歌誌「冬雷」2017年 3月号 私の心に残った歌 その5 | 北山の歌雑記

北山の歌雑記

短歌初心者の戯言
「うたは下手でもよい自分のうたを詠め」
目指す旅路の道中記

前回に引き続き歌誌「冬雷」3月号の中で、私なりに特に心に残った

歌を抜粋してみました。鑑賞・評などと大それたものでは無く

私なりに選ばせていただいた理由を少々、記させていただきます。  

(☆新仮名遣い希望者)

尚、冬雷集感想の一部は後日  


真似ごとに正月の用意ととのへて除夜の鐘聞く独りの部屋に

福井 橋 本 佳代子


正月の用意を「真似ごと」と述べる作者。

この内容のキーワドは結句「独りの部屋に」であろう。

かつて家族で賑わった正月には、それなりの整えがあった筈だ。

しかし現在の独り住まい。

しかも正月を共に迎えられる家族の帰省も無い様子。

自然と簡素になる正月の用意を整えて、独り除夜の鐘を聞く作者を取り巻く

静けさが感じられる。


一つ残る柿の実啄む小鳥にも順のあるらし三羽待ちいる

東京 酒 向 陸 江☆


枝に残った柿の実一つ。

その実を啄む小鳥を眺める作者。

一羽が啄む中で、それを待つ三羽の存在を見つけた。

縄張りによる序列か、それとも子の後を待つ親鳥なのか。

作者ならずも興味のある光景だ。


我が息も河口の鷺の吐く息も白々として寒に入りゆく

岩手 田 端 五百子


野鳥観察に赴いた作者。

早朝の河口にであろうか。

自らの吐く息、そして鷺の吐く息も白く見えたという。

鳥の吐くその白い息に、寒に入りゆく時節柄を実感した模様だ。


五日前に頬に貼つた薬をもう取つてもいいと言はれて嬉し

茨城 沼 尻   操


連作より)石段から転び、顔面に傷を負った作者。

出掛けにいろいろ問われる事などを考えれば、頬に張った薬の存在が

無性に気になるようだ。

結句「言はれて嬉し」の飾りの無い喜びの表現が微笑ましい。


静かなる歳末の町夜まわりの拍子木の音も聞かなくなりぬ

東京 大 川 澄 枝☆


年の暮れも押し迫った日の夜。

毎夜聞こえてくるのであろう夜回りの拍子木の音が聞こえてこない

と気付いた作者。

年末年始の休みといったところであろうか。

ともかく作者にとって、年の暮れを象徴する一つの出来事であったようだ。



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