第15回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール 1次予選 第3日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

アメリカのフォートワースで開催されている、第15回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。

5月27日は、1次予選の第3日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、これまでの記事はこちら。

 

1次予選 第1日

1次予選 第2日

 

 

 

Luigi Carroccia (Italy | Age 25)

 

GLUCK-SGAMBATI “Mélodie” from Orfeo ed Euridice
CHOPIN Polonaise-Fantaisie in A-flat Major, op. 61
SCRIABIN Sonata No. 3 in F-sharp Minor, op. 23
HAMELIN Toccata on “L’homme armé”

 

グルック/ズガンバーティの「オルフェオとエウリディーチェ」からのメロディ、大変美しい演奏。

音色に潤いがあり、メロディの歌わせ方のセンスも悪くない。

ショパンの幻想ポロネーズは、甘い音色とメロディの崩し方が特徴的(オペラ・アリア的と言ってもいいかもしれない)。

第1日の深見まどかのほうが、晩年のショパン特有の、決して甘ったるくない瞑想的な性質をより的確に表現しているように思われるが(造形感もよりしっかりしている)、これはこれで面白い。

スクリャービンのソナタ第3番は、第2日に同曲を弾いたGreweよりもペダルが深めで、多少の濁りは気にせず豊潤な響きを重視したロマン派的解釈。

彼の甘い音色や「崩し」は、初期スクリャービンのこの曲には比較的合っているように思う。

特に第3楽章は美しいし、第1、2、4楽章も崩し方がサマになっている。

全体的に、彼の持ち味は「甘美さ」であるように感じた。

 

 

Nikolay Khozyainov (Russia | Age 24)

 

HAYDN Sonata in D Major, Hob. XVI:33
CHOPIN Etude in C Major, op. 10, no. 1
RACHMANINOFF Étude-Tableau in C Minor, op. 39, no. 1
LISZT Après un lecture de Dante (Fantasia quasi sonata)
HAMELIN Toccata on “L’homme armé”

 

今回出場者の中で最も名の知れた、今さら説明不要の有名ピアニスト、ニコライ・ホジャイノフ。

ハイドンのソナタ第33番、さわやかな表情付けで、また覇気があり、良い。

ショパンのエチュードop.10-1は、2015年ショパンコンクールでも弾いた彼の得意曲。

チョ・ソンジンほどスムーズではないが、少しリヒテルを思わせるような、スラヴ風の重みのある左手オクターヴの打鍵が特徴で、スケールの大きさが感じられる。

ラフマニノフの「音の絵」op.39-1もトップスピードではないが、やはり重みのある打鍵が聴かれ、クライマックスでの分厚い和音の迫力は十分。

そんな中でもペダルを深くしすぎず、明瞭度を保っているのが個性として際立っている。

リストの「ダンテを読んで」でも、とりわけ力まずとも分厚い音が出るといった感じで、余裕が感じられる。

最後の和音のトレモロも、かなりの迫力。

全体に、指回りという意味では最高度とまでは言えないかもしれないが、それでも十分なテクニックはあり、充実した分厚い音、そして濃すぎない涼やかな抒情性が魅力である。

 

 

Nikita Abrosimov (Russia | Age 28)

 

RACHMANINOFF Variations on a Theme by Corelli, op. 42
HAMELIN Toccata on “L`homme armé”
STRAVINSKY Trois mouvements de Petrouchka

 

ラフマニノフのコレッリ変奏曲は、抒情性と迫力とのバランスの良い演奏のように思う(曲がコンクールにしては渋めなので、分かりにくい面もあるが)。

ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」を1次予選に持ってくるというのは、なかなかの度胸である。

それだけのことはあって、なかなかの躍動感。

やや力任せの感はあるし、ところどころアラもみられるが、コンクールでこれだけ弾けている同曲演奏を聴けることはめったにないように思う。

 

 

Georgy Tchaidze (Russia | Age 29)

 

