健康のために厚生労働省では 「 野菜の1日の摂取量の目標を
350グラム 」 としているが、350グラムというのは、量が多すぎて
毎日摂取するには、なかなかに難しい目標値だ。
厚労省では緑黄色野菜120グラムと、それ以外の野菜230グラム
を摂ることを推奨している。
実は、この350グラムにはさしたる根拠( evidence )がないことは
よく知られている。
もともと、動物性蛋白質と脂質を豊富に摂取する習慣のある米国
には、400グラム程度の野菜を摂取するとバランスが取れるだろう
し、健康的だろうという研究がある。
それが発端で、我々日本人は、動物性蛋白質や脂質の摂取量が
米国より比較的少なく、毎日280グラム程度は野菜を摂取している
から、350グラムくらいが妥当ではなかろうか、ということになったと
いうことだ。
食の欧米化が進んでいると言わている我が国において、バランス
の取れるであろう、という推定量を推奨したために、いつの間にか
「 野菜を 350グラム摂れば健康になる 」
という神話が成立してしまったようだ。
教科書にも、350グラムという数値は、もちろん示されているし地域
栄養では、住民に積極的に野菜を摂取するように勧奨しなさい、と
記されている。
男女ともに平均寿命日本一はいうまでもなく長野県で、特に男性の
平均寿命は10年以上その座を譲ったことがない。
野菜摂取量は長野県の男性が、何と374グラムと、少し無理がある
やに思える厚労省の350グラムという目標値をも上回っている。
しかし、野菜摂取量日本一の長野県の男性は、平均寿命は日本一
長いのだが、健康寿命では6位に下がってしまう。
ところが、逆に野菜を最も摂取しない最下位の愛知県の男性の健康
寿命は日本一なのだ。
いつまでも元気で、農作業に従事し、野菜をたくさん摂取して長寿を
謳歌しているという、長野県の一般的イメージと、少し違うことが見え
てきそうだ。
野菜をたくさん摂取する長野県の人々は、健康のため、生や温野菜
で摂取する機会が多く、その際はやはり、いくら塩分少な目でも調味
料は利用する。
つまり野菜の摂取量が増えれば増える分だけ、塩分の摂取量が増
えてしまうのだ。
「 脳卒中で死なない町 」 「 サンキュー・グッバイと言って死ねる町 」
健康長寿の実現のために、1970年代から鎌田實医師を中心として、
展開した減塩運動が別の健康志向によって振り出しに戻りつつある。
健康長寿の秘訣は、
「適切な栄養摂取 」
「 程度な運動習慣 」
「 ストレスのない生活 」
これだけ交通機関が発達した現代、人々が歩くには、歩くことの必然
性や歩くことの楽しみが必要だと思う。
熊本県天草の、美味しい脂ののった魚を食べた高名な栄養学者が
「 だから熊本の人々の血中脂質が高いんだ 」
と 言ったと、地元の保健行政関係者から聞いた。
このような単一的、短絡的な発想から逃れて、もっと各種エビデンス
を集合させて健康を考える時期に来ている。
2017年、今年生まれた新生児の平均余命は100歳だという。