社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

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「ソーシャルワーカーと退院調整看護師間のコンフリクトに関する研究~退院支援担当者へのインタビュー調査から~」佐藤奈津子

2017-01-05 21:04:26 | 社会福祉学
『北星学園大学大学院論集』(2013)

 北海道内の医療機関にある退院支援部門に配置された看護師とソーシャルワーカーを対象に、インタビュー調査を通して、退院支援における2つの職種の実践の相違、コンフリクトの有無について、その要因と構造を明らかにしている。

引用
・(部内で決め事をするときに)看護職は、「患者に関わるものだから他の部署が協力してくれてもいいじゃない」という患者中心の考えを持っているが、対してSWは、患者の利益を尊重しつつも、部門間の業務管理の責任や全体のバランスを考えて発言する。
・「医療ニーズ」の高い患者は「生活ニーズ」も高まるという対象者のニーズの二重性により、一人の患者に対してSWと退院調整看護師が同時に関わるという方法が、退院支援システムにおいて位置づけられる必要があることを明らかにした。
・看護職がSWに期待する「社会資源・制度」や病院・施設に関する情報は、ソーシャルワーク展開に欠かせない知識ではあるが、ソーシャルワークの全てではない。(中略)また、SWも継続看護に理解を深めつつ、「医療ニーズ」の高い事例におけるソーシャルワークの必要性を言語化していく努力が求められるだろう。


 「ソーシャルワークの専門性=社会資源、制度の知識」というくだりは、私自身もソーシャルワーカーになりたての時に、そう勘違いしていた記憶がある。
そして、在宅医療の現場にソーシャルワーカーは必要か否かの議論の際には必ずと言っていいほど、「地域のことに詳しい看護職がいれば、ソーシャルワーカーは要らない」という意見があがる。知識はソーシャルワーカーでなくても、看護職でなくとも、習得することができる。専門性を活かすということは、その知識を要支援者にどのようにマッチングさせるのか。そして不足があった場合に、どのように公に働きかけていくのか、であると今は思う。
もちろん、「ソーシャルワーカーの専門性は社会資源、制度の知識を有する」だけではない。何を持っているのかではなく、どのように患者さん、家族をとらえ、組織をとらえ、社会をとらえるのかであると、本論文を通して、しみじみと考えさせられた。
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