なごやんのBCL史(70)電波戦争 | (新)なごやん

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名古屋からJリーグ アルビレックス新潟に熱い思いを送ります。旺盛な好奇心そのままに、アルビネタに留まらず、鉄道、芸術、SWL(短波・海外放送受信)、昆虫、等々、思いつくまま書いていきます。
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【背景】

 第二次世界大戦で敗戦国、"戦犯国"になったドイツは連合国のソ連邦、フランス、英国、米国の4か国によって分割統治されることになりました。

 北東部はソ連邦(後にドイツ民主共和国になる)、北西部は英国、南東の広大な部分は米国、南西部のフランス国境に沿った部分はフランスによって統治されました。


 南東部は統治国の米国の影響を強く受け、その傾向は今でも続いているようですが、その地域の大都市であるミュンヒェンには米国議会によって運営される放送局がありました。ドイツにある米国の放送といった感じです。


 ひとつはラジオ・リバティー(Radio Liberty,自由放送)、もうひとつはラジオ・フリー・ヨーロッパ(Radio Free Europe,自由欧州放送)です。

RL:自由放送;RFE:自由欧州放送


 まさにソ米の冷戦時代を反映した放送局であり、両局に共通するのは、ソ連邦構成諸共和国を含む東ヨーロッパ諸国に向けて、反共、反ソの宣伝放送を行うことでした。そして、場合によっては東ヨーロッパ諸国内部に混乱をもたらそうともしていました。

 その戦略に米国諜報機関のCIAが無関係であったとは考えにくいことです。


【ラジオ・リバティー(自由放送)】 

 この放送局からはソ連邦構成共和国の諸言語で放送されていました。すなわち、ロシア語だけでなく、アゼルバイジャン語、アルメニア語、ウクライナ語、エストニア語、グルジア語、タタール語、ベラルーシ語、ラトビア語、リトアニア語です。


 出力は大きく(250kW)、日本でも良好に受信できたのですが、放送開始とともに、恐らくはソ連邦のどこかからと思われるジャミング(妨害波)を受け(下図赤波線)、聴きづらくなりました。

 同時に利用している他の周波数に代え、時にはよく聴くことができました。

受信ログ


 ロシア語放送ではインターバルシグナルの後、「Говорит Радиостанция Свобода.(ローマ字転記:Govorit Radiostantsiya Svoboda.)」と続きました。

 内容はニュースや解説が主であるものの、音楽番組もありました。

 受信報告に対しては英語で書かれた受信証が送られてきました。

自由放送の受信証


【ラジオ・フリー・ヨーロッパ(自由欧州放送)】

 この放送はソ連邦構成共和国以外の東欧の国々に向けて、その国で使用されている言語で送信されていました。放送が始まるとジャミングは受けたものの、私の印象では上のラジオ・リバティーに対するものと比べれば強力ではありませんんでした。


 私が特によく聴くことができたのはマジャール語(ハンガリー語)放送でしたが、ポーランド語、ルーマニア語なども結構よく入りました。(SINPOコードのわかる方、55544は素晴らしいと思いませんか?)

受信ログ


 放送内容はラジオ・リバティーと類似していました。

 この放送局も、受信レポートに対しては英語で書かれた受信証を送ってくれました。

ラジオ・フリー・ヨーロッパの受信証


【これらの放送局のその後】

 両放送局は1975年に統合され、自由欧州放送/自由放送(Radio Free Europe/Radio Liberty)となりました。もともと同じ地域にあった放送局ですから、物理的な統合は難しくなかったと思います。


 そして、1991年、ソ連邦がなくなると、本部はチェコのプラハに移され、現在ではイラク、イラン、アフガニスタンなど、西アジアの国々に向けた情宣・攪乱放送を行っています。


 ホームページも持っていて、英語で見ることができます。


 「電波戦争」ということばがあります。

 戦時中、戦っている国同士が相手国、相手国民を撹乱する目的で自国を主張し相手国を非難するような放送を流すことですが、時には放送に対し同じ周波数で妨害波(ジャミング)をかぶせたりする行為も指します。妨害された側はそれを避けるため複数の周波数を使ったり、周波数を頻繁に変えたりするのです。


 「冷戦時代」にはそういった「電波戦争」が頻繁に行われていました。RLもRFEも、放送自体が戦いを挑むものでしたが、妨害波はそれに「応戦」するため発せられました。


 そんな時代の「ドイツにおける米国の放送」の話でした。


 次回はアジア、西アジアの予定です。


 これまでのBCL史はインデックスをご覧ください。


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