■逆流性食道炎とは

逆流性食道炎とは、消化液が食道内へ逆流することによる炎症の総称で、通常は内視鏡的に所見が明らかなものを示します。

内視鏡的に粘膜障害を認めなくても胃酸の逆流による症状がある人もおり、内視鏡的による炎症の所見が陽性なものと合わせて、胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;GERD)といいます。

上部消化管内視鏡検査でびらんや発赤などの粘膜障害(逆流性食道炎)を認めるものを内視鏡陽性GERD、粘膜障害を認めないものを内視鏡陰性GERD、または非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflux disease;NERD)と呼んでいます。

胃食道逆流症とは、胃液を中心とした胃内容物の食道への逆流により、逆流性食道炎などの身体的合併症や、胸焼けを中心とした逆流性関連症状により健康な生活を障害するものです。

胃食道逆流症の頻度は、世界各国で年々増加しており、日本でも上部消化管内視鏡検査を受けた15%に逆流性食道炎が認められます。また、週2回以上胸焼けを自覚する人は、人口の15%と推定されています。


■胃食道逆流症の症状

典型的な症状は、胸焼けや酸っぱいものが口まで上がってきてゲプッとなる呑酸(どんさん)。その他の症状として、嚥下困難や嚥下痛、咳、胸の不快感、胸痛などもあります。


■胃食道逆流症の検査

食道癌や胃癌などの悪性疾患の除外や逆流性食道炎の有無、また逆流性食道炎の重症度診断を行うため、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を行った方がいいでしょう。


逆流性食道炎の重症度分類(ロサンゼルス分類)

逆流性食道炎の分類についてはロサンゼルス分類がよく用いられています。
 

逆流性食道炎
 
2逆流性食道炎
<改訂ロサンゼルス分類>
  • Grade N:正常粘膜
  • Grade M:明らかな糜爛や潰瘍がなく、発赤だけを認めるもの
  • Grade A:粘膜障害が粘膜ひだに限局し、5mm以内のもの
  • Grade B:粘膜障害が粘膜ひだに限局し、5mm以上で相互に癒合しないもの
  • Grade C:複数の粘膜ひだにわたって癒合し、全周の75%を超えないもの
  • Grade D:全周の75%以上にまたがるもの



■胃食道逆流症の治療

胃食道逆流症の治療の基本は生活習慣の改善であり、その上でプロトンポンプ阻害薬(PPI)などの胃酸分泌抑制薬を使用します。

治療のゴールは、胸焼けなどの逆流関連症状の改善と逆流性食道炎の治癒、合併症の予防です。コントロールできない場合は外科的治療を考慮しますが、外科的治療を行うことは稀です。

・生活習慣の改善
食後横になったり、前かがみの仕事、ボディースーツやコルセットなどでお腹を締め付けたりすることは増悪因子の一つです。睡眠時は上半身挙上が勧められます。

メタボリックシンドロームとの関連も報告されている。過食、高脂肪食の摂取を避け、肥満には減量も必要となります。

血圧を下げる薬でカルシウム拮抗薬は、下部食道括約部(LES)圧を低下させて、胃食道逆流症の原因にもなるので、変更や中止することを検討することが必要かもしれません。

・薬物療法
プロトンポンプ阻害薬(PPI)が有効。PPIとして代表的なものの商品名は、パリエット、ネキシウム、タケプロン、オメプラールなどがあります。

・外科的治療
内科的薬物治療に抵抗する症例、長期の薬物治療を希望しない症例、PPIによるアレルギー・副作用などが生じる場合には外科的治療も考慮されます。