洋食好きの人を絶対連れて行きたいお店が、渋谷にあります。看板メニューはオムライス。「今まで食べたオムライスの中で一番うまい」。同行を頼んだ友人が、ひと口食べるなり発した言葉です。

 この友人のように洋食好きで、なかでもオムライスに目がない。そんな人にぜひおすすめしたいお店がここ『おまかせ亭』なのですが、この店を洋食屋さんとくくってしまっていいものか悩みます。

 なぜならオムライスだけでなく、正統派の洋食からサーモンの昆布〆など和テイストまで豊富なアラカルトも、お店のサービス精神とシェフの遊び心がたっぷり詰まったコースも、どれも絶品だからです。特に「おまかせコース」に至っては、何が運ばれてくるか直前までわからないドキドキ感まで楽しめます。

 一度味わったら何度も足を運びたくなる洋食店なんです。

ソースをかける前の状態。見てください、このとろふわ感!
ソースをかける前の状態。見てください、このとろふわ感!
シェフの山崎精一さん
シェフの山崎精一さん

 22年前、キッコーマン直営レストラン出身の4人が集ってはじめたこの店は、渋谷郵便局の裏手にあります。にぎやかな宮益坂を登り郵便局の先を左に折れて路地に入ると、いかにも洋食屋さんらしい看板が。その入口を地下へと降りると、アットホームな雰囲気の空間が広がっています。

 シェフの山崎精一さんが「4人揃って歳をとってきました」と言う通り、見事な連携を見せるスタッフ、近所の小さなお店のような親しみやすい接客、手頃な価格に油断(?)していると、料理を口に運んだときに驚くかもしれません。なぜなら、あまりに本格的だからです。

 山崎さんは、昭和天皇の晩餐会の料理も手掛けていた丸の内ホテルで料理人を務め、その後、キッコーマン直営の高級レストランで腕を振るってきました。フレンチをベースに、イタリアンや和食、エスニックまで、旬の食材を自在にアレンジします。たとえば3月のランチには韓国料理の「サムゲタン」まで登場するから驚きです。

「その季節においしい食材であること。数日前にご相談いただくこと。この2点が叶えば、たいていのお料理はお出しできますよ」と、サービス係の大澤昌吾さんは胸を張ります。

不動の人気メニュー、ふわふわの「オムレツライス」

 看板メニューである「オムレツライス」は、刻んだトマトと玉ねぎをバターで炒め、タイム、ローズマリー、チキンブイヨンで米を炊いています。脂っぽくなるのを避けるため、ご飯は炒めないのがポイント。いわばトマト味のピラフです。

 ほんのりオレンジのピラフの上に、生クリームの入ったふわふわの半熟オムレツをのせ、ナイフを入れると卵がとろりと流れ落ちてライスを包み込んでいきます。「オムライス」ではなくオムレツとしても本格的な「オムレツライス」がこだわりなのです。

 ランチの鉄板メニューであり、ディナーでも頼まない人のほうが珍しいくらい。「おまかせコース」「特別コース」にも含まれています。コースの場合は数人分を一皿で運び、テーブルでそれぞれの皿に分けてくれます。

 小鍋で提供されるトマトソースは、あまりのおいしさにどんどん追加でかけたくります。たっぷり入っているので最初は使いきれないと思うのですが、食べ終わる頃には鍋の底が見えているかも。

 このソースは、トマトケチャップにチキンブイヨン、バター、スパイスなどを加え、酸味を調節しながらマイルドに仕上げているそうです。食べ進む間に口の中で弾けるホールペッパーの香りがいいアクセント。

何が出るかはお楽しみ? まかせて美味しいコース料理

取材時のコースの肉料理。リブロースステーキはすべてのバランスが◎
取材時のコースの肉料理。リブロースステーキはすべてのバランスが◎

 看板メニューに心ひかれますが、コースのバリエーションも多彩です。スープと温野菜が中心の「ヘルシー野菜コース」、サラダ、スープに加えオムレツライスやオニオンカレーライスなど、定番4種から選べる「カジュアルコース」、フルコースの「スペシャルコース」と、お腹の減り具合や気分によって選べるコースが平均5コースほど。

