筑波実験植物園のキノコ展に行き、僕が菌オタクだった頃を思い出した話
縁あって、筑波実験植物園で行われていた「キノコ展」へ足を運ぶことができた。
キノコは菌類が集まってできている物体だが、これを見て改めて、菌類は不思議な存在だと思った。
筑波実験植物園とは
茨城県つくば市にある植物実験施設。ここでは日夜、植物の生態に関する研究が行われている。全国から集められた優秀な研究者によって、人類を救う有用植物やバイオテクノロジーに関する研究が日夜展開されている。施設は東京ドーム3個分の敷地を有し、熱帯・温帯などの気候区分や、植物の種類によっていくつかのゾーンに分けられている。
入場料がかかるものの*1、散歩するにはかなりいい場所だと思う。なお、季節によっては果実や食べられる植物もあるが、それらを食べることは禁止*2。
キノコというフシギナソンザイ
触るだけで命を落とす可能性のある超猛毒の「カエンタケ」と、ホルマリン漬けになっているキノコを除いて、全てのキノコを触ることができた。
まず目に入るのが、この失敗した抹茶パンケーキのような大きいキノコだった。インパクトが凄い。どうしてこんな形になるんだろう。
この黄色いものは粘菌で、これは他のキノコを餌として生きている。この粘菌がエサにたどり着くまで、数々の経路を張り巡らせているわけなのだが、近年、粘菌の経路決定過程が、最適効率の都市計画(特に鉄道の経路設計に関して)に応用できるのではないかという研究が行われている(「粘菌コンピュータ」)*3。
菌類の代謝を利用する
菌類はほんとうに不思議な存在だ。キノコは目に見えるからまだよいのだが、菌類はどこにでもいて、目に見えないものもいっぱいある。
生物は、「代謝」をおこなう。代謝とは、自ら摂取した物質を、違うものにして排出する機構のことだ。酒やチーズ、ヨーグルトから納豆キムチに至るまで、発酵食品は菌類の代謝を利用することで生産されている。
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昔、「もやしもん」というマンガがあり、夢中で読んだ。主人公は酒屋の次男で、なんと肉眼で菌の存在がわかる能力を持っている。彼が「某農大」(東京農大がモデルか?)に入学し発酵物研究室へ入り、そこで繰り広げられる物語だったのだが、このマンガを読んでから、菌類、および菌類や酵母の代謝による副生産物を人類が利用しているところの発酵物について、ものすごく興味を持ったことを鮮烈に覚えている。これを読んで、納豆や甘酒を自作しようと試み、ヨーグルトを作る機械まで買ってしまった...
人間一人がどれだけの菌持ってると思ってんだ!100兆だぞ!まっすぐ並べると地球5周だ。便所の菌なんてメじゃねェ!菌ってだけで悪だってんなら、人は菌袋だ、お前もだー!」
(『もやしもん』1巻)
「要は酵母のウンコなんスね酒って」「発酵に限ってはウンコではなく“生産物”と呼ぼう」
(同書)
スーパーで売っているヨーグルトにはヨーグルトの菌がいっぱいいるので、新鮮な牛乳と温度調節機能のある清潔なメカニズムにヨーグルトを少し投入すれば、家庭で簡単にヨーグルトが作れる。最初1リットルの牛乳でヨーグルトが出来たときはびっくりした。
自然界のほんとうに不思議な存在である菌類に、思いを馳せてみるのも一興かと思います。