岐伯は続けて言いました。
「月の動きの法則には、大の月と、小の月があり、(十三月の謎8)
日の出から日の入りまでの時間にも、長い日と短い日があります。
このように、
天と地がなす陰陽の移り変わりはたくさんありますが、
人は、そのすべてに順応することのできます。」
王様は、人と世界のつながりの話を思い出しました。
天と同じように、三百六十五の節目があること、(十三月の謎16)
地と同じように、川や海があること、(三陰三陽の川7)
人は、たしかに、天と地とつながっています。
「なるほど、では人は、
生まれた時から、陰陽の法則を知っているのだな。」
岐伯はこたえて言いました。
「いいえ、生まれた時から体はありますが、
陰陽については、知らなければ、分かりません。
しかし、全ての物事を見つめて、その真理を知れば、
人は、天子となります。」
王様は、おどろいて言いました。
「天子とは、歴史に出て来るあの偉大な王のことか!
私は今の時代の王であるが、
どうすれば、あの偉大な王のようになれるのか、ぜひ知りたいぞ。」
岐伯はこたえて言いました。
「王様は、天に選ばれた天子であられますので、
すでに立派な王様でございます。
これは、多くの人々のことでありますが、お聞きください。
季節によって変わる八つの風の動きを心得ている人は、(邪のある所12)
五行の剋にもびくともせず、安定して対応できます。
虚と実の法則をよく知っていて、次に起こることが分かる人は、
自分の考えに自信をもって行動することが出来ます。
十二節の真理の法則を知っている人は、
どんな知恵がすぐれた人にでも、だまされたり、あざむかれたりしません。
こうして、天と地の法則に応じて行動を合わせる人が生きる道には、
恐ろしい妖怪や、まどわせる怪物は現れません。
この人の、まわりの人々へ影響をあたえる力はとても強く、
人々は、まるで影のようにぴったりと、離れることなく付き従います。」
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※天子
昔は、天の帝(神様)がもっとも徳がある人を選んで天の息子とし、
選ばれた人は、王となって天の命を受けて、国を治めました。
治めているところを、天下、というのも、これからきています。