 プラス1,000円で赤白ワインとソフトドリンクがフリードリンクになるコースもあり、絶大なコストパフォーマンスの良さ。スタッフにそう伝えると「我々も、ちょっとサービスしすぎかなと思いますが(笑)、お店をはじめた理由が、本当においしい本格的な洋食を、多くの人に身近に食べてほしい、という思いからなので」とのこと。

自家製パンの食べすぎにはくれぐれもご用心
自家製パンの食べすぎにはくれぐれもご用心

 さて、オムレツライスは食べたい。でも店名にもなっている「シェフのおまかせコース(5,000円)」も食べてみたい…というそこのあなた。迷うことはありません。おまかせにはオムレツライスも入っています。

 オードブルに始まり、魚、肉、サラダ、オムレツライス、デザート、コーヒーまで大満足のフルコース。ボリューム的にもサービスが良すぎる傾向があるので、チョット少なめ(4,500円)の設定があるのもうれしい。

 苦手なものなどを最初に伝え、あとは何が出るかお楽しみだからワクワク。日々、提供した料理を書き留めておき、同じ料理は極力出さないようアレンジを加えるシェフの手腕と気配りに、月に何度も訪れるファンも少なくないとか。確かに、回を重ねるごとに「今夜はどんな味を経験できるのだろう」と楽しみになります。

「おまかせコース」のオードブルの一品、ワカサギのフリット
「おまかせコース」のオードブルの一品、ワカサギのフリット

 取材時のオードブルは、ワカサギのフリットやローストポーク。絶妙に効いた酸味、エスニックな香りの風味づけ、つけあわせの卵サラダの優しい食感……一皿ごとにまったく違う味わいが口に広がります。

 注意すべきはアンチョビ入りの自家製パン。ひそかな人気パンで、ついつい食べすぎそうになりますが、ここで欲望のままおかわりすると、コースの最後には満腹でパンパンになっちゃいます。

サーモンのふき味噌のせ。確かな技術に基づいた自在なアレンジ力がリピーターを飽きさせない
サーモンのふき味噌のせ。確かな技術に基づいた自在なアレンジ力がリピーターを飽きさせない

 本日のスープをはさみ、次はサーモンのソテーが登場。上に乗っているのは、なんとふき味噌。鼻に抜ける日本の春の香りが、洋風コースに違和感なく溶け込みます。

 ヤーコンやタピオカ入りの多種野菜のサラダから、いよいよ肉料理へ。リブロースのステーキはとても柔らかく筋っぽさも脂っぽさもなし。それでいて適度な脂と肉の旨みに惚れ惚れする焼き加減。ついついワインが進み、ものすごい贅沢をしている気分になってきます。

ティラミス(手前)とチーズケーキ。最後に出されるデザートもたっぷりで、これを目当てに通う常連さんも
ティラミス(手前)とチーズケーキ。最後に出されるデザートもたっぷりで、これを目当てに通う常連さんも

 肉料理の後、コースで出される「オムレツライス」はちょっと少なめ。そうでないと到底食べきれません。さらに満腹感に満たされながらデザートを。2人で行けば2種類、大勢で行けば数種類のデザートが出されます。濃厚なデミタスコーヒーのカップが空になると、すかさず注いでくれるのがうれしい。

「これも人気だから食べてみて」と、緑色のグラニテを出してくれました。口にしてみると、香り高く、さっぱりおいしい。でもグリーンの正体が何だかわかりません。教えてもらった答えは大葉。言われてみればその通りなんですが、。食べている時は「大葉」が主張しすぎず、すごくセンスのいいデザートでした。

「次はいつ来よう」。口福感と満腹感の中で、ついついそんなふうに考えてしまう『おまかせ亭』。ぜひ絶品オムレツライスを食べに行ってみてください。

おまかせ亭

店名:おまかせ亭

住:東京都渋谷区渋谷1-9-5 高橋ビルB1
TEL:03-3409-7369
営:11:30~14:00(L.O.)
  17:00~21:00(L.O.)
休:日



(出典 news.nicovideo.jp)