今日ご紹介するのはジュラシックパークやスフィアの原作者として有名なマイクル・クライントンの出世作『アンドロメダ病原体』です。この本の日本での初版は1976年(現地では1969年に出版)。そして言葉遣い等を修正した新装版が再出版されたのが2012年です。

名前からも予想できる通り、人類を脅かす病原体に対してどうこうする物語です(てか、原題のstrainもそうですが、病原体というのは一種のネタ晴らしですねぇ)。個人的にはウィルスやバクテリアをはじめとしたいわゆる感染パニック的なものを題材にしたものは好きでよく読みます。

で、この本もそういう小説を探しているときに良く名前をみかけたのですが、あまりにも古い作品であることや書店で見かけなかったため、購入には至りませんでした。。

今回アマゾンで他の本を探しているときに発見して、ついでに購入しちゃいました><

では以下、小説をご紹介していきます。


アンドロメダ病原体〔新装版〕
マイクル クライトン
早川書房
2014-09-30

■ストーリー


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(ピードモントの街は48人規模程度の街なのでもう少し小さいんでしょうけどねぇ。。。pexelsより引用(リンク))

軍の人工衛星がアリゾナ州の辺境にある町ピードモントに落ちた。軍は秘密裏に人工衛星を回収しようと街に人員を派遣するが、隊員が発見したのは静まり返る街並みと路上に転がる数々の死体。隊員はすぐさまその出来事を報告。司令部も速やかに事態の掌握の為にある地下施設に関係者を集めた。

各専門家が状況把握に努めようとするが、解決の糸口はなかなかつかめない。圧倒的な破壊力をもつ病原体に対して速やかに解決策を提示できるか、人類の命運をかけた戦いが地下施設で静かに始まる。


■感想

(ネタバレも含まれてますのでご注意を~)

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(地下施設の研究スペースのイメージ、pexelsより引用(リンク))

SF作品は科学の発展と共にどうして色褪せるイメージがありますが、この作品は全くそんなことありませんでした。1ページ1ページ進むほどに先が気になりました。

マイクル・クライントンは当時実行されていたアポロ計画の検疫手順の妥当性について疑問を抱き、本書を書いたとのこと。それは宇宙からの侵略者がいわゆる灰色のグレイの宇宙人だけではなく、極小の生命体でそれだけでも十分に脅威となりうるということを広く知らしめたと思います。宇宙戦争やインディペンデンスデイのような派手さはなくとも確実に人類を絶滅に追い込む可能性があるということを想像するとぞっとします。

そして、本書の舞台となっている軍の地下研究施設は非常に興味深かったです(この部分は過去の映画化作品でも特に丁寧に描かれている気がします。)。何層にも区分けされていて各々厳重な密閉空間になっています。ジャンルは相当違いますが、これを読みながら一番最初に想像したのが映画『バイオハザード』ででてくるラクーンシティの研究施設でした。それらがすでに50年も前に描かれていたというのは非常に驚きでした。そしていざとなったときの隔離手順の厳格さはさらに上に行くもので読んでてハラハラドキドキさせられました。

ストーリーは小説の冒頭に書かれている通り、アンドロメダ病原体に関する出来事を世間へ告発するていをとっています。もちろん登場人物の感情も克明に描かれているのですが、一般小説よりも事実を淡々と描いています。ここにこの小説のとっつきにくさがありますが、それを乗り越えることができれば非常に楽しめる小説だと思います。

何よりもマイクル・クライトンの医学的バックグラウンドで書かれる未知の病原体は非常にリアリティがありますし、その病原体の活動特徴や対処法の特定までの過程は非常にスリリングです。

ということで未だに色褪せない本書、年末年始に読んでみるのも良いのではないでしょうか。

(おすすめな層)
・パンデミック・感染ものが好きな方
・ウェストワールドやER等のマイケルクライトン作品になじみのある人


(おすすめしない層)
・登場人物により感情移入したい方


■雑な閑話休題



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(イメージ、pexelsより引用(リンク))

アンドロメダ病原体のwikiページに飛ぶとすぐにでてくるのが小松左京氏の小説『復活の日』との関係です。正直、『復活の日』を読んでないので何とも言えませんが、経緯をざっと読むとそう主張したくなるのも頷けます(復活の日を今後読んで改めて類似性について確認したいと思います)。

ただ上でも触れましたが、著者自身は当時進展していたアポロ計画の検疫手順から発想を得たものとインタビューで答えていますし、私も本書しか読んでいませんが、その主張は十分妥当なんじゃないかと思います。

いずれにせよマイクル・クライントンならではの医学的バックグラウンドとエンターテイメント小説家の才能が如何なく発揮された作品であることには間違いないように思えます。

ちなみに本作とは関係ありませんが、同じマイクルクライトン作という意味では現在『ウェストワールド』がHulu(リンク)で視聴可能です。こちらはアンドロイドたちが配置された西部劇のテーマパークが舞台で、人間たちが普段押さえている欲望を発散する場として活用されています。このテーマパークで起こる事件は本当に見ごたえがあって面白いです。もし本書が面白いと思えたならぜひご覧になってみてください。また、本書が面白いと思えなかった人もそちらのほうはさらにエンターテイメント性があるので面白いと感じるかもしれませんよ。

ウェストワールド予告



最後に71年、08年に各々映画化された本作の予告映像がありましたのでしたにつけておきます。71年のものは年月が経ってしまいSFとして見づらいものがありそうですが、08年版は見ごたえありそうですよね。ただ評判としては71年版のほうが高いようです。。。

1971年版アンドロメダ病原体


2008年版アンドロメダ病原体




そして、twitter上で悩んだマイケルorマイクルについて、wikiを読んでいたら早川書房が諸茶名の表音をマイクルにしたことで他社も表記を倣っているとのこと。なるほど~。さすが翻訳本老舗の早川書房、影響力がすごいですね。

ということで今日はここまで。最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。


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