SCARLATTI Sonata in D Minor, K. 77
BEETHOVEN Sonata No. 31 in A-flat Major, op. 110
HAMELIN Toccata on “L’homme armé”
RACHMANINOFF Étude-tableau in C Minor, op. 33, no. 3
RACHMANINOFF Étude-tableau in C-sharp Minor, op. 33, no. 9

 

スカルラッティ、なかなかの味わい。

ベートーヴェンのソナタ第31番も悪くない。

ラフマニノフの「音の絵」からの2曲も、力強い演奏。

 

 

Kenneth Broberg (United States | Age 23)

 

FRANCK-BAUER Prélude, Fugue et Variation, op. 18
HAMELIN Toccata on “L’homme armé”
BACH Toccata in C Minor, BWV 911
BARBER Sonata for Piano, op. 26

 

フランク/バウアーの「前奏曲、フーガと変奏曲」、しっとりして美しい演奏。

バッハのトッカータも悪くない(やや角ばっているような印象を受ける箇所もあるが)。

バーバーも、第2日のBartlettほどの安定感はないかもしれないが、十分によく弾けている。

 

 

Sun-A Park (United States | Age 29)

 

BACH Capriccio in B-flat Major, BWV 992 (“On the departure of a beloved brother”)
HAMELIN Toccata on “L’homme armé”
SCHUMANN Humoreske in B-flat Major, op. 20

 

バッハのカプリッチョ、シューマンのフモレスケ、ともにしっとりとした情感が湛えられて美しい。

音色がみずみずしい。

テクニック的にも安定している。

 

 

Rachel Cheung (Hong Kong | Age 25)

 

SCHUBERT Drei Klavierstücke, D. 946
DEBUSSY Voiles from Preludes, Book I
DEBUSSY Ce qu’a vu le vent d’ouest from Preludes, Book I
LISZT Mephisto Waltz No. 1
HAMELIN Toccata on “L’homme armé”

 

よく弾けてはいるのだが、これまでのコンテスタントの中では印象が薄い。

シューベルトの「3つの小品」も、リストのメフィスト・ワルツ第1番も、そこそこといった感じ。

ドビュッシーの「帆」など、雰囲気がよく出てはいるのだが。

 

 

EunAe Lee (South Korea | Age 29)

 

HAYDN Sonata in B-flat Major, Hob. XVI:41
DEBUSSY Étude pour les arpèges composés
CHOPIN Sonata No. 3 in B Minor, op. 58
HAMELIN Toccata on “L’homme armé”

 

ハイドンのソナタ第41番、軽やかな演奏。

ドビュッシー、ショパンも悪くない。

ただ、少し普通な印象というか、もうあと一歩、他人より抜きんでた個性がほしいところではあるか。

 

 

Sergey Belyavskiy (Russia | Age 23)

 

SCHUBERT Fantasie in C Major, D. 760, op. 15 (“Der Wanderer”)
HAMELIN Toccata on “L’homme armé”
TANEEV Prelude and Fugue in G-sharp Minor, op. 29
LISZT Hungarian Rhapsody No. 2 in C-sharp Minor

 

個人的に注目していた一人。

シューベルトの「さすらい人幻想曲」、第1楽章は思ったより少しおとなしいが、第3、4楽章でかなりのパワーを見せてくれる。

といっても力んではおらず、余裕のある充実した演奏。

タネーエフの「前奏曲とフーガ」も雰囲気が出ている。

リストのハンガリー狂詩曲第2番も迫力があり、なかなかの好演(カデンツァはなし)。

 

 

そんなわけで、1次予選の第3日の演奏者のうち、私が2次に進んでほしいと思うのは

 

Nikolay Khozyainov (Russia | Age 24)

Nikita Abrosimov (Russia | Age 28)

Georgy Tchaidze (Russia | Age 29)

Kenneth Broberg (United States | Age 23)

Sun-A Park (United States | Age 29)

Sergey Belyavskiy (Russia | Age 23)

 

あたりである。

 

 


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