この小品は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。








腕にある少年は
目を閉じて
未だたゆたう


疑いもなく
自分のものだ


男は
そっと
寝台にある少年を
見詰める


「……海斗?」
求める甘い声に
囁く。


「ここにいる。」

目を閉じたまま
微笑みが
浮かぶ


胸が甘くうずく



オフィーリアは
呼んだ

あなた……

あなた……

あなた……



少年の日に注がれた
甘い呼び声が
消えていく



確かに
自分を呼ぶ甘い声に
ふと気づくと
頬が濡れていた


こんなにも
自分は
求めていたのか


こんなにも
自分は…………。



〝寂しがりの狼さん
あなた
ほんとに子どもね〟



迷いのない声が
ふわふわとした柔らかいものが
ふと甦り
男を包む。



〝愛してごらんなさい

こわくない
こわくないから〟




ニャー

足元にすり寄る温かいもの


クロが
ピョン

寝台に跳び上がる。


眠る少年の横で
欠伸をするクロだ。




「宿題か?」

ニャー
見上げる丸い目は
ふっ

逸らされ
少年と猫は丸くなる。


男はため息をつき、
警護に通じる回線を開いた。



「執務に入る。
西原を入れてくれ。」



画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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