おしんこちゃんの学級日誌~聖山学園のある日 部パン編⑨ | 想像の箱庭‐SHU_ZENの書き溜め小説

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全部まとめてフィクション、同じ世界観のファンタジー小説です!
毎週、週末にドカン!と更新しています。

本編が書きあがるまで息抜きの不定期連載番外編、
「おしんこちゃんの学級日誌」

あらすじ …… 聖山学園に編入し、日々を頑張る「おしんこちゃん」こと橘真子。
彼女は担任の鶴岡先生のお手伝いとして部活紹介のパンフレット作りをしていたのだが……
彼の発案でいくつかの部活動に仮入部し、橘がその入部体験を身を削って記載することに。
そんな彼女が足を踏み入れた部活動3つ目。
それは「オカルト研究部」と同室で活動している「闇鍋同好会」
しかも入ってみるとそこは隠れた名店的な居酒屋状態。中にはグチってる植苗くんや相槌打ってる佐竹くんの姿も……っていやいや。
お前らオッサンかよ!
炭酸ジュースで居酒屋感出すなよ、ここ教室であっておでん屋台じゃねえんだよっ。


―――――――――――――――――




「あと入ってる、のは……『調理済みの玉こんにゃく』、と、『パイナップル』……『カレーパン』……」
「カレーパン!?」


誰だよ入れたの!ってあ、本当だ。
ブヨブヨしたパンが浮いてる!


「意外と、美味。……焼きカレーパンだから、思ったよりヘルシーな……」
ヘルシーな?
「……カレー鍋……」
もはやカレー鍋じゃん


……ちぎって入れたらそりゃあカレーは鍋に混ざるってもんですよね黒間さん。
ただのカレー風味のパン粥だよねこれ?


「ブリ、パイナップルは味が、負けてる、残念。……出なおせ小童どもよ……」
「ボソッと辛辣!」


黒間さんはゆっくりと首を倒した。
人形じみた整い方の、きょろりとした目の美人が首をかしげる。
……怖い。


「っていうか、いいの黒間さん?オカ研の活動が微塵も見当たらないように見えるんだけど」
「……それは」


存在が既にオカルトじみているにせよ、このままでは黒間さんはオカ研女子を名乗れなくなってしまうに違いない。
これじゃあただの大鍋の主だ。


「……大丈夫……さっき、おもむろに邪神召喚の儀を、執り行ったから
「おもむろに何してるの!?」


おもむろに何を呼び出そうとしたのこの部屋に!?


「その後は、みんなで……楽しくこっくりさんをして……」
「いやいやいや」
「それから……アルコールランプ、スルメ、とろろ昆布を中心に取り囲んで……WAになっておどろうマイムマイムコサックダンスを踊って、オカ研は解散した……」
怖いよ!!?


それ最早なんの儀式かわかったもんじゃないんだけど!?


「ちなみに見覚えのない生徒が1人混じってた」
それ邪神じゃない!?
「……その後、闇鍋が始また、です」
「なんかこの部屋もういたくないんだけど」


ああ、ようやくオカルトの恐ろしさがわかったような気がした。
これは確かに怖い、主に黒間さんが。


「うおおおお!!?」
「どうした佐竹くん!?」


悲鳴が聞こえて私はまた鍋を振り返った。


「……」
「……ああ」


……ああ、鍋が。


鍋が、ファイヤーしてる……


煌々と照らされる皆の顔。中心にはまるでオリンピック聖火のごとく燃え上がる鍋。
そういや今ちょうど冬季オリンピック……いや、何でもない。


「……佐竹くん、何か入れた?」


私と黒間さん、植苗くんと佐竹くん以外の人間は全て、空気を読んだように粛々と退散していく。……おい、誰か。なんとかしなさいよ。出火してるんだよこれ?


「……すまん、実は、闇鍋に行くってったら時永先生が笑ってもってきてくれたボトルの中身を……」
「ちなみになんと言われて持たされたの?」
「……」
「……その」
「うん」
「……『美酒鍋って美味しいよね!料理ならセーフでしょ?』って」


アウトだよこの野郎!!
未成年者にお酒持たせてるんじゃありません!


「なんだあの人!」
「……時永先生なら許す」
「いや許すな植苗くん」


しかも火が燃え移ってこんだけファイヤーするとかどんな度数なの!?
……っていうかまず水かけたら消えるかなこれ、消えるかなぁ!?


そう思って内心パニクッていた、次の瞬間。

――バタン!!


「!?」
「……」


引き戸が開いた。
廊下から入ってきたのは……ガスマスクをした、峰不二子ちゃん的な超絶ボディの美女(?)だった。


「……フ…」


火の大きさを確認した美女は黒間さんを一瞥した。黒間さんは神妙な顔で頷く。


「伊藤先生、ご覧の通り……エマージェンシーです」
「……」


プシュウゥゥーーーー!!

……間髪入れず、消火器の泡が撒き散らされた。


「……わぁ」
「……お疲れ様です伊藤先生」

「……」


ピシャン!!

火が収まったのを見た途端、古文を普段淡々と教えている伊藤先生は、踵を返し颯爽と去っていった。



「……橘」
「……何」
「……あれが噂のガスマスク伊藤だ」
「……ああ、植苗くんが言ってたやつ


……うん。
闇鍋も、やっぱり怖い。

そう思いつつ、私はまず泡だらけの鍋を持ち上げた。もうこれじゃあ食べれるはずもない。
そう思っていると。


「……黒間さん、鍋の下から出てきたこの魔法陣何?」
邪神召喚
「消そうか!」



【闇鍋同好会入部体験記:……えっと、スリリングな経験がしたいなら入ると吉です。私は死にたくないので絶対入りませんが!絶対入りたくありませんが!!以上です!現場からお伝えしました!!現場からお伝えしました!!!】


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※伊藤先生は普段職員室待機ですが、いきなり「何か」を察するようで、前触れなくガスマスクをかぶり全力疾走するド変人として一目置かれています。
のちに××でえらい目にあう犬飼先生は「動物的勘だけでいうなら別にあっちをチョイスしてもよかったんじゃねえの?」と若干失礼な発言をぶちかましたとか。

そんな伊藤先生が追加された当おしんこちゃんシリーズのキャラクター紹介はこちらから!
前作「××」から引き継いでいる学校の設定等はこちら→聖山学園

このお話は連載終了した「××」と連載中の「コマ割」両方の前日譚としても楽しめるお話となっています。
興味のある方はぜひ、今までのお話もチェックしてみてくださいね↓
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