私は普段から【言葉の持つ力】を意識するようにしている。「強いカードを持つ人」でも書いたが、言葉の意味と強弱を理解し、その人に合った強さの言葉を使うように心がけている。口から発した言葉は文章とは違って残らないものとされているが、決して一過性のものではないからだ。良い言葉は穏やかに浸透するが、悪い言葉は波紋となって広がる。時間が経つにつれて、心のトゲは杭に変わることもある。忘れられないというのは、そういうことだと思う。

私の中で、【取扱注意の言葉】がいくつかある。言わないようにしようと思うし、言われた時は無防備に受けとめるのではなく、自身の免疫を高めておこうと警戒している言葉だ。その一つが、これだ。

「子供を産んでないから。」

「子供を産んでない人には産んだ人の気持ちは分からない」という意味ではない。この「子供を産んでないから」というフレーズは、【慇懃無礼】に近しい意味で伝わる可能性が高いのだ。

耳にした限り、

「子供を産んでないから(ちっとも見た目が変わらないよね)」

「子供を産んでないから(体形を維持しているよね)」

「子供を産んでないから(イキイキしてるよね)」

このニュアンスとしては、【うらやましいと見せかけて実は全然うらやましく思っていない】と言ったところか。これを逆にしてみよう。「子供を産んだからずいぶん変わったよね」。誰も口には出さない。言いづらいのだ。

私はこの手の言葉を聞くたび、苦笑いする。

―これは危ない言葉だなぁ―

※番外編として、「生理が重くて」と嘆いた時の返答、「子供を産んでないからよ。一人産めば楽になるよ。」というものがある。

―「子供を産んでないから」と言う人。もちろん、悪意も悪気もなく、心からの言葉として使われることもあるだろう。このフレーズに限ったことではないが、言葉が相手にどう伝わるかを想像する、そのひと手間を惜しまない人でありたいと思う。