今回は、現役外科医から学んだ、
『「~しなければ」から「~しよう」に思考を変えていくことで、本番でも精神的ゆとりを持って戦える』
必勝思考法をお伝えします。
さて、私は、18歳の時に『緊張性気胸』、21歳の時に『再発性自然気胸』&『肺梗塞(はいこうそく)』を起こし、過去、全身麻酔手術を2度経験しています。
そして、その両方の手術を担当したのが、今回紹介します、呼吸器外科医のG先生です。
G先生は、2度も私の手術を担当し、また、気さくな方ですので、私とG先生は、仲がいいんですね。
ですから私はある時、G先生に、ずっと前から気になっていたことを聞いてみました。
それは、
「外科の先生は、一体どのようなマインドで手術に臨んでいるのか?」
というものです。
これ、あなたも気になりませんか?
私、ずっと気になっていたんですよ!
外科の世界では、失敗は、即、人の死に繋がりますからね。
外科医は、そんな極限の世界に、何十年といるわけです。
通常の人では、おそらく、簡単にメンタルが持っていかれることでしょう。
通常の人と、外科医は何が違うのか?
そのことについて聞いてきました。
G先生はこう言います。
「いやね、市川君。この世界(=外科医の世界)は大変だよ。だから僕、自分の子供とかにも外科医薦めないもん。『なりたいんだったらなりなさい』レベル。だから、市川君の、『普通の人が、いきなり外科の世界に入ったら、簡単にメンタル持ってかれると思うんですけど』っていうのは、正しいよ。僕も日々、手術頑張っているけど、うまくなるのは手術の腕だけ。どれほど手術の数こなしても、精神的に強くなることはないよ。だから精神的強さを得るためには、手術の数をこなすことじゃなくて、手術の前の段階で、いかに精神的負担のかからない考え方ができるかどうかが大切なんだよ。じゃあ僕は、一体どのように考えて手術に臨んでいるのかというと、『患者さんと一緒に手術を乗り越えよう!』としているんだ。一方、『上手くやろう!』と考えると、ものすごく精神的に苦痛になるからね。この考え方はダメ。僕は、『患者さんと一緒に手術を乗り越えよう』という考え方で、日々手術をしているんだよ」
いかがでしょう?
G先生が、外科の世界で戦い続けられている理由。
それこそが、上のG先生の言葉である、
「患者さんと一緒に手術を乗り越えよう」
といった心構えなのです。
……そういえばこの言葉を聞いて思い出したのですが、私の手術前日、G先生は私に向かって笑顔で、
「じゃあ、明日はお互い頑張りましょうね (^^)」
と、何度もおっしゃっていました。
この、
「お互い頑張りましょうね (^^)」
という言葉は、先生の、
「患者さんと一緒に手術を乗り越えよう」
という心構えから自然と生まれてきたものなのでしょう。
このことに気付いた私は、
「あっ、繋がった!」
と嬉しくなったのを覚えています。
さて、話を戻します。
G先生の、
「『上手くやろう』とするのではなくて、『患者と一緒に手術を乗り越えよう』とすることが大切」
という言葉は、心理学の面においても、非常に効果的なことが分かります。
なぜなら、G先生の思考法は、
「『~しなければ』という義務思考から、『~しよう』という自主的思考に、うまくシフトチェンジされているから」
です。
G先生は私に、
「『上手くやろう』とすると、精神的に負荷がかかる」
とおっしゃったわけですから、おそらく、G先生は過去に一度は、「上手くやろう」と思ったことがあるのでしょう。
そうではないと、
「『上手くやろう』とすると、精神的に負荷がかかる」
ということが分からないわけですから。
しかしG先生は、早々に気付いたのでしょう。
『上手くやろう』思考では、精神的に長続きしないということを。
実はこの『上手くやろう』思考。
精神的負荷が大きいとされる、『義務思考』の一種なんですね。
義務思考とは、「~しなければならない」という、文字通り“義務”的な思考のことです。
そして、人間にとって、義務思考は苦痛です。
例えば、
「結婚した人と、今後もずっと一緒に生活しなければならない」
という義務思考では、結婚生活が苦痛になっちゃいますよね?
