4/15 ( 日 )
福井県越前市に、「 猫寺 」 として全国に知られるお寺
「 御誕生寺 ( ごたんじょうじ )」 がある。
曹洞宗の禅寺で、御年91歳の板橋興宗住職が、2002年に
段ボールに入っていた捨て猫4匹を保護したところ、数十匹の
猫が集まるようになった。
現在も30匹近くの猫が自由気ままに過ごしている。
この冬、この 「 猫寺 」 に、なんと犬が仲間入りした。
「 猫寺 」 で有名な御誕生寺の犬・アンディー
北陸自動車道を、武生インターチェンジで下り、およそ10分。
坂道を上ったところに御誕生寺がある。
猫の姿が見えると、スピードを緩め、けがをさせないよう、慎重に
運転した。
仏像と仏像の間に猫が座っており、猫を描いた看板も掲げられている。
駐車場には全国各地のナンバーの観光バスや、乗用車。
愛知県から来た若い女性ツアー客に聞くと、
「 御誕生寺は福井観光の目玉 」
とのこと。
猫好きにとっては、外せない観光スポットだ。
境内では十数匹の猫が思い思いの場所で過ごしていた。
どこからか観光客の声が上がった。
「 あれ? 犬もいるよ!」
行儀よくお座りして、出迎えていた。
猪苗代昭順副住職によると、関西盲導犬協会から託されたそうだ。
アンディーは盲導犬に適していないと判断され、キャリアチェンジした。
昨年11月末から、ここ御誕生寺で 「 第二の犬生 」 を送っている。
アンディーは盲導犬として訓練を受けていたため人懐っこいが、
おとなしく、むやみに鳴かない。
近づくと、そーっと足元に寄ってきて、鼻を擦り付ける。
なでると、うれしそうに尻尾を振る。
跳び上がって喜んだり、急に駆け出したりしないので、子どもが
近づいても安心だ。
子ども時代に犬を飼っていた猪苗代副住職は、アンディーを
かわいがっており、アンディーも副住職が好きなのか、まとわり
ついている。
猫たちともうまくやっているようだ。
「 アンディーと猫の距離感はさまざまです。 擦り寄っていく猫も
いれば、遠くで見ているものもいます。 彼らは適度な距離を保ち、
うまく付き合って、仲良くやってくれています 」
猫を目当てに御誕生寺へ来た参拝客は、犬もいることに驚くが、
すぐにアンディーを気に入り、一緒に写真を撮ったり、遊んだり
している。 すっかり人気者だ。
アンディーが寺に仲間入りした頃、福井県内は豪雪に見舞われ、
寺周辺は多い時には150センチ近い積雪があった。
猫は寒そうに丸まっていたが、アンディーは元気に雪の中を
走り回っていたという。
御誕生寺では、SNSなどを活用して保護猫の飼い主を募っている。
年に2度、地元の動物愛護センターと連携して、猫の飼い主探しの
催しを開くと、「 お寺でもらった猫は縁起がよさそう 」 と、30匹の
子猫に対して譲渡希望が40人名乗りを上げて抽選となることもある。
「 えさや猫砂は、全国からのご寄付でまかなっています。
寄付をいただいた方で希望される方から、お名前と亡くなった愛猫
の名前を聞いて供養して差し上げます 」
猪苗代副住職は猫が寺にもたらす効果について語ってくれた。
「 境内で、のんびりと過ごされる方が少なくないでしょう。私たちは
皆さんに、お経を読んだり、仏教の教えを説いたりするわけでは
ないのです。 でも、癒しや救いを求めてこられた方が、リラックスして
帰って行かれるのを見ると、猫は仏教の教えそのもののような気が
します。 また、いつでも来てください 」
ゆったりした空間で、アンディーと猫たちはゆったりと過ごしている。
「 猫寺の犬 」 としてすっかり環境になじみ、幸せそうだ。
猫の楽園は、犬の 「 安住の地 」 でもあった。