リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第80回 河口堰と津波 南海トラフ大震災の後に!

2018-05-06 13:09:59 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

世界最大規模のオランダの河口堰がいよいよ開門されるという。ハーリングフリート河口堰はライン川に建設された長さ5キロの巨大な構造物だ。1971年から閉じられたが、底質の悪化などの環境問題からオランダ政府は2000年にゲートを開ける決定をした。その翌年、長良川漁協は組合長以下役員数名が、視察のため現地を訪ね、私も同行した。当初は05年から開ける予定だったが、計画は三度変更され、今年から部分的に開放することになった。関係者間の調整には時間を要し、莫大な補償費用を要したというが、海水を河口堰の上流へ入れる以外に、環境を回復する方法は無いという。費用と時間がかかろうとも自然を元に戻すというオランダの選択だ。

河口堰だがライン川と長良川ではその目的はかなり違っている。オランダの河口堰は高潮対策。幅56mもあり、陸地を守るため、高潮襲来時には巨大なゲートを下ろすことで防御する。

長良川河口堰の目的の一つは治水だが、堰自体が洪水を防ぐわけではない。洪水時水を流せるよう川底は7mまで掘ってあり、平時はゲートを閉めて潮が上流へ上るのを止めている。堰はそれ自体流れの障害となるから洪水の時には開けておく。台風時の高潮、津波の時にもゲートを開ける。

ゲートを開けるときに、トラブルはないのか。2008年6月29日長良川河口堰。出水で全開操作を行っている時、ゲート1門が途中で停止した。主モータが故障し、予備モータも動かなかった。水面上で止まったことから、大事にはいたらなかったが、隣のゲートの予備モータを使い、三時間二十分かけて下ろしたという(記者発表より)。

必ず起きる南海トラフ地震。二時間ほどで来襲する地震津波の際に、激震直後の河口堰のゲートは支障なく上がるのか。二重三重の安全装置があると説明されていた河口堰のゲートが、事故があったという事実は記憶しておきたい。

 

 

〇 関連ブログ

記者発表資料

https://blog.goo.ne.jp/niimuray/e/9d02d70d2046a9787ee457207fbd5b13

報道資料 よみうりweb

https://blog.goo.ne.jp/niimuray/e/79dea42142f65e5f4724be8a15fe1d99

岐阜県の危機対応

https://blog.goo.ne.jp/niimuray/e/e3ab873930ea410858f03ae84f576af1

 

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