えっ…
俺、今シカトされた? 
確かにシッカリ目が合った筈なのに。
それって…
あの人、この俺に対して
疾しい事が有るって証拠だよな。

うそ…
俺、気絶してる間にあの人に
一体何をされたっていうの?

俺はそれを考えた途端に
恐怖を感じて、逃げるように
相葉さんの元に戻った。

雅「ニノがトイレ行ってる間に
  カレー来ちゃったよ。冷めるから
  先に食べちゃった。めっちゃ美味しいよ。」

和「そ、それはいいけど…」

雅「何?どうかしたの?」

和「ねえ…相葉さん、あの人覚えてるよね?」

俺はトイレから出て自分の席に戻る
大野さんの姿を指差した。

雅「あっ、あの人、飛行機事故の時の…」

和「しーッ、声がでかいよ。
  あの人だよ。この店教えてくれたの。」

雅「へえ。そうなんだ?
  っていうか、あの日ニノは、あの人に
  助けて貰ったんだよね?」

和「ね、ふざけないで真面目に聞いてくれる?」

雅「うん、何?」

和「実は俺ね…あの時意識を失ってただろ。
  でさ、気が付いたらホテルのベッドに
  まっぱで寝てたんだ…」

雅「ええっ?何で?」

和「わっかんないの。でね、その隣に
  あの人も裸で寝てて、
  俺と手とか繋いでたんだ。
  俺さ、あなたに怪我してたかどうか
  何度か確かめたでしょ?
  あの時、俺目が覚めてびっくりして
  慌ててあなたに電話したんだけど
  その後鏡で確認したけど
  傷ひとつ負ってなくてさ。
  あの人に、何で裸なんだって
  問い詰めたんだけど、
  真面目に答えてくんなくて…
  怪我は治しといたとか
  自分には特殊な能力があるとか
  訳の分かんない事言ってて…」

雅「そ、そんなことが有ったんだ?
  でもさ、ニノは確かにあの時
  流血するほどの怪我を負ってたのは
  俺もこの目で見たからね。
  本当に怪我を治してくれたんじゃないの?」

和「だけど、それなら何で裸?
  俺だけならまだしも、
  あの人もまっぱだよ?」

雅「うん、それは謎だよね?(笑)
  だけど、世の中にはサイババみたいな
  超能力者もいるかも知れないよ。」

和「今、トイレでばったり顔合わせたんだけど
  あの人、俺と目が合ったのに
  シカトしたんだよ。それってさ、
  絶対なんか疾しい事が有るって
  証拠だよね?」

雅「そうかなぁ…
  ニノって分かんなかったんじゃない?」

和「あんな至近距離で?有り得ないよ。」

雅「待ってて、俺ちょっと
  挨拶してくるから…」

和「えっ?や、やめてよ。
  本当にソッチの人だったら
  俺、もう関わりたくないよ。」

雅「何言ってるの?
  あの人に助けて貰わなかったら
  機内に取り残されて、どうなってたか
  分かんないんだよ?
  身体目当てに、あの状況で
  人なんて助けたりしないでしょ?」

和「で、でも…」

雅「ハッキリさせた方がいいよ。
  もし、悪戯されてたら、されてたで
  責任取って貰えば?
  俺、とにかく挨拶だけしてくるよ。」

和「ちょっ、相葉さん…」

責任って…
女ならその言葉通用するだろうけど
男が悪戯されて責任って…
全く意味不明。

相葉さんは俺が止めるのも聞かずに
大野さんのテーブル席に
何の迷いもなく、つかつかと歩いてった。


雅「こんにちは…あの、ちょっとお邪魔します。
  俺の事覚えてます?」

智「ん?あっ、君は確か…」

雅「その節は僕の友達が色々お世話になりました。」

翔「智君、こちらは?」

智「あ~、ほら、こないだの事故の話
  聞かせてたでしょ?」

翔「はいはい、飛行機不時着のね?」

雅「友達のニノが怪我してて動けなくなって
  助けて貰ったんですよ。」

翔「またあなた人を助けたの?」

雅「また…ですか?」

翔「僕もこの人に以前助けて貰ったんですよ。」

雅「へえ…」

智「いいよ…ここでそんな話…」

翔「この人、人は助けるけど
  その話するの苦手なんですよ。」

雅「え?どうして?だって人を助けるって
  スーパーヒーロー的な存在なのに…」

智「いいよ…本当にもう、その話は…
  彼も、多分あの日の事は
  忘れたいだろうしさ…
  おいら、二度と関わんないから
  心配しないでって、彼に伝えてくれる?」

雅「それは逆にマズイですよ。」

智「なんで?」

雅「だって、ちゃんと説明してあげないと
  アイツ、あなたに犯されたんじゃないかって
  勘違いし続けることになる。」

智「えっ…そうなの…?」



大野さんは、困った顔して
席を立ち上がると
1人でカレーを食べてる俺の席に
近付いて来た。

智「ちょっといい?」

そう言って俺の目の前に腰を降ろした。

和「えっ…」

智「携帯、貸して?」

和「なっ、何で?」

智「いいから…」

俺は大野さんに言われるままに
テーブルの上に置いてたスマホを
取って差し出した。

智「はい、俺の番号入れといたから。」

和「え?あ、あの…」

智「時間が空いてる時、何時でも電話して。
  こないだの事、ちゃんと説明するから。」

雅「だって…良かったね。ニノ。」

智「それじゃ、またね…」

相葉さんのお節介…
心の中で俺はそう叫んだ。

雅「あの人と同席の人も
  あの智って人に助けられた事
  有るんだって言ってたよ。」

和「へ、へえ…一体、あなた何て言ったの?」

雅「ちゃんと説明してあげないと
  勘違いされたままですよって(笑)」

和「だから、番号教えに来たんだ?」

雅「あの人、多分凄くシャイなんだよ。
  人の命を助けても、恩着せがましく
  しないところが、真のヒーローだよね。
  でも、特殊な力って何だろうね?
  そこが凄く気になるよねぇ。
  その話が聞けたら、俺にも教えてよ。」

和「う、うん…」


シャイねぇ…。
この間はそうは見えなかったけど。
だけど、確かにこのままじゃ
謎が多すぎて、
何かスッキリはしないのは確か。

このまま関わっていいものか
悪いものかも分からないけど
あの日、何が起きてああいう事になったのか?
それは知る権利が有るかも。

それから食事を済ませ
大野さん達より後に会計に向かったら
既に、支払いは大野さんが
纏めて精算してくれてる事を
店員から聞かされ、
ビックリして相葉さんと
お互いの顔を見合わせた。






続く
  

  



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