歌誌「冬雷」2017年 4月号 私の心に残った歌 その1 | 北山の歌雑記

北山の歌雑記

短歌初心者の戯言
「うたは下手でもよい自分のうたを詠め」
目指す旅路の道中記

前月に引き続き歌誌「冬雷」4月号の中で、私なりに特に心に残った

歌を抜粋してみました。鑑賞・評などと大それたものでは無く

私なりに選ばせていただいた理由を少々、記させていただきます。        

(☆新仮名遣い希望者)

尚、冬雷集感想の一部は後日


筑波山の手前の山に新しきふたつの灯白く見えたり

茨城 佐 野 智恵子


居宅の窓から日毎に筑波山眺める作者。

或る日、手前の山に新しい二つの灯りを見つけた。

新しき」に、作者が感じた新鮮な感動を感じる。


賀状こぬ友の幾人案じつつ雪掻きをする朝に昼に  

福島 松 原 節 子


正月に年賀状が届かぬ友を案じつついる作者。

しかし正月とは言え、日常の雪掻きはまった無し。

朝に昼に」とは、かなりの降雪量。

正月も一息つけない雪国の作者の暮らし振りが窺える。


四人掛けのテーブルほどの大き机移築されたる書斎に置かる

神奈川 桜 井 美保子


(連作より)土屋文明記念館を訪れた作者。  

展示されている机は「テーブルほどの」と大きな物であった。

結句「書斎に置かる」は、もちろん置かれていたという事実を語ると共に

その大きな存在感も感じさせる。



たまきはる内なる他者を追ひ払ひしづかな界に住まむと思ふ

東京 天 野 克 彦  


「たまきはる」とは、うち・世・命などに掛かる枕言葉。

この一首にあっては、「うち」に掛かる。

内なる他者」とは、自分の奥底に存在する他人のような、他人で

あって欲しい自分の心の意か。

そんな事を考えていると漱石の「草枕」の一節を想い出す。

『住みにくさがこうじると、安い所へ引き越したくなる。

どこへ越しても住みにくいとさとった時、詩が生れて、が出来る。

(中略)あらゆる芸術の士は人の世を長閑のどかにし、人の心を豊かにするが

ゆえたっといらしい。


救急箱の絆創膏も包帯も正露丸の匂ひ染みつく  

東京 荒 木 隆 一


作者の家の救急箱。

絆創膏も包帯も正露丸の匂が染みついていると云う。

開けられても、使われてもいないと云う事か。

裏を返せば“めでたい”と個人的には受け取ったが、真意は如何に。



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