実は、『上手くやろう』という考えの背景には、『上手くやらなきゃいけない』という義務的な思考があります。
表向きは、「上手く“やろう”」ですから、義務的な思考ではないように見えますが、それでもこれは、義務思考です。
試しに想像してみて下さい。
あなたは、今から大勢の前でスピーチをします。
そんな状況のなか、あなたは自らにこう投げかけます。
「上手くやろう」と。
(リアルに想像するために、実際に声に出して言ってみて下さい。)
おそらく、そう自分に投げかけると、精神的に相当追い込まれると思います。
「『上手くやろう』ってことだから、途中で噛んじゃダメだよね。
話す内容も忘れちゃいけないし、みんなに、良い表情を向け続け“なければいけない”。
うわ~、大変だぞ~」
みたいになって、アワアワアワっとなってしまいますからね。
このような理由で、『上手くやろう』と考えることは、義務思考へと容易につながるわけですから、「義務思考に容易につながる→義務思考」と言っていいわけです。
もう一度書きますが、『上手くやろう(=義務)』思考は、人を精神的に追い詰めることになります。
そしてもちろん、外科医だって例外ではありません。
「上手くやらなきゃ!上手くやらなきゃ!」
という思いのもと、手術していては、ものすごく精神的負荷がかかるのでしょう。
なぜなら、「上手くやらなきゃ!」の背景には、恐怖が隠れているからです。
「俺は、上手くやらなきゃダメなんだ!(+_+)」
といった感じです。
恐怖によって駆り立てられながら、何十年にもわたり、手術し続ける。
これでは、どんな“神の手”を持つ外科医でも、精神的に参ってしまいます。
だからこそ、G先生は自らの経験の中で、自分の思考を、『上手くやろう』という義務思考から、『患者さんと一緒に手術を乗り越えよう』という自主的思考にシフトチェンジさせたのです。
自主的思考は、「~しよう・~したい」という、ある目標に向かって“自主的に・自分の意志で”動こうとする際に出てくる思考のことで、義務思考に比べて、ものすごく精神的負荷が少ない思考です。
例えば、
「結婚したことで、愛する人といつまでも一緒にいられる。
というよりも、ずっと一緒にいたいんだ」
という、自主的思考で結婚を考えるからこそ、結婚生活が楽しいものとなるのです。
そこに、精神的負荷は全くありません。
G先生は、おそらく試行錯誤したことでしょう。
「どうすれば、精神的負担を少なくした状態で、手術に臨めるのか?」と。
そうして行き着いた先が、この
「患者さんと一緒に手術を乗り越えよう」
つまり、
「自分は手術でどんなトラブルに巻き込まれても、それでも、患者さんと共に最後まで戦おう!」
という意思の表れである、自主的思考だったのです。
この思考法を駆使し、G先生は今日も極限状態の中で、戦っていることでしょう。
さぁ、いかがだったでしょうか?
以上が、“私が実際にG先生から聞いたお話&それの心理学的な分析”です。
今回紹介したG先生のお話は、私たちの生活にも応用できます。
重要な場面であれそうでない場面であれ、私たちが何か物事をやる時って、ついつい
「上手くやらなきゃ!」とか、
「今日中に、絶対これ終わらせなきゃ!」
とか、思ってしまいがちですよね。
ですが、上の義務思考は、この記事で説明した通り、精神的苦痛になってしまいます。
ですから、そうならないためにも、例えば、
「上手くやらなきゃ!」
↓
「ちょっとくらい失敗するかもしれないけど、でも、それでも自分なりにベストを尽くそう!」
だったり、
「今日中に、絶対これ終わらせなきゃ!」
↓
「私たちは、できることしかできない。
だから、今できることである、目の前の作業のみに集中していこう。
そうすればきっと、気付いた時には全部終わってるって」
というように、『~しなければならない』という義務思考から、『~したい・~しよう』という自主的思考にシフトチェンジさせればいいのです。
そして、うまくシフトチェンジさえできれば、義務思考による精神的苦痛から解放されるので、それはリラックスした状態を意味しますから、たとえここ一番の重要な場面だったとしても、いつも通りの、高いパフォーマンスを発揮できるようになるのです。
参考にしていただけたら幸いです (^^)
それでは、今回はこの辺りにさせていただきます。
以上、市川 諒でした。
ありがとうございました。
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