重ねて言うがこれは『フィクション』だ。現実であるはずがない…。例えその全てが存在しているとしても…。

 

 

【…続き…】

 

だが…、数週間後…、下田から連絡があった。

 

「おい…。暇か…。」

「おう…。どうした…。」

「廃村で写真撮ったん覚えてるか…?」

…写真…?

「そんなん撮ったっけ?」

「あの『面』の…」

「ああ…!撮ってたな…。唯一の物的証拠やな…。」

「いや…それが…。」

下田の様子がおかしい…。

「…なんか…写ってた…?」

「…うん…やばい…。どうしよ…。見るか?」

「とりあえず来い。」

と言って電話を切り、すぐになっちゃんに連絡を取り、要件を伝え、彼もすぐに来る事となった。



「…おう…。」

とやって来た下田は明らかに元気が無い…。

…下田がこんなにやられるほどヤバいのか?

僕は背筋がゾクゾクし始めた…。

「あのさ…。」

控えめに下田が話し始める…。

「あれさ…。俺らはあれを人間やって結論付けたやん…?

「うん…。」

「ほんまにそうなんか?」

「は?何言ってんねん」

「いや…。あの人影とか、足跡とか…確かに人間っぽかったけど、全部…あの『面』に関係する『霊』やったりして…。」

と下田は力なく笑う…。

「まぁ…。そうかもな…。誰も触れられてないし…。」

となっちゃんが全く同意していないような言い方で賛同した…。



下田が無言で写真の入った現像屋の封筒を渡してきた…。

 

…軽い…

 

どうやら中には一枚だけ…つまりその写真しか入っていないようだ…。

なっちゃんが先に引ったくるようにそれを奪い…見て

「…げ…」

と息を飲んだまま絶句した。

僕は少し見たく無くなったが、好奇心が恐怖を越えてしまった…。

その写真には… あの『おたふく面』が写っていた。

しかし…あの時見た『面』とは明らかに表情は違っていた。

 

 

目は垂れ落ちて、墨汁が溢れているかのような真っ黒な口は耳まで裂け、笑っているように見えた…。

 

何よりも、面の目は、まるで何者かがそれを被っているように、もう一つ奥に目があった…。

 

こんな悪意のある笑顔を僕は見た事が無い…。

 

「…これ…、こんなんやったっけ…?」

 

皆、無言で首を振る…。



吐き戻しそうな程の不気味さと不快さ…人間には決して出来ない表情に対する恐怖…。

「俺…。これさ…。今日現像してさ…。捨てるんも怖くて…。どうしよ…。」

「…今から寺か神社に行こう…。」

「でも夜やし…。」

「じゃあ、封筒に写真とお金入れて、賽銭箱に入れとこう…。こんなもん部屋に置いたまま寝られへんやろ…。」

僕らは封筒にあるだけのお金を封筒に入れ、神社の賽銭箱に入れ…「お願いします」と一方的に頼んで逃げた…逃げたのだ…。

 

 

 

この時の神社が比較的、今の僕の塾の近くにある神社だった…。

 

あの写真がどうなったのかはわからない…。

 

 

だが…最近、僕は生徒から嫌な噂を聞いた…。 ある心霊スポットの話だ。

いつの頃からか、ある神社が『心霊スポット』と呼ばれるようになり、別名『人が死にに行く神社』と呼ばれるようになった。

 

何故かその神社には自殺志願者達が集まり、夜中に首を括る者は後を絶たず、酷いものになると夜中にお堂に忍び込み、火を放ちそのまま焼身自殺を図った者もいた。

 

上記は僕自身が調べて解った事実だ。

ここからは生徒たちから噂だ。だから事実かどうかわからない…。

 

『あの神社は神主に呪われている…』と。

 

昔、あの神社で神主がお堂の中で死んでいるのが発見された…。

 

夜中に神主が着るような装束を纏い、顔に面を被ったまま、お堂の中で亡くなっていたらしい…。

 

それは柱に首を括って…恐らく…柱に飾られているように…。

 

それ以来…何年にも渡って人が死にに来るようになった…。

 

それが伝説となり、『行ってはいけない神社…』と云う心霊スポットとして呼ばれるようになった…。

 

僕は知らなかったのだ。その神社の場所を正確に聞くまでは…。

 

僕は生徒から聞いたその神社が、あの時、例の写真を無理矢理奉納した神社と同一の物だと知ってゾッとした。



…だから調べたのだ…。

 

その最初の自殺…神主が亡くなったのはいつ頃だったのかを…。 

 

結果的にはっきりした事はわからなかったが、あの写真を奉納した時と一致しない事も無い…。

 

そしてもう一つ…。

 

僕らが大学生だったあの頃にその神社は『心霊スポット』等と呼ばれてはいなかったはずだ。

 

何故ならもしもそう呼ばれていたなら、あの頃の僕らが知らないわけがないから…。 

 

これは『作り話』だ。アップするかも迷った程のフィクションだ! 

 

そうでないなら罪悪感に押し潰されそうになる…。


その神主さんが亡くなったのも…、その先その神社が『心霊スポット』と呼ばれ、人が死にに行くようになったのも…、僕らがあの時、あの黒い『おたふく』の写真を賽銭箱に入れた…いわゆる…『霊障』のせいであるわけがない!





もしこの話がフィクションでないとするのなら…、


僕らが…人を…殺してしまった…事になる…のか…?