王様は、岐伯に聞きました。
「それら九つの脈は、同じであれば、どんな脈でもいいのか?」
岐伯はこたえて言いました。
「いいえ、王様。
冬は、陰なので、沈細懸絶の脈、
夏は、陽なので、盛躁喘数の脈になります。」
王様は、顔をさわって、脈が打っている三つの所を見つけると、
その脈が打つ様子をくらべてみました。
しばらくそうした後、岐伯に聞きました。
「今、上部の天地人の脈を見たが、
三つとも同じだな。
しかし、ひとつの体なのだから、
同じように脈打つのは、当たり前ではないのか?」
岐伯はこたえて言いました。
「はい、王様。
健康であれば、脈は同じです。
しかし、
一つがずれれば、病であり、
ふたつがずれれば、病がひどくなっており、
みっつがずれれば、病で死にそうになっており、
九の脈が、バラバラであれば、死にます。」
「脈がずれる、というのは、どういうことだ?」
「九つの脈を見て、
ひとつだけ小さい、または
ひとつだけ大きい、または
ひとつだけ早い、または
ひとつだけ遅い、または
ひとつだけ熱がある、または
ひとつだけ寒である、または
ひとつだけ落ち込んでいる、ことです。
つまり、ずれるとは、
九候が、調子を一緒に合わせることが、
出来ていないのです。」