議な現象がごく稀に起こるという話を聞いた事がある。

そして、今回のケースは、付随車両内という限定的な拡張世界である『空間拡張』内で、その空間を作った中富博士の記憶がブライアさんの電脳内に流れ込んだという訳だ。

 

「マスター、中富博士の周辺情報の集積が完了しました。」

そう言って、アリスは自身の目に搭載されているプロジェクターで、エムズの機体甲板部分に向けて情報を映し出してくれる・・・

 

中富康之、元レールライン開発技術研究所所長・・・数多くのルート開発や車両開発に携わり、彼が64歳の時、彼の集大成である最大プロジェクト『フロンティアライン計画』を打ち立てる。4年越しで認可を得て、開発研究は順調に進むかと思われたが、突然その計画は凍結させられる・・・その後、彼は幽閉されるかのように研究所を追い出され、地球07エリアのオーグアーミー(この世界の軍隊機関)施設へと赴任する。その翌年、彼の妻である中富和子氏が亡くなり、それを追うかのようにその翌年死去ー享年72歳。

 

「オーグアーミーに赴任って、ブライアさん!?」ブライアさんは元オーグアーミー所属だ。

 

「ああ、その頃は、もう辞めていたからわからないけど、なんでオーグアーミーなんだろうか!?それにフロンティアライン計画って??」

 

「確か、聞いた事があります・・・研究資料としてデータベースにも残していたはず・・・アリス、フロンティアライン計画を説明してもらえるか?」

 

「はい、マスター!フロンティアライン計画というのは、レールの上を車両が走るレールラインシステムに対して、レール自体が走るインフラ計画がフロンティアラインです・・・」

 

・・・アリスの説明によれば、フロンティアライン計画とは、まず地上の上に蜘蛛の巣状のもう一層の地表を作り、地球全体を2層構造にする・・・当然、今までの地上は影に覆われてしまうのだが、上の地表をステルスコーティングして見えなくさせる事で、今まで通り、地上に住む人は、なんの変化も感じないまま暮らし、その上の層を使って、自由に人や物が行き来するインフラシステムだ。

ステルスコーティングにより見えなくなった上の層では、蜘蛛の巣状に張られた地表の上を、1×1mの六角形のプレートが自由に動き回る。プレートは何枚も連結させる事が出来、大きさや数問わず運搬することが出来る。

上の層と下の層を繋ぐのが、ステーションエレベーターであり、地球の至る所に出来る事になるが、このステーションエレベーター間を点移動するのがこのフロンティアラインシステムの肝だそうだ。

 

これまでの決められたレールの上を通る形態ではなく、点と点を自由に移動するインフラ形態・・・そんな世界の実現化がフロンティアライン計画だった。

 

「余りに話が壮大過ぎて、付いていけないんだが・・・」ブライアさんが言う通り、計画の規模が大き過ぎる。

 

「でも、上の蜘蛛の巣プレートを構成するブラナ合金という素材が、かなり低コストで調達出来るとかで、ホントに実現出来そうとか、業界でも話題になっていたと思います。」

 

「しかし、計画は凍結された・・・のか。」

 

「恐らくは、その計画は余りにオーバースペックだとリアースに判断されたのではないかと思います。上の層は、その上に乗る人や物を含めて丸ごとステルスコーティングされている・・・これって、見えない所で色んな人や物が地球のどんな地域にも運搬されるって事ですよね。例えば、武器やテロリストが自由に行き来出来る訳で・・・」

フロンティアライン計画の問題点は、そのセキュリティ管理機能に幾つかの問題を抱えていたように記憶している。しかし、リアースとの協力により、それがクリア出来ると中富博士は訴えていたように思う。

 

 

しかし、結局はリアースが拒否したのだ。

 

 

それだけではなく、中富博士はリアースからオーバーテクノロジーを生み出す危険人物に認定され、幽閉される・・・その幽閉先が何故オーグアーミーだったかはわからないが、そのおかげで、彼は17式に触れる事が出来、今回の列車暴走事件に繋がった訳だが・・・

  

「それがな・・・前の車両に乗り込んだ時に見えたのは、中富博士と彼の奥さんだったんだ。」

 

「奥さんですか?」

 

「俺があの車両内で見たのは、レールラインで目的地へと向かって旅をしている中富夫婦だったと思う。」

 

「その目的地とは?」

 

「ステーションエレベーターだと思う。あの時俺は、拡張空間の中で中富博士がそう言ったのを覚えている。」

 

車窓から見える外の景色を楽しみながら旅する老夫婦・・・それが中富夫婦で彼らが向かっていた先はレールラインからフロンティアラインへと移行するインフラシステムを妻に案内しながら、この世界がさらに良い方向へ向かっていけばという中富博士の夢が溢れ出したように、拡張空間を通してブライアさんの中に流れ込んだそうだ。

 

「そうですか!!これは、暴走を止められるかもしれません!!」

僅かな可能性だったが、自信があった。

 

「止められるって、どうやって!?」

 

「中富博士の目的が、奥さんにフロンティアライン計画を見せる事だったとしたら、そのフロンティアライン計画が実現した風景、ステーションエレベーターから上の層まで完成した風景を見せる事が出来れば目的は達成して暴走を終わらせる事が出来るんじゃないでしょうか。」

 

「見せるって、どうやってフロンティアラインを見せるんだ!?」

 

「・・・そこでオーグリアリティ(拡張世界)の出番ですよ!アリス、作れるか?」

 

「はい、問題ありません!」

 

考えた作戦というのは、中富博士が考えたフロンティアライン計画が実現した世界を拡張世界に映し出す事だった。

前方車両の空間拡張にプログラム干渉を加える事で、フロンティアライン計画の実現した世界を見せる。

 

「中富博士の提唱したフロンティアライン計画のプレビューを、今から俺とアリスとで構築します。」

 

「そんな事が出来るのか!?」 

 

 「7、8分程あれば出来ます!今から、エムズで暴走車両へ向かいます。ブライアさんはここで休んでいて下さい。」

 

 「おいっ、ダメだ!危険すぎる・・・」

 

「大丈夫・・・とは言いませんが!俺達は修理屋である前に技術者です!技術者なりの戦い方でこの状況をひっくり返してやります!・・・それに、この超優秀なアリスもいますし!!」

 

「マスター!やだ、優秀とか可愛いとか・・・恥ずかしいです・・・!」

 

「いやっ、誰も可愛いなんてひと言も言ってないんですけど・・・」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

前方車両の上、エムズコクピット内・・・

 

「では、プログラムを投下・・・開始!!」

 

「はいっ!マスター!!」

 

拡張空間に向けてフロンティアライン完成プレビュープログラムを投下させた・・・。