ベーシックインカム(BI)は、財源をどうするのか、の具体案がなければ「絵に描いた餅」です。
いくつかの案が出ていますが、比較的最近に出てきた、原田泰「ベーシック・インカム」と拙著「ベーシック・インカムのある暮らし」が提示する財源案は、かなり具体性が高く、議論を一歩進めています。その二つの概略を紹介します。
原田案は、BIの目的を「貧困を解消する」こととし、実現可能性に絞ったきわめて現実的な案です。
・大人一人月7万円、20歳未満3万円、を全員に支給する。
・所得税30%を一律に課税する。
・したがって、すべての大人個人の年間所得は「自分の所得×0.7+84万円」になる。
・基礎控除、配偶者控除、扶養家族控除などほとんどの控除廃止。
・老齢基礎年金、子ども手当、雇用保険、生活保護費はBIで代替。
・実質的に所得保障の役割をしている農林水産費、商工費、公共事業費などをBIで代替する。
が、原田案の骨子です。
もっともっと、議論の対象になってよい案だと思います。
古山案は、新しいお金を、電子式減価マネー(e\)として創り出し、BIとして支給します。基本的に財源不要です。お金のあり方を根本的に変えます。
・電子式減価マネー(e\)は、形式的には銀行貸出として創り出され、すべての個人にBIとして支給される。
・e¥は、返済しなくてよいが、そのかわり時とともに自動減価する。
・e¥は、財源を必要としない自己循環型マネーである。ただし、数兆円程度の初期費用が必要。
・e¥は現在の普通のお金と交換可能である。ただし、交換手数料を払う。
・e¥は、発行量、減価率、普通のお金との交換手数料設定、貯水池的な債権の発行により、緻密なコントロールが可能である。
・e¥を責任あるお金とするためには、発行可能量は限られている。毎年40~50兆円程度は発行可能であるが、それ以上は、やってみないとわからない。
・それ以上のBI財源は、消費税の増税によってまかなう。
・減価マネーは、財布からつまみ出されるように使われるので、日常の売買のほとんどはe\に置き換わる。
・資本取引、土地の取引などは、普通のお金が使われる。
・減価マネーによる金融が自動発生する。これにより、経済全体がマイナス利子になっていく。
このような骨子です。
かなり緻密な設計が為されています。
急激に新規財源のBIを出すと、生産力増強が追いつかないことと、労働習慣の変化がついていけないので、BIは月額4万円から始めます。この段階では、電子式減価マネーだけでまかなえます。