※このイラストは
MARRISA様から頂きました。
無断転載はおやめください。
「母から、逃げてきました。」
「お母さんから?」
総司の問いに、アメリアは静かに頷いた。
「母はいつもわたしに冷たくて・・そんな母の態度に、わたしは耐えられなくなって母から逃げたんです。」
アメリアはそう言ってしゃくりあげながら、首から提げているロケットを握り締めた。
「それは?」
「これは、母がわたしの誕生日にくれた物です。」
「ロケットの中を見せてくれないかな?少しだけでいいから。」
「解りました。」
アメリアはロケットを首から外すと、中に入っている写真を総司に見せた。
そこには歳三と瓜二つの顔をしている女性と、彼女の隣には一人の男性が写っていたが、顔の部分が焼き焦げており、誰なのか解らなかった。
「ねぇ、この人が君のお母さんなの?」
「はい。母はわたしを未婚で産みました。父の顔は、知らないんです。」
「そう・・」
(何だか、この人土方さんに似ているような気がする・・)
「ソウジさん?」
「中を見せてくれて有難う。ねぇアメリアちゃん、もし君さえ良ければ、ここで暮らさない?君とわたしが会ったのも何かの縁だし・・」
「でも、あの方がどうお思いになられるのか・・わたし、さっきあの人に失礼な態度を取ってしまいましたし・・」
アメリアは不安げな表情を浮かべながら、チラリと歳三の方を見た。
「土方さん、この子行く場所がないみたいですよ。」
「それがどうした?若い娘を野宿させる気なんざさらさらねぇよ。」
「お世話になります。」
「アメリア、とか言ったな?ここで世話になる以上、俺達の足を引っ張るような真似はするな、解ったな?」
「はい!」
「土方さん、失礼いたします。」
副長室の襖がスッと開き、雪華が部屋に入って来た。
「ヴィッキー叔母様!」
アメリアは雪華の姿を見るなりそう叫ぶと、彼に抱きついた。
「あの、どちら様ですか?」
「ごめんなさい、人違いでした。余りにも貴方が叔母様と似ていらしたので、つい・・」
「まぁ、そうでしたか。わたしは雪華と申します。」
「アメリアです。こちらで暫く暮らすことになりましたので、どうぞ宜しくお願い致します。」
「こちらこそ。土方さん、島田さんから羊羹(ようかん)を頂きました。」
「わざわざ有難う。そこに置いておいてくれ。」
「解りました。」
雪華はそう言うと、歳三の前に羊羹を載せた皿を文机の上に置いた。
「アメリア、今後のお前の処遇についてだが、一度近藤さん達と話し合ってから明日決める事にした。お前は風呂に入って部屋で休め。雪華、アメリアを風呂まで案内してやれ。」
「わかりました。アメリアさん、わたしについて来てください。」
「はい。」
こうしてアメリアは、新選組に保護されることになった。
一方、アメーシア王国の首都・ラミアに建つ壮麗な宮殿の中にある謁見の間では、宝石を鏤(ちりば)め、銀糸で刺繍を施された漆黒のドレスを纏った一人の女が眉間に皺を寄せながら玉座に座っていた。
彼女の前に跪いているのは、『緋鬼』の隊長・レオンだった。
「女王陛下に申し上げます。アメリア様をあと少しの所で取り逃がしました。」
「報告はそれだけなの?」
威厳に満ちた口調でそう言った女―アメーシア王国を統べる女王・エリーザベトは冷たく光る深紫の瞳をレオンに向けた。
「申し訳ありません。」
無言で玉座から立ち上がったエリーザベトは、持っていた扇でレオンの頬を容赦なく打った。
作品の目次は
コチラです。
にほんブログ村