高校生と仕事=キャリア
高校卒業後の就職と職種をイメージして進路を選ぶ中学3年生は多くはありません。工業高校などの職業学科を選び、高卒で就職するイメージをはっきり持つ子ども以外は、普通科高校に進むのが一般的です。進学を選ばない生徒へのキャリア教育が課題となるなか、従来に加え新しい高校のあり方として平成6年に制度化されたのが「総合学科」です。
ご存知でしたか?「総合学科」
卒業後の進路・キャリアを生徒自身がより幅広く考えることができるよう、履修科目を選択できるのが特徴のひとつです。中でも「キャリア教育優良校」として文部科学大臣表彰を受けた宮城県石巻北高校の取組みをご紹介します。
石巻北高校、総合学科への転換
宮城県石巻市北部、北上川沿岸の田園地帯にある石巻北高校。平成27年には創立90周年事業が行われました。総合学科への改編は平成22年度。それ以前は普通科と農業科の併設校であり、募集定員割れ、地元志向の強い就職希望者への対応、地区唯一の農業科としての役割などさまざまな課題を抱えていたとのことです。
総合学科への改編後は特色ある教育、地域に開かれた学校づくりで多くの卒業生を地元に輩出しています。キャッチフレーズは「めざせ!地域のスペシャリスト!」。生徒たちを中心にした積極的な取組みを見てみましょう。
石巻北高校の学習
総合学科の特色は「系列」ごとの学習です。まず、1年次には全員が「産業社会と人間」を履修し、自分自身の進路についてじっくり考えます。そして2年次からはそれぞれが選択した食農・家庭・経情・教養・進学の5つの系列に分かれて学習を深めていきます。
交流ひろば販売所経営
「と・ら・ま・い」は北高生が校地内の店舗でオリジナル商品を販売する事業です。年間15日程度実施し、在校生が育てた農産物や製造した加工食品を販売、地域の方々の人気を博しています。
強みは各専門系列の連携。総合学科ならではの系列横断型の学びを通じ、生徒たちは事業運営に必要な知識や経験を習得しています。
・食農系列(野菜・草花の栽培、食品の加工)
・家庭系列(レシピ作り、試食会の企画実施、エコバッグ作製)
・経情系列(店の経営全般、経理・会計)
・教養系列(駐車場の整理、来場客の誘導)
・進学系列(「とらまい通信」の編集発行)
加えて地元企業・NPOと協力し、地元食材を生かした商品の開発から商品化・販売も行っています。企業や県の関係者を交えた発表会への参加は、生徒たちのコミュニケーション力・プレゼンテーション力を鍛えていることでしょう。
「関わる力」「伝える力」「創造する力」
こうした取組みを通じて育成したいのは3つの「力」。今後はさらに生徒の主体的活動を重視し、経営のリーダー育成へと発展させていきたいとのことです。
豊富なキャリア教育メニュー
その他にも、石巻北高校では外部講師を招いての各種講演会、他の高校との交流会、小学校との交流事業、インターンシップなどさまざまな取組みが行われています。
どんな高校生もいずれは社会人になる時が来ます。早い時期から社会との接点をもち、いろいろな経験にふれやすい「総合学科」。石巻北高校の取組みは魅力あるモデルケースといえるのではないでしょうか。