JalanSultanAhmadShah、通称「億万長者通り」は、名前のとおり太平洋戦争前、ペナンの大富豪たちの大邸宅が建ち並んだ通りです。
E&Oホテルからガーニードライブに続く海岸沿いの通りの両側には、20邸を超える大邸宅が建ち並んでいたそうですが、今も残るのは10邸ほどです。

海側の邸宅は、敷地も建物も大きいものが多いようですが、写真のものは陸側にあって、規模も小さく時代的にも新しいもの。
全くの個人住宅なので細かなことはわかりませんが、太平洋戦争前後の建設と思われます。
 
このころは、アールデコの時代は終わり、インターナショナル様式が一般化した時代。
ロケットが飛び、宇宙に関心が高まった時代でもあり、住宅にも未来趣味的な意匠が随所に取り入れられています。当時人気のSF番組「サンダーバード」や「キャプテン・スカーレット」などに出てきた住宅のようです。
 
アメリカ車の後部に「大きな羽」が生えていたのと同時代。
V字形の車寄せ、階段室の庇と連窓、1階・2階リビングの大きな窓と長い庇、幾何学模様の華奢なテラスの手すりなど、当時の人々が想像した「未来」のデザインが散りばめられています。陸屋根が定番のはずが切妻屋根なのは、スコールの多い気候への対応なのでしょう。

その後の実現した未来は、ご存知の通り。
省エネやバリアフリー、社会環境や家族構成の変化などもあって、このような開放的で明るい印象の住宅は一般化しませんでした。
 
太平洋戦争後、独立の混乱もあって経済が急速に衰退したペナン。
この時期の建築物が少ないですが、よく建設時の状態が保たれています。