「見つからなかった」

 

美佐おばさんが僕にきく。

 

「あれで見つかったら、奇跡ですから」

 

いつもの定食屋。

 

僕が京都から帰って来てから

 

月曜日ごとに同じような会話をしている。

 

あれからもうどのくらいたつのだろう。

 

美佐おばさんには夕子ちゃんの一件は話していない。

 

夕子ちゃんからの連絡もない。

 

あの時抱いた期待も薄れ

 

あきらめかけていた。

 

夕子ちゃんに連絡してみようと思っているのだけれど

 

連絡できずにいる。

 

時間が経過するだけ連絡しにくくなるのに。

 

熱いお茶をすすりながら

 

恨めしそうに携帯を眺める。

 

帰りかけたとき

 

定食屋に客が入ってきた。

 

そして、僕の向かいに誰かが座る。

 

地味な格好の眼鏡の女の子。

 

僕を見てにっこり笑う。

 

「元気でしたか」

 

夕子ちゃんは大きめの荷物を

 

隣の席に置く。

 

「なかなか場所がわからなくて」

 

「迷っちゃいました」

 

「電話してくれればよかったのに」

 

「そうですね」

 

夕子ちゃんはわけあってこっちに出てきたらしい。

 

この場所は祐子に教えてもらったということ。

 

「祐子さんは元気にやってます」

 

「あの事は気にしないでと言ってました」

 

祐子からの手紙を預かった。

 

僕は午後から休みを取って

 

夕子ちゃんを目的地まで案内した。