私は家庭菜園をするのが趣味だったので
家にはガーデニング用の
ちょっとした農耕具がある。
抹殺に用意するものは
えの長い重厚なシャベルと
これまた、えが長く、先端が二つに
Yの字に分かれ、左右に鋭い歯の
ローラーがついている農耕具。
カントリーオヤジはアシの長女に
あれこれ指示を出す。
私、長女の彼氏、長男、次女の
ヘタレ組み4人は
後方からそれを息を呑んで見つめている。

まず第1段階として
長女がヤツの背後に静かにまわり
瞬時にYの字ローラーで頭を捕らえ、
固定する。
ヘビ狩りの達人達が使うのも
こういうYの字で奴らの頭を捕らえる。
この長女の役目が一番、慎重かつ緊張する。
瞬発力のあるヤツが動き出したら
危険だからだ。
長女が恐る恐る、物音たてず、忍び足で
慎重に背後から近づいて
ヤツの頭の固定に成功した。
そして、次の瞬間、
カントリーオヤジが
重厚なシャベルを何回も振り上げては
叩き斬る。
ヤツの首を落とすのだ。
これが南部では、主流の抹殺の仕方である。
この時に重要な注意があって
絶対にヤツの前には出てはいけない。
なぜなら、
カァーっと開いた口を持つ頭だけが
首を落とした勢いで、飛んでくる事があり
そのままガブリと噛み付かれ
毒牙にかかるのだ。
死してもなお、蛇の執念には恐怖だ。
日本では、蛇を殺すと祟りがあるなんて
言われているが、米国、特に南部では
そんな伝説は通用しない。

元海軍の元夫が渾身の力で
重厚なシャベルを何度か振り上げたのち
長く太い胴体を大きくクネらせながら
頭は完全に斬り離され、ヤツは絶命した。

同じヘビでも、無毒なヘビならば
ネズミ獲りだと人間達に感謝されるが
毒ヘビに生まれてくれば
忌み嫌われ、即座に抹殺される運命にある。
運命とは、皮肉なものだ。

ピリピリ緊張していた現場には
安堵の空気が流れ、和らいだ。
必殺!仕事人達は大仕事を終え
額の汗を拭う。
そして長女は、彼氏に言い放った。
「アンタ!!どこまでも、
頼りにならない情けない男ね!?」

かたや、カントリーオヤジの持つ猛毒は
猛毒のガラガラ蛇でさえも制して
窮地の家族を救ったのである。

長男は、頭のないガラガラヘビを
取り上げて、長さを確かめていた。
そして元夫に、ガラガラ音を出す末端を
斬り落としてもらい
音の出る仕組みを研究熱心に探っていた。

次はその亡骸をどう処分するか。。。
プラ袋に入れて、家の外に置いてある
デカイ、ドラム缶のようなゴミ箱に捨てる、
そういう誰かの案だったが
真夏のサンシャイン州では
すぐにそれは腐乱するだろう。

私は自然の大地へ還すように長男に言った。
すぐ近所に
市で指定された自然公園がある。
そこには
コヨーテや他の動物達が生息してるので
食物連鎖にもなり
ヤツの死も決して
無駄死にはならないだろうと思ったからだ。
今となっては
これが記憶に残る
最後の家族としての、貴重な思い